5信金が実質業務純益増加 神奈川県内の8信金
目立つ融資量の拡大
神奈川県内8信用金庫の2019年3月期決算が出そろった。本業のもうけを示す実質業務純益は8信金のうち5信金で伸びたものの、貸出金の利回りの低下が続く信金もみられ、収益構造にばらつきが出た。不動産や建設など特定業種への融資偏重には懸念も広がる。各信金は成長分野で資金需要の開拓や、新サービスでの収入確保により収益性の向上を模索する。
貸出金残高は8信金のうち、平塚信金(同県平塚市)と中南信金(同県大磯町)を除く6信金で増えた。最多の川崎信金(川崎市)では4%増の1兆1520億円だった。横浜信金(横浜市)も3%増の1兆73億円となり、通期決算で初めて1兆円を上回った。京浜エリアなど経済規模が大きい都市部を地盤とする有力信金の伸びが目立った。
実質業務純益は5信金で増加した。川崎信金では合理化による経費削減が奏功し、41%の大幅増益となった。他方、湘南信金(同県横須賀市)は債券の利息収入が多かった前の期の反動減により40%減となるなど、各信金でばらつきがあった。
貸出金利回りについては、多くの信金が「下げ止まりつつある」と指摘した。平塚信金や中栄信金(同県秦野市)などが前年比でほぼ横ばい、中南信金が0.05ポイント上昇としつつも、川崎信金(0.08ポイント低下)やさがみ信金(同県小田原市、0.07ポイント低下)など比較的大きい低下が続いている地域もみられた。
ただ、日銀のマイナス金利政策が長期化するなかでは、各信金が融資需要の取り込みを進めても収益確保には限界がある。中小企業や個人事業主を多く持つ信金にとって、販路拡大に加えM&A(合併・買収)などを用いた事業承継支援などがより重要となってきている。県内8信金は1月、信金中央金庫と組み東京都内で海外ビジネスの相談会、6月7日には毎年開催する合同商談会を横浜市で開くなど横の連携を生かした取引先の販路拡大を進める。
他方、神奈川県内では金融機関同士の競合もある。同県南部の製造業経営者は「地場の信金がメインバンクだったが、銀行担当者による積極的な提案で新規投資を決めた」と打ち明ける。顧客との綿密な取引を強みとする「リレーションシップ・バンキング」の強化に動きだした地銀上位行やメガバンクとの競合対策も欠かせない。
取引先企業によるキャッシュレス決済への対応やM&Aで専門業者と提携を結ぶ信金も増えている。横浜信用金庫などは18年に始めた取引先支援のウェブサービス「ビッグアドバンス」を全国の金融機関に広げている。地場の店舗網やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」などを生かし、小回りのきいた金融サービスによる差異化が、今後の事業展開にとってより重要となっている。