松本商圏人口、長野並みに 18年度4.6%増の61万人超
長野県の2018年度商圏調査によると、松本市の商圏人口は前回(15年度)調査比4.6%増の61万4635人で、長野市と同規模まで拡大した。岡谷市は大型商業施設の開業で1.9倍に増えるなど、都市間の集客力が3年間で変貌した。少子高齢化やインターネットの普及といった環境変化も踏まえ、各自治体は新たな商業振興策に力を入れている。
県の商圏調査は3年ごとに、公立中学2年生の家庭を対象に実施。各自治体の商圏は平成の大合併前の区域を対象にしている。
松本市は60万人の大台に乗せ、商圏を構成する市町村数も4自治体増えて県内最大の39市町村になった。松本市の商業力の影響が及んでいる商圏人口や、市内在住の買い物客と市外から訪れる買い物客を合わせた吸引人口はともに増加し、「成長商圏」に位置づけられている。
同市は「商都松本」として栄えてきた歴史があり、商店街の活性化対策に官民連携で取り組んできた。17年には県内最大級の商業施設「イオンモール松本」が開業したこともあり、商圏拡大につながった。
松本市商工課は「特に遠方からも集客できている」と分析。新商業ビジョンを策定し、商業活性化策を強化する方針だ。事業継承や創業者支援、商店街を回遊する仕組みづくりのほか、商圏調査の対象外の訪日外国人客を意識した対策も検討している。
一方、長野市は2.9%減の61万5485人だった。商圏構成市町村も2自治体減った。遠方からの集客力が衰えており、商圏人口、吸引人口ともに減少している「縮小商圏」になった。
商圏が急拡大したのは岡谷市。16年に大型商業施設「レイクウォーク岡谷」がオープンし、状況が一変した。諏訪市からの買い物客の呼び込みも目立つ。居住人口に対する吸引人口の比率を示す吸引力係数は100を超え、居住者を上回る人数の買い物客が集まっている。
岡谷市商業観光課は「下諏訪町や上伊那地域から来客しており、商圏が広がっているのは間違いない。商店街に人通りが増えたとの声も聞く」と説明。今後は地元商店街にも集客効果を波及させる考えだ。「ものづくりの街」として知られてきたが、10月をめどに初の商業活性化計画を策定する予定で、「商業の街」としても発展を目指す。
諏訪地域はこれまで、諏訪市が商業の中心地として栄えてきた。しかし、JR上諏訪駅前の商業施設が相次ぎ閉店し、中心街は衰退傾向が続く。このため、市は民間企業と連携し、閉店した上諏訪駅前の商業施設の再開発事業を支援。にぎわいの場を取り戻そうとしている。
県はネット通販の利用状況も調査。ネット通販利用者は全体の80%を超えた。実店舗での買い物客を対象にしている商圏の枠組みに大きな影響を及ぼす可能性もある。