日本は深刻な少子高齢化問題を抱えており、若年層の労働者不足に悩んでいる業種も少なくありません。人手不足の延長線上にある後継者不足についても、早急な対応が求められています。
帝国データバンクによると、日本企業の後継者不在率は全体の 66.4%にも上ると言われ、このままでは多くの企業が後継者不足で倒産、休廃業に追い込まれてしまうでしょう。
また、中小企業の実態を調べてみると、すでにその影響が生じ始めていることが分かります。
後継者不足によって黒字倒産する企業が増加していることを受け、事業承継やM&Aはその解決策として日の目を浴びることとなりました。
しかし、そもそも自社の事業に将来性を感じていなかったり、事業を存続させる意義を感じていなかったりする企業も多く、事業承継の案件自体は未だに少ないのが現状です。
中小企業や小規模事業者を対象にした調査では、廃業した際の業績が「黒字」であったにも関わらず、廃業を選択している経営者が全体の44.1%にも上っています。
事業が堅調であるにも関わらず廃業を選択した理由の4割近くを占めているのは、経営者が高齢化したことによる健康面での問題です。
このことからも、せっかく黒字の決算を挙げているにも関わらず廃業してしまう理由の中には、深刻な後継者不測の影が見えてくるでしょう。
参考:中小企業白書
先ほど紹介したように、後継者問題を理由に事業を畳んでしまう中小企業や小規模事業者は少なくありません。中には黒字の経営を続けているにも関わらず、後継者不足を解消できずに廃業を選択する経営者も。
このまま後継者が見つからずに経営者が年を重ねていくと、多くの中小企業や小規模事業者が休業・廃業に追い込まれてしまいます。その結果、失われるGDPは22兆円にも上ると言われていますが、これは国力にも大きく関わってくる莫大な数字です。
政府は事業承継を急務と捉え、事業承継税制や事業承継円滑化法の施工を通して中小企業の事業承継を促進する動きを見せています。
中小企業や小規模事業者は後継者不足から事業承継に乗り出せない状況を強いられていますが、後継者不足にも業種による偏りがあります。
帝国データバンクの調査をもとに、後継者不足が深刻な業種について詳しくみていきましょう。
2018年の時点で最も後継者不足が深刻な業種はサービス業であることがわかりました。
全国平均では66.4%の企業が後継者不足のまま、というデータが出ていますが、サービス業に限って言えば71.6%の企業が後継者を見つけられずにいます。
しかし、前年の2017年と比較すると0.2%減少していることから、事業承継に対して意識的に取り組んだ企業が増えたことが読み取れるでしょう。これから更に事業承継の支援が充実すれば、後継者候補が集まり、事業承継の件数も増加していくと見られます。
人材不足が深刻な建設業ですが、深刻な後継者問題を抱えていることも忘れてはいけません。建設業は71.4%の企業が後継者を見つけられておらず、1位のサービス業と同様に、後継者を集めるための施策に取り組む必要があるでしょう。
また、後継者不足に陥っている企業の数は、3年の間で1.5%も増加しています。このことからも、建設業の後継者不足は非常に深刻であることが見て取れるでしょう。
若年層が建設業の後継者になりたいと思うような環境づくりも求められるので、事業承継を通して業界の全体的な意識改革が必要であると言えます。
後継者不足率が3番目に高いのは不動産業でした。不動産業は離職率が高く、人手不足が問題になっている業種でもあります。建設業と同様に、後継者探しだけでなく、業界全体の体質を見直して後継者が集まるような仕組み作りに取り組む必要があると言えるでしょう。
後継者不足を自社内だけで完全に解決するのは至難の業です。自社株を移転すれば手続きが終わるというものではなく、適切な人選と教育、社内体制の調整などを同時に行わなければならないので、社外の専門家やサポート組織に相談しながら事業承継を進めるのがよいでしょう。
そこで利用したいのが事業引き継ぎ支援センターです。事業承継にまつわる様々な手続きや悩みに対して専門家がアドバイスをしてくれたり、M&Aのマッチング企業を紹介してくれたりと、事業承継の窓口として幅広く活躍してくれます。
後継者不足を解消して、事業承継を進めようと考えたときには、まず事業引き継ぎ支援センターに相談してみるようにしましょう。
後継者不足を解消するためには、事業承継に対して意識的に取り組む姿勢を持つことから始めましょう。自社の事業がどのような意義を持っているのか、自社が存続することでどのようなメリットを生むのか理解することで、後継者を探すモチベーションにもなりますし、事業承継におけるミスマッチを防ぐことにもつながるのです。
その一環として、事業承継とはどのような取り組みなのか理解する必要があります。また、事業承継の手順や費用を把握すれば、実際に事業承継を進めるためのステップについてもイメージしながら進めていけるでしょう。