中小企業、事業承継・IT化を支援 20年度予算案
中小企業関連には前年度当初予算とほぼ横ばいの1753億円を計上した。跡継ぎのいない中小企業の事業承継や、IT(情報技術)の活用による生産性向上の支援策が目玉だ。中小企業の設備投資やIT化を重点的に支援するための新たな補助金制度を創設した2019年度の補正予算とあわせて中小企業の「稼ぐ力」の底上げを目指す。
後継者不足に悩む中小企業の事業承継が円滑に進むよう、金融機関からの借り入れの際に経営者の資産を担保とする個人保証を減らす。個人保証は後継者の心理的な負担になるとして、政府が保証の解除を後押しする。先代の経営者と後継者からの保証の「二重取り」も原則禁止する。
予算では信用保証協会などに補助に73億円を計上。個人保証を取らない新たな信用保証制度を設ける。個人保証の代わりに信用保証協会が企業に求める保証料を最大ゼロにできるようにする。
親族に跡継ぎ候補がいない場合に、第三者がM&A(合併・買収)で事業を引き継ぐことも支援する。中小企業庁が都道府県に設けた「事業引継ぎ支援センター」で企業と経営者候補の人材をマッチングする事業などに75億円を計上した。
人工知能(AI)を使った中小企業の生産性向上もめざす。目視による検査をAIで代替するなど、工場の効率化を進めたい中小企業にAI人材を派遣する。
中小企業の中にはデジタル化で出遅れ、労働生産性が伸び悩んでいる企業が少なくない。政府の分析では生産性が高い中小企業は設備投資の支出が大きい傾向があった。AIなど最新技術を積極的に導入したい企業の取り組みを支援し、生産性の向上につなげる。
中小企業の生産性向上支援は、政府が19日にまとめた社会保障制度改革案にも盛り込まれた。中小企業で働くパート労働者にも厚生年金の加入を義務づける方向性が決まったが、保険料を折半で負担する中小企業の負担は増す。政府は最低賃金の引き上げも目指しており、中小企業の負担感を減らすため、19年度補正予算とあわせて支援策を拡充した。