清算とは、会社を解散するために保有する資産や負債をゼロにする手続きです。具体的には、資産の売却や債権の回収、債務の弁済(返済)、残余財産の分配などを行い、会社に何も残っていない状態にします。
清算には「通常清算」と「特別清算」の2種類が存在します。廃業する際の状況によって、通常清算と特別清算のどちらを行うかが変わるので注意しましょう。
この章では、通常清算と特別清算の概要と適用するケースを説明します。
通常清算とは、「通常」とあるように会社の資産を現金化することで全ての債務を返済できるケースに適用する清算です。具体的には、会社内に存在する事業用資産を売却したり債権を回収することで資産を全て現金にした上で、借入金の返済や買掛金の支払いを行います。
特別清算とは、会社が債務超過に陥っているケースに適用する清算です。会社が保有する全資産を現金に換えても債務を返済し切れない場合には、裁判所の監督下で特別清算を行う必要があります。
通常清算の手続きは、基本的には下記の流れで進められます。
ひとつずつ確認しながら読み進めていきましょう。
まずはじめに、清算手続きを実行する人(清算人)を選任し、その旨を登記します。一部の例外を除いて、選出される清算人は一人で問題ありません。なお清算人には、解散するタイミングで会社の取締役である人物が就くことが一般的です。
清算人の登記は、会社を解散してから2週間以内に行う必要があるので注意しましょう。
次に、債権者に清算(会社の解散)を行うことを官報の公告などにより伝えます。債権者の保護を目的にしているため、かならず債権者に清算を行う旨を伝えなくてはいけません。官報の公告があることで、債権者は会社に貸し付けている資金などを確実に返済してもらえるわけです。
清算人は、貸借対照表や財産目録を作成し、株主総会で承認を受ける必要があります。これらの決算書類は、原則会社を解散した時点のデータを基準に作成します。
ここまで手続きを進めたら、いよいよ本格的に清算の手続きを開始します。まずはじめに、保有する事業用資産を売却したり債権を回収し、全ての資産を現金に換えます。少しでも多くの現金を手元に残すためには、資産をまとめて取引先の会社や同業の会社に売却するのも一つの手です。
全ての資産を現金に換えたら、その現金を用いて全債務(借入金など)を返済します。万が一、返済する過程ですべての債務を返済できないと判明した場合には、特別清算や倒産の手続きに移行しなくてはいけません。
すべての債務を返済してもなお現金が手元にあまる場合には、株主の間で余った財産を分け合います。なおこの手続きは、「残余財産の分配」と呼ばれるものです。
最後に、法務局で清算結了登記を実施します。これにより、企業の精算の手続きはすべて完了です。
参考:会社法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
また、企業を精算する際の実務的な手続きについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
参考記事:【会社廃業】企業を解散した際の実務対応を事業承継ガイドラインに沿って紹介!
一般的な特別清算は以下の流れで進めます。通常清算とは大きく流れが異なるので注意してください。
まずはじめに、解散決議や清算人の選任、債権者に対して官報による公告を実施します。ここまでは、通常清算とほぼ同じ流れで進むでしょう。
次に、本店がある場所を管轄する地方裁判所にて「特別清算の申し立て」を実施します。特別清算の申し立ては、清算人や株主、監査役が行えます。
なお特別清算の申し立てでは、「特別清算開始申立書」や「定款」、「株主名簿」、「決算書」などの書類が必要です。必要な書類は多岐にわたるので、あらかじめ確認しておきましょう。
債務超過などの条件に該当すると、裁判所の判断によって特別清算が開始されます。通常清算とは異なり、特別清算の手続きは裁判所の監督下で行われます。特別清算の手続きでは、まずはじめに負債金額の確定が行われます。負債金額の確定は、債権者による債権の届け出を基に実施されます。
次に清算人と債権者の間で「協定案」を作成し、裁判所に提出します。協定案には、弁済を行う時期や債務の免除などを記載します。つまり協定案とは、清算人が債権者に対して提示する妥協案です。
次に会社側が作成した協定案について、債権者集会と裁判所で認可します。協定案は「債権者集会の決議に参加した者の過半数」かつ「総議決権金額の3分の2以上」の賛成により可決されます。ある程度条件が厳しいため、可決してもらうにはある程度債権者にとってメリットのある協定案を考えなくてはいけません。
一方裁判所については、債権者集会で可決された協定案であれば、基本的に認可する傾向があります。
協定案が認可されたら、協定案に従って清算手続きを実施します。ただし通常清算とは異なり、一定金額を超える財産を処分する場合などには裁判所の許可が必要です。特別清算では自由に財産の処分を行えないので十分注意しましょう。
協定案に基づいた清算手続きが完了したら、裁判所が特別清算の終結を決定します。特別清算の終結が決定し、無事登記が終わったら特別清算は完了となります。
参考:会社法 – e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
会社の清算では、「清算人の選任登記」と「清算結了登記」の手続きで税金が発生します。この章では、各手続きで生じる税金の額をお伝えします。
清算人の選任登記では、9,000円の登録免許税が発生します。また清算とは直接関係ないものの、会社を解散する際には解散登記で30,000円の登録免許税も発生します。
参考:株式会社解散及び清算人選任登記申請書 – 法務局 – 法務省
清算結了登記でも、登録免許税として2,000円の税金が必要となります。
つまり清算手続きでは、合計で11,000円(解散登記含めると41,000円)の税金が発生します。
加えて、会社の廃業には適切なタイミングというものが存在しますが、見極めるのは至難の業です。
以下の記事では、会社を廃業するタイミングの見極め方や費用についても詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
参考記事:会社を廃業する際のタイミングや手続き、費用を徹底解説!
会社をたたむ際に必要な清算では、実行するのに長い時間と煩雑な手続きが必要です。とくに債務超過などを理由に特別清算を行う場合は、さらに手続きが複雑になります。会社を廃業する予定がない方も、今後のことを考えて清算に関して基本的な知識を知っていても損はないでしょう。