2018年回顧 関西経済(4)

中小企業 事業継承に知恵結集を

 リーマン・ショックから10年。国内経済もようやく勢いを取り戻し、大企業を中心に好業績が続くなか、中小では「休廃業・解散」が高止まりしている。経営者の高齢化などによる後継者不在が大きな要因だ。会社をいかにして引き継ぐかという事業承継問題の取材で、この1年間さまざまな中小企業を訪ねた。

 ものづくりの町、大阪府東大阪市では昨年末、約50年にわたってゴム製品を手がけてきた町工場が廃業した。リーマン・ショックを機に、元請け企業が海外に生産拠点を移したことで注文が減少。70代の当時の社長には息子もいたが、後を継がせることはなかった。「もうこの産業には魅力を感じない。年齢も年齢だし」とため息をついた。

 後継者不在はそのまま廃業につながりかねない。帝国データバンクによると、昨年の休廃業・解散は2万4400件で、資金繰り悪化などによる「倒産」の3倍近くにのぼった。政府は中小の事業承継支援を本格化。経営者に対し株式譲渡の贈与税・相続税を全額猶予した。来年度も、個人事業主への対策が強化される見通しだ。

 景気だけでなく自然災害が中小の経営を左右することを浮き彫りにした年でもあった。9月の台風21号で工場が被災、復旧費用もままならず廃業を余儀なくされた企業があった。取引業者によると「新たな投資をしても希望が持てない」と廃業を伝えてきたという。

 一方で、後継者が見つからず廃業を決意しながら、思いとどまった例も。ある印刷会社は廃業を決めた直後に大口発注を受け、操業を続けることにした。

 「町工場が閉まっていく一番の理由は、稼げないからでしょう」。東大阪市の鋳造業の経営者は言い切った。小さな会社がいかに稼ぎ、生き残るか。答えは簡単には見つからない。

 東大阪ではかつて、町工場の社長が近所の喫茶店に集まって世間話をしたことが情報交換につながったという。しかし企業も減少し、横のつながりは少なくなった。互いに知恵を出し合って連携する-。小さなことのようだが、こうした原点に戻ることが再生のヒントになるかもしれない。

 (織田淳嗣)

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