SBIと資本業務提携、試される島根銀
島根銀行は6日、SBIホールディングス(HD)と資本・業務提携すると発表した。SBIから出資を受けるほか、金融商品の販売などで協力をする。SBIは全国の地銀と提携する構想を掲げており、島根銀行はその第1弾となる。一方で、「SBIの地銀連合構想が地域の中小のためになるのか」(中国地方の金融関係者)との声もあり、今回の提携が試金石となりそうだ。
「SBIとの提携は大きな期待と責任を感じる」――。6日、松江市にある本店で会見を開いた鈴木良夫頭取はこう話した。
25億円の出資を活用し、同行はバランスシートを大きく傷つけることなく、投資信託の運用損の穴埋めや、不採算店舗の統廃合に伴う減損損失など、目の前にあるウミを出し切れる。SBIの金融商品やサービスを提供することで、顧客の資産形成の支援を一層強化する方針も示した。
鈴木頭取は「店舗統廃合で人員を捻出し、中小企業向けの融資も変わらずに力を入れる」と話した。だが一方で、「本業支援を含めた中小企業向けの融資にはかなり人手がかかる。今の人員体制でまかなえるのか」(県内の金融関係者)など、本業の金融仲介がおろそかにならないかを心配する声もある。
同行は今年5月に見直した中期経営計画で、2022年3月期までに本業のもうけを示すコア業務純益を黒字化させる方針を示している。収益改善には顧客の本業支援に本腰を入れて、それに見合った金利をとれるかどうかが今後の肝となる。今回の提携が、地元中小企業にとってメリットがあるかどうかを、詳細に説明することが求められそうだ。
島根銀行の鈴木良夫頭取とSBIホールディングスの森田俊平専務は6日、両社の資本・業務提携について松江市で共同記者会見を開いた。主な一問一答は次の通り。
――SBIとして、この提携に期待するものは。
森田俊平専務「全国の地銀と提携し、地方創生をしていくのが我々のミッションで、大事な一歩だ。最初に島根銀と組んで、成功事例を作っていく。失敗しないように、全力で支援するし、島根も全力で変革に取り組んで頂きたい」
――この話はいつごろから動いていたのか。
鈴木良夫頭取「地域金融機関は非常に厳しい経営環境にある。当行はコア業務純益が3期連続赤字で、先行きも不透明だ。そうした中、1~2月に収支計画をつくるにあたって、何ができるか考えてきた。ポイントとなったのは(1)島根銀行の看板で、この地で営業すること(2)地域密着型金融を引き続き推進すること(3)パートナーとの相乗効果が得られること――だった」
「いま全国で銀行同士の合併があるが、それにより相乗効果が得られたかは疑問だ。1足す1が2や3にならずに1.5になる場合もある。我々のリアル店舗と、我々にないネット金融を結び付ければ良い相乗効果を得られるのではないか」
「従来から業務提携していたので、私から話しを持ちかけた。地方創生の一環として検討していただき、快諾を得た」
――徹底した地域密着金融に加え、個人向けの商品ラインアップ拡大も目指すと言うが、今の行員の数でできるのか。
鈴木頭取「できると思う。店舗再編を今年12月ごろに計画している。その余剰人員を振り向ければ、十分可能だ」
森田専務「SBIが持っている事業承継ファンドを島根銀行に紹介していただいて企業同士をマッチングしたり、事業承継資金を融資したりすることが考えられる。共同店舗を作って富裕層向けに資産運用の支援をするのもいいと思う」
(西村正巳、田口翔一朗)