東京都20年度予算案、ポスト五輪へ5G・新興企業に重点
東京都は24日公表した2020年度予算案で「ポスト五輪」を見据えた成長戦略に重点を置いた。高速・大容量の次世代通信規格「5G」やAI、ICT(情報通信技術)を効果的に活用し、産業や働き方、防災、医療など多分野で革新を促す。経済に刺激を与える起業や観光の振興も強化する。成長と成熟が両立した都市づくりを目指す。
小池百合子知事は同日の会見で「世界の中で日本の競争力はじりじり後退しており、このままでは世界から大きく取り残されるという強い危機感を持って編成した。直面する課題に果敢に取り組む」と述べた。
都の経済のエンジンになってきた東京五輪・パラリンピックの終了に合わせ、五輪後の成長を支える基盤づくりを本格化する。大きな柱が5Gをはじめとした通信環境の整備・活用だ。超スマート社会「ソサエティ5.0」の実現に19年度比8倍超の158億円を投じる。
都の信号機や街路灯などに通信事業者が5Gの基地局を設置しやすいよう支援する。西新宿ではスマホと映像がつながる参加型のプロジェクションマッピングなどの一般向け体験イベントも実施する。東京都立大学(4月に首都大学東京から改称)には独自に基地局を置き、警備ロボットの実験など研究を進める。
中小企業へも5G対応を促す。工場を5Gに対応させるモデル事業を実施するほか、都立産業技術研究センターに地域限定の「ローカル5G」の実験施設を造り、研究や実験で使いたい企業に開放する。公共の施設・サービスのデジタル化も加速させる。
スタートアップ企業の育成・振興にも注力する。米調査機関によると企業価値が10億ドル(1千億円強)超の「ユニコーン」は米国の217社に対して日本は3社しかない。世界的スタートアップの育成を目指し、20年度に19年度比2.2倍の70億円を投じる。
起業家の支援拠点を丸の内地区や多摩地方で設置・運営するほか、外国人が日本で起業しやすいように金融機関に出す事業計画書の作成を支援するなどし、融資で不利にならないようにする仕組みをつくる。スタートアップ企業と都が連携して行政が抱える課題を解決する事業も始める。
五輪後も見据えた外国人観光客の誘致には21%増の239億円を充てる。大規模な展示会や国際会議「MICE」の開催費を補助する事業の対象件数を増やすほか、新規事業として出張前後に観光を楽しむ「ブレジャー」向けPRに1億円を計上した。
地場産業の下支えにも目配りした。後継者が見つからずに倒産する中小企業が増えていることを踏まえ、事業承継を支援するファンドの組成に60億円を充てる。18年にも民間と共同で事業承継ファンドを立ち上げたが、事業承継の支援ビジネスがまだ手薄と判断。民間資金の呼び水となるようなファンドをさらに立ち上げ、事業承継市場の創出を目指す。
■香港に外国企業誘致窓口 フィンテックなど呼び込む
東京都は2020年度から、香港に外国企業誘致の窓口を設置する。東京進出を検討する外国企業をビジネス面から生活面まで総合的に支援する。主に資産運用会社やフィンテック企業を誘致し、国際金融都市としての東京の存在感を高める。アジアの国際金融センターの首位を走る香港でデモが続くなか、東京の良好な治安などをアピールする。
海外の商工会議所やメディアとの連携窓口はロンドン、パリ、サンフランシスコ、シンガポールの4カ所に持つが、外国企業誘致の海外窓口設置は初めて。東京でビジネスパートナーをどう探すかや活用できる税制優遇や補助金制度の紹介のほか、インターネットなど生活環境の相談に応じる。
都内誘致までの手続きを個別に支援したり、東京に数週間招いて日本企業との交流を促したりして企業を呼び込む。アジア向け外国企業誘致プログラムとして20年度予算案に新規に3億円を盛り込んだ。
都はニューヨークやロンドンと並ぶ国際金融都市を目指して、30年までに英調査機関の国際金融センター指数でアジア1位を目標に掲げる。現在はアジア4位で香港やシンガポール、上海に後れを取っている。