この記事で分かること
- 会社を廃業するベストなタイミング
- 会社を廃業するための手続きや流れ
- 会社を廃業する際にかかる費用
- 廃業以外の選択肢
会社を廃業する最適なタイミングとは
会社を廃業するタイミングを逃すと、莫大な借金が残ったり、再起不能となるほど生活が苦しくなるおそれがあります。
この章では、そのような事態を回避するために廃業する最適なタイミングを3つに分けて見ていきましょう。
後継者の不在で事業承継が不可能となったとき
事業承継を引き受けてくれる後継者がいない場合は、なるべく早く廃業しましょう。経営者が元気なうちに廃業すれば、親族に迷惑をかけずにスムーズに会社をたためます。
また、法人税を支払う期間も短くできるので、節税効果にもつながるでしょう。
債務超過
債務超過になったタイミングで、即座に会社を廃業するのもおすすめです。債務超過とは、負債の総額が資産の総額を上回る状態です。
債務超過が悪化すると、会社をたたんだ時に経営者に莫大な額の借金が残るおそれがあります。
債務超過の状態から業績を回復させるのは困難なので、傷が浅いうちに廃業する方が無難でしょう。
廃業する費用や生活資金に手を出す直前
後述しますが、廃業する際にもある程度の費用が発生します。また会社を廃業した後には、その後経営者自身やその家族が生活するための資金が必要となります。
廃業費用や生活資金が尽きてから廃業しようとすると、廃業したくてもできなかったり、廃業後の生活が困窮するおそれがあります。そうならないためにも、廃業費用や生活資金に手を出す前に廃業しましょう。
会社廃業の手続きや流れを分かりやすく解説
会社の廃業手続きは、主に下記7ステップで進められます。
順番が前後するケースもあるものの、おおよそ同じ流れで進めるので参考にしてみてください。
①株主総会による解散決議と清算人の選任
まず最初に、株主総会を開催して解散決議と清算人の選任を行います。
会社を廃業するためには、原則として株主総会で議決権のうち3分の2以上の賛成を得る必要があります。
一方で書面決議を行う場合は、株主全員の賛成が必要です。
解散決議と同時に行う清算人の選任についてですが、基本的には代表取締役(社長)を清算人にします。
②解散登記と清算人の選任登記
解散決議や清算人の選任が終わったら、会社を廃業する旨や清算人を選任した旨を登記します。なお解散や清算人選任の登記は、廃業日から2週間以内に法務局で行う必要があります。
③解散届け出の提出
会社を廃業する際には、税金関係の手続きも必要です。法人税に関しては税務署、法人事業税や法人住民税に関しては市区町村の役所や都道府県税事務所に解散届を提出します。
また許認可を持っている会社が廃業する場合は、許認可を管轄する官庁に廃業する旨を示す書類を提出する必要があります。
④解散(廃業)の公告
会社にお金を貸している人(債権者)には、会社が廃業する際に借金を返してもらう権利があります。その権利を保証する目的で、廃業する会社は2ヶ月以上にわたって官報に解散公告を掲載しなくてはいけません。
解散公告の掲載期間が終了するまでは、廃業の手続きを進めることはできません。スムーズに廃業の手続きを進めるためにも、解散公告は速やかに行いましょう。
⑤清算手続きの実施
会社の廃業で次に行うべきは清算手続きの実施です。具体的には、保有する資産を売却したり売上債権を回収することで、帳簿にある資産を全て現金化します。加えて、その現金を用いて債務(借金)の返済を行います。
なお債務の返済を終えてもなお財産が残った場合には、株主の間で残った財産を分け合います。
⑥決算書類の作成と承認
清算手続きを終えたら、次は決算書類を作成して株主総会による承認手続きを行います。決算書類を株主総会で承認することで、会社の法人格が消滅し、正式に廃業となります。
⑦確定申告と清算結了登記
法人格の観点ではすでに廃業したことになるものの、確定申告と清算結了登記の手続きが残っているので注意しましょう。確定申告と清算結了登記を済ませることで、広く社会に廃業した旨を示すことができるのです。
会社の廃業にかかる期間は2ヶ月以上
会社を廃業しようと考えた場合、上で紹介した通りの手続きを進めなければなりません。
理由は、④の「解散(廃業)の公告」でも記したとおり、公告期間を2ヶ月以上取らなければならず、その間は廃業の手続きを完了させられないのです。
また、固定資産や取引先が多い場合はそれらの処理に時間を使うため、大きな企業では数年単位で廃業を進めるケースも散見されます。
廃業にかかる期間も意識しながら、廃業の手続きを進めましょう。
会社の廃業ではどのくらいの費用がかかるの?
会社の廃業を行う上で、最も気になるのが廃業する際にかかる費用ですよね。
専門家へ依頼するか否かで大きく費用の相場は変わりますが、以下に「最低限必要となる費用」を表記してあるので、確認してみましょう。
<最低限必要な費用>
費用の項目 | 費用 | |
登記にかかる費用 (登録免許税) | 解散登記 | 30,000円 |
清算人選任登記 | 9,000円 | |
清算結了登記 | 2,000円 | |
登記簿謄本×2通 | 1,200円 | |
印鑑証明書 | 450円 | |
官報公告 | 約32,000円 | |
専門家に依頼しなかった場合の合計 | 約74,560円 |
<専門家に依頼した場合の費用>
依頼先 | 支払う報酬額 | |
司法書士 | 5~10万円 | |
税理士 | 20~30万円 | |
専門家に依頼した場合の合計 | 約32~48万円 |
会社を廃業する際には、主に「解散登記・清算人選任登記」と「清算結了登記」の手続きで費用がかかります。
他にも、馴染みのない官報公告や気になる専門家への依頼料について、詳しく見ていきましょう。
解散登記および清算人選任登記、清算結了登記の費用
廃業手続きの前半で行う解散登記と清算人選任登記、また廃業手続きの最後に行う清算結了登記では、「登録免許税」という税金の支払い費用が発生します。
登記の手続きで生じる登録免許税の額は下記のようになります。
登録免許税
- 解散登記:30,000円
- 清算人選任登記:9,000円
- 清算結了登記:2,000円
参考:株式会社解散及び清算人選任登記申請書 – 法務局 – 法務省
株式会社清算結了登記申請書 – 法務局 – 法務省
官報公告の費用
解散手続きで主に必要となる費用は以上になります。ただし上記以外にも、官報公告にかかる費用があるので注意しましょう。
官報の料金は「何行載せるか」で決まっており、官報公告の費用は以下のように計算されます。
官報公告の費用
3,263円(1行)×行数+消費税
全国共通の価格なので、上記の計算式で官報公告にかかる費用を割り出せるでしょう。基本的には9~10行程度を掲載するので、3万2000円が相場となります。
参考:株式会社兵庫県官報販売所
司法書士や税理士への依頼にかかる費用
廃業にあたっては、専門家(税理士など)への依頼などでも費用が発生します。
依頼内容や依頼相手によって費用はまちまちですが、司法書士の場合は5~10万円、税理士の場合は20~30万円程度が相場となっています。
いずれにせよ、ある程度の費用がかかるので、会社を廃業する際には最低限必要となる資金を残しておきましょう。
まとめ
債務超過や後継者不足など、近年はさまざまな理由により廃業する中小企業が増えています。会社を廃業する手続きは複雑ですが、あらかじめ知っておくと実際に廃業する際にスムーズに進められます。
また解散公告には最低で2ヶ月の期間が必要となるため、会社の廃業は思い立ってすぐに実行できることではありません。経営者の方が元気なうちに廃業を済ませるためにも、早い時期から必要な書類を揃えておくことが大切です。