栃木県事業引継ぎ支援センター、縫製業で初の事業承継
栃木県事業引継ぎ支援センターは11月、発足後初めて縫製業でのM&A(合併・買収)成約にこぎつけた。後継者不在に悩んでいたひかりファッション(栃木県栃木市)と女性用ユニホームを製造する都内企業との間の事業譲渡を支援した。縫製業は海外への生産移管が進んだが、国産の品質を再評価する動きもある。技術が失われるのを避けるため、今後は事業承継が増えていきそうだ。
ハネクトーン早川(東京・千代田)が新会社の栃ソーイングを9月に設立し、11月1日付でひかりファッションから設備や従業員を引き継いだ。工場は新会社が借り受ける形とした。栃ソーイングは従業員も新たに2人採用した。
ハネクトーン早川はセーラー服のネクタイが祖業で、近年は女性の社会進出に伴い女性用ユニホーム「カウンタービズ」が伸びている。栃木県下野市の自社工場だけでは生産が追いつかず、各地の縫製工場に生産委託してきた。ただ、委託先の相次ぐ廃業や外注費の上昇で「内製化の必要性を感じていた」(早川智久社長)。
1990年創業のひかりファッションは従業員10人ほどの小規模な企業ながら、長く勤める女性が多く優れた縫製技術を持つ。受注拡大に向け、早川社長は事業の譲り受けを決めた。今後は新会社の栃ソーイングで女性用ユニホームの生産を本格化するほか、自動裁断機などの導入も検討していくという。
県支援センターは2014年11月の発足から5年間で98件の事業承継が成約にいたっているが、縫製業は初めて。
経済産業省によると、17年の繊維産業の国内事業所数は1万1582社と13年から18%減った。経営者の高齢化などを背景に優れた縫製技術などが失われつつある。国内縫製100%にこだわるハネクトーン早川のような企業にとって、事業承継が事業拡大に不可欠になっていきそうだ。