総務省が行った「平成 26 年経済センサス-基礎調査」によると、中小企業は日本の企業の約99%を、日本の従業員数の約70%を占め、地域経済・社会の繁栄・発展を支え、雇用の受け皿の役割を担っていると報告しています。

地域経済・社会の衰退を防ぎ、さらなる活性化を果たすためには、事業承継が円滑に行えることが重要になっております。

こちらでは、親子承継を成功させる法制度として、会社法をご紹介いたします。

 

【承継後の安定した会社経営に向けて】

親子承継では、後継経営者が、承継する会社の株式全てを手に入れて新オーナーになることができれば、会社の所有と経営の実権を握り、経営上の重要な意思決定も自ら決し、それを自ら先頭に立って実行することができるようになります。

 

ですが、会社の株式を家族や親族、従業員に持っているような場合はどうでしょうか。

他の株主が友好的で後継経営者の味方となってくれる場合、このまま株主として残ってもらい、共に会社経営を支えてもらうのがよいでしょう。

ですが、中には、後継経営者の方針に異を唱え、敵対する株主がいると、その後の会社経営を円滑に行うことが難しくなります。

 

そのような場合も想定し、現経営者として事業承継前に備えておくべきなのが、将来の事業再編も可能にする株主対策となります。

そして、株主対策を行ううえで理解しておかねばならないのが「会社法」になります。

 

【会社法の活用方法―種類株式の採用―】

会社法は、会社の設立や解散、会社の組織やその運営、さらには資金調達などの分野で、そのあり方や手続き定めた法律であり、会社法を理解して上手に活用することが、承継後の会社運営の成功につながります。

 

まず、後継経営者に対して承継させたい事業は何か、そして、株主、債権者、従業員はどうしたいかという方針を決めます。

次に、この方針に沿った事業承継計画を策定します。

仮に、複数の株主がいて、後継経営者に非協力的で敵対的な人が株主にいる場合、この株主に経営に口出しをさせないようにさせたいものです。

このときに活用できるのが、会社法に定めるさまざまな種類株式です。

有利優先配当株式:普通株式よりも多くの配当金がもらえる株式。敵対する株主から協力を取り付ける手段として活用できます。

議決権制限種類株式:議決権を制限する株式。相続人など直接経営に関与することのない株主に交付すると株主総会運営が楽になります。

取得請求権付種類株式:株主の請求によって配当優先株式や議決権制限株式を普通株式に転換できる株式。オプション付きの株式として、将来味方にしたい株主に交付すると効果的です。

譲渡制限種類株式:株式を売買するのに取締役会の承諾が必要なものです。株式が敵対する第三者へ譲渡されるのを防ぐ効果があります。

これらの種類株式を導入するためには、定款の変更手続きが必要となりますので、事業承継の前に、現経営者と株主との関係が良好なうちに、株主総会で承認を取っておくのが得策です。

 

【会社法の活用方法―事業再編―】

現在の会社に不採算事業があり、これを後継経営者に任せたくない場合。会社の分割を検討すればよいでしょう。

新設分割:会社の事業の一部を分離して、新しい事業会社を設立する手続きです。

吸収分割:会社の事業の一部を分割して、現存する他の会社に吸収させる手続きです。

事業譲渡:会社の事業の一部を他社に売却する手続きです。

新設分割と吸収分割の場合、事業を承継することの対価として株式を交付するか金銭を支払うかの二通りがありますが、事業譲渡の場合は金銭の支払いになります。

  • 会社分割、事業譲渡の手続の詳細は会社法に明記されています。

 

事業承継後の会社経営を安定化させるためには、会社法を上手に活用していくことが大切です。