事業承継を行う企業にとってネックとなるのが税金や株価の取得費用などの支払いです。多額の費用がかかるため、事業承継に踏み切れない経営者や後継者も少なくありません。このような状況を受けて、行政が経営承継円滑化法を施行して先代経営者、後継者の負担を軽減したり、事業承継税制の導入によって税負担を軽くしたりと、各種の支援策が整備されつつあります。その中でも検討したいのが事業承継補助金の活用。事業承継でかかる費用を充当するために現金を補助してもらえるので、承継後の経営を軌道に乗せやすくなるのがメリットです。事業承継補助金の概要や採択のポイント、補助金の使い方について事例を交えて詳しく紹介します。
まずは、事業承継補助金の概要について詳しく見ていきましょう。
――◯事業承継を推進するために中小企業庁が施行
事業承継補助金は、事業承継を推し進めるために中小企業庁が取り組んでいる施策のひとつです。中小企業庁の説明では、
「事業承継補助金」は、後継者不在等により、事業継続が困難になることが見込まれている中小企業者等が、経営者の交代や、事業再編・事業統合を契機とした経営革新等を行う場合に、その取組に要する経費の一部を補助することにより、中小企業者等の世代交代を通じた我が国経済の活性化を図ることを目的とします。
と記されており、事業承継が喫緊の課題であることが伺えます。このまま後継者不在で中小企業や個人事業主が廃業に追い込まれることで、多くの雇用やGDPが失われると言われており、国を挙げての重要課題として扱われているのです。
事業承継では多額の費用がかかりますが、これが事業承継の浸透を妨げている大きな要因となっています。こうした資金面の負担を軽減し、企業が事業承継に集中できるような環境を整えるのが事業承継補助金のねらいと言えるでしょう。
――◯中小企業だけでなく個人事業主も利用できる
中小企業だけでなく、個人事業主も利用できるのが事業承継補助金の特徴です。
いずれの場合でも、資本金の上限額や従業員数について細かな制限が存在し、補助限度額にも差が生まれます。以下の図表を参考にして条件面を確認してみましょう。
<中小企業>
業務の分類 | 資本金の上限額 | 従業員の上限数 |
製造業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
<個人事業主>
業務の分類 | 従業員の上限数 |
製造業 | 20人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
商業・サービス業 | 5人以下 |
――◯補助金の使用用途は大きく2つ
事業承継補助金は、獲得した補助金の使いみちによって、後継者承継支援型(Ⅰ型)と、事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)に分けられています。それぞれ支給条件や補助上限が異なるので、自社が申請できるのはどちらなのかあらかじめ確認しておきましょう。
――◯後継者承継支援型(Ⅰ型)
後継者承継支援型の補助金を獲得するには、以下のような条件をクリアしなければなりません。
この条件を満たしたうえで補助金の受給者として採択されれば、事業承継で必要になった費用の1/2〜2/3以内の補助金が支給されます。
また、支給上限額は150万〜200万円です。
――◯事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)
事業再編・事業統合支援型の補助金を獲得するには、以下のような条件をクリアしなければなりません。
Ⅱ型の補助金が受給できるのは会社の分割やM&Aに加えて株式の交換、移転、譲渡を行う中小企業・個人事業主です。また、補助金の支給を受けるには以下の条件をクリアしていなければなりません。
これらの条件を満たし、採択された採択された中小企業や事業者には補助率に基づいた補助金が支給されます。
補助率や上限額は申請結果による順位によって異なるので、なるべく良い審査結果を得るのがポイントです。
申請結果と補助内容については、以下のような違いがあります。
こうした条件も踏まえると、なるべく評価されやすい申請書を作成することが大切といえるでしょう。
参考:中小企業庁
補助金の給付条件などを詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
事業承継補助金に申請してから補助金を受け取るまでの流れは以下の通りです。
上の図表を参考に、補助金を活用した事業承継の流れを確認していきましょう。
この中で注意すべきポイントは以下の3点です。
事業承継補助金を受け取るためには、まず経営革新等認定支援機関に相談して確認書を発行してもらわなければなりません。
また、申請が通ってから事業承継に取り組まないと、審査中にかかった費用を経費として認めてもらえませんので、とくに注意しましょう。あらかじめ補助金の申請から受給までのフローをイメージしておくと、スムーズに手続きを進められるでしょう。
その後、事業承継補助金の支給が確定したとしても、事務局へ状況を報告する必要があります。事前に提出していたプランどおりに事業承継や新規事業を進められるよう、専門家へ相談しながら手続きを進めるようにしましょう。
事業承継補助金の審査は、事業承継補助金事務局に送る申請書によって決まります。そのため、どれだけ魅力的な申請書が作成できるかが採択の鍵となるのです。ここからは、事業承継補助金の採択事例を見ながら、自社がどのように申請書を書けばよいのかイメージしていきましょう。
――◯後継者承継型
1.今澤アソシエイツ株式会社
山梨県甲府市でサービス業を営む今澤アソシエイツ株式会社。山梨県の特産品である桃や梨、ブドウといった新鮮な果実を県外の顧客へ届けることで、山梨県の魅力を発信しようと設立されました。また、事業承継前の主力業務として、山梨学院大学の専門家から指導を受けて完成させた「キウイの追熱加工技術」をもとに、県内の高級スーパーへキウイの卸売を行っています。
事業承継によって経営者が交代した後に行った新規事業は「教育機関と連携した学生と地域企業との企業ミスマッチ解消支援事業」。地域に特化した求人支援サービスを打ち出し、地元の企業と若者のマッチングを促進するのがねらいです。
支給された補助金の50%以上はWebサイト制作の外注費に充て、残りの3割を事務所内の改装費、2割を人件費に割いています。打ち出した新規事業には、山梨県内の雇用を最適化するだけでなく、大学生が在学中に自分にぴったりなキャリアプランを描けるように支援するサービスも含んでおり、大学、学生、企業の三方にメリットが生まれる魅力的なビジネスモデルとなっているのです。
参考:今澤アソシエイツ株式会社
2.株式会社小麦屋
岐阜県各務原市で製造業を営む株式会社小麦屋。その社名の通り、ホテルや飲食店などで使われるパンの製造、卸売をメインの事業としています。事業承継時にあった懸念事項は、今後メイン事業の需要が先細りすると見込まれていること。収益性の高い新規事業を打ち出す必要がありました。
事業承継によって経営者が交代した後に行った新規事業は「高級冷凍パンの生産性向上および販路開拓」です。高価値な冷凍パンを製造し、地域のホテルや飲食店へ卸すことで、地域活性化にもつながると見込んでいます。
支給された補助金の90%以上を冷凍庫設備導入費用に充て、残りはWebサイトの制作費として外注。新規事業の販促に費やす支出も補助筋の経費として認められるのが事業承継補助金の特徴です。
地域産業の後押しに加えて、雇用の創出にも一役買っているビジネスモデル。事業承継による業績アップが期待されます。
参考:株式会社小麦屋
――◯事業再編・事業統合支援型
1.株式会社黒木鉄工所
宮崎県東臼杵郡で製造業を営む黒木鉄工所。BtoB向け県内最大級の大型NC旋盤を導入して、金属やステンレス、樹脂などを削り、部品を加工して出荷していました。
各種産業に用いられる機器の部品を製造していましたが、クライアント企業の声から、「故障したときに修理出来なくて困る」、「メンテナンスがよく分からない」など、産業機械のことを知らない方が多くいることに気がつき、事業承継を機に「お客様と一体となった産業機械づくりとメンテナンス」に取り組むことを決意。
これまで個人事業として続けていた事業をいちど廃業し、あらたに法人化して登記。事業承継後は、支給された補助金のすべてを工場の増築や照明機器、溶接機などの設備投資に充てて設計や製缶、機械加工ができる会社づくりに取り組んでいます。
参考:株式会社黒木鉄工所
2.株式会社亀山亭ホテル
大分県日田市でホテルの運営を行っている株式会社亀山亭ホテル。同社では、国内旅行客の減少に伴って売上が減少していたことから、老朽化した設備への投資が行えない状況が続いていました。
この状況を打破するために、格式ある老舗ホテルの歴史を残しつつ経営改革を行うことを決意。同社は、官民ファンドを利用した「第二会社方式」を用いて事業承継することを選びました。
第二会社方式とは、自社の抱えている赤字事業と黒字事業を切り分けて、新たに設立した法人や既存の法人に黒字事業を譲渡し、赤字事業は譲渡元の企業と共に精算する方法です。これにより、同社は高まるインバウンド需要と自社の資産である「屋形船」を結びつけつつ、設備投資のための資金調達に成功します。
事業承継補助金の使いみちとしては、5割以上を設備費(増改築)に充当し、残りの4割以上を譲渡元企業の廃業費用に充てています。後顧の憂いなく承継後の事業に取り組めるでしょう。
地元企業との取引を残したり、従業員の雇用を守ったりするという点でも、地域へ大きく貢献している同社。保有している屋形船のような目に見える財産や、ブランド、歴史といった見えない財産をうまく活用して、地域活性化の先陣を切って欲しいものです。
参考:株式会社亀山亭ホテル
事業承継補助金を受け取るためには、申請書が事務局から採択されてから、実際に補助範囲として認められている事業を行う必要があります。採択の基準をイメージするためにも、どれくらいの企業がこの基準をクリアしているのか見ていきましょう
――◯事業承継補助金の採択率はどれくらい?
事業承継補助金の採択率について、まとめてみました。以下の図表をご覧ください。
<平成30年度>
補助金の分類 | 募集期間 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
後継者支援型(Ⅰ型) | 一次募集 | 481 | 374 | 約78% |
二次募集 | 273 | 224 | 約82% | |
三次募集 | 75 | 55 | 約71% | |
事業再編・事業統合支援型 (Ⅱ型) | 一次募集 | 220 | 119 | 約54% |
二次募集 | 43 | 25 | 約58% |
後継者支援型のほうが申請数・採択率共に高くなっているのが分かります。この差からも、事業承継補助金が「経営陣の若返り」を狙いとしていることが見て取れるでしょう。また、新たに経営者となった後継者が補助金を活用して新規事業の打ち出しや経営改革を行うことを支援する、という方針が現れています。
その証拠に、採択率の差は平成30年度に限った話ではありません。令和元年の最新版でも、採択率の差は明らかです。
<令和元年>
補助金の分類 | 募集期間 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
後継者支援型 (Ⅰ型) | 一次募集 | 710 | 523 | 約74% |
事業再編・事業統合支援型 (Ⅱ型) | 一次募集 | 204 | 109 | 約53% |
一次募集の段階でも、既に採択率には大きな差が開いています。
こういった背景を踏まえて、どうすれば事業承継補助金の対象事業者として採択されるのか、細かく見ていきましょう。
――◯申請書のクオリティを高める
事業承継補助金に採択されるか否かを決めるのは、認定経営革新等支援機関と共に作成する「申請書のクオリティ」です。中小企業の経営コンサルティングなどを行う認定経営革新等支援機関ですが、これには民間の会計士や税理士、中小企業診断士などの士業関係者や、商工会議所、金融機関など、中小企業の実情に精通している経営コンサルタントが認定されるので、事業承継補助金の獲得以外でも活用したいところです。
認定経営革新等支援機関は「申請要件を満たしているかどうかの形式チェック」、「採択に向けた事業計画書のブラッシュアップ」を通して事業承継補助金の獲得を支援します。どのような点について意識しながら申請書を作成すればよいのか、以下を参考にしてみてください。
また、事業承継では多額の費用が必要になり、申請書を作成していると「資金計画の段階でショートしてしまう」という事業者も少なくないでしょう。その場合は事業承継税制の活用を組み込んで申請書を作り、税負担を軽減した場合を想定して経営革新後のビジネスモデルを構築しましょう。事業承継税制については、以下の記事を参考にしてみてください。
計画通りに収益が生まれなかった場合でも事業が継続されるようなモデルであることが重要なので、なるべく事業承継でかかる費用は少なくするのが採択されるコツと言えます。
――◯事業承継支援の専門家に依頼して準備を進める
事業承継補助金を受け取るためには、申請時に認定経営革新等支援機関から事業承継のアドバイスを受けていなければなりません。また、採択されたとしても、事業承継を実施した後に補助金が支払われるので、先に税理士や会計士と協力して事業再編や株式譲渡の見通しを立てておく必要があります。
事業承継の手続きについて詳しく知りたい方は以下の参考記事をご覧ください。
事業承継補助金の申請が通った場合、補助金をどのように活用するのがよいのでしょうか。ここからは、後継者支援型と事業再編・事業統合支援型のそれぞれに分けて、補助金の使いみちについて詳しく見ていきましょう。
――◯事業承継補助金の使い方
後継者支援型の補助金が採択された場合、使いみちは以下のいずれかであることが求められます。
さらに詳しく経費の項目を見てみると、以下のようにまとめられます。
ここで注目すべきは「廃業」にかかる費用も事業承継補助金の経費に組み込めるということ。さきほど紹介した亀山亭ホテルでも廃業にかかる費用を事業承継補助金から捻出していました。第二会社方式を選ぶ企業や、個人事業主(個人事業主が事業承継する場合はいちど廃業してから新しく登記しなおす形で事業承継を進めます)など、幅広いケースの事業承継をカバーしているのが事業承継補助金の魅力と言えるでしょう。
――◯通常は認められないような経費も算入できる
事業承継補助金は幅広い費用が経費として認められるので、後継者にとっては非常に使い勝手の良い補助金と言えます。
人件費や設備費だけでなく、事業のコンサルを依頼した専門家への謝礼、販路拡大のために支払った旅費についても補助金から捻出できるので、事業承継補助金を活用してしっかりと新規事業を組み立てることができるでしょう。
ここからは、事業承継補助金を活用して「事業承継を成功させる方法」について見ていきましょう。補助金が採択されたからと言って事業承継が成功するとは限りません。活用方法を学んで、効率的に資金を運用していくためのポイントを抑えましょう。
――◯事業承継補助金を「どう使うか」が最も重要なポイント
事業承継補助金は幅広い項目の経費に充当できる、使い勝手の良い補助金です。そのため、あれもこれもと補助金から捻出したくなりますが、大切なのは「何のために、どう使うか」を明確にしておくこと。
補助金ベースで支出を考えるのではなく、新規事業ベースで支出を捉えて、活用できる項目に補助金を適用していく意識が大切です。そうでないと、新規事業を成功させるために本当に必要な支出が見えてこず、無駄な支出が増えて贅肉の多い事業になってしまう可能性があります。
補助金を適切に使うためにも、経営革新等認定支援機関でビジネスモデルの磨き上げを行うのがおすすめです。結果的に事業承継補助金に採択される可能性も高まるでしょう。
――◯補助金を受け取るだけでは意味がない
補助金の採択を受けるのはゴールではなく、スタートに過ぎません。どのように補助金を使うのか、その結果ビジネスがどのように育っていくのかを描ききってから、ようやく事業承継後の第一歩が踏み出せるというもの。
反対に言えば、補助金を受け取ってからどのように充当していくのかが明確に見えていなければ、採択される魅力的な申請書は作成できない可能性が高いです。
――◯事業承継後に実現したいビジョンを明確にする
事業承継後に経営の舵を取るのは後継者です。企業の理念やブランドを引き継いだ上で、どのような組織づくりを行いたいのか、どのようなゴールを目指して進んでいくのか、といったビジョンが明確になっていなければ、組織を一枚岩にすることも難しくなってしまいます。
承継後は経営基盤も不安定になりやすく、幹部メンバーのみならず従業員も不安を感じることが少なくありません。従業員の不安を取り除き、一丸となって事業承継後の企業を支えて進んでいくためにも、企業の「クレド」を明確にするのがおすすめです。以下の記事を参考に、自社のクレドを明文化してみるとよいでしょう。
――◯ビジョンを実現するための経営革新を打ち出す
企業が向かうべきゴールが明確になったら、具体的に「どのような施策を通して企業を導いていくのか」という道筋を立てるのが重要です。その道筋をたどるために必要な費用を事業承継補助金でまかなう、という意識を持つのが大切でしょう。
その意識に基づいて事業承継後の経営を見通すと、自ずと適切な事業承継補助金の使いみちが見えてきます。
――◯新規事業や経営改革のプランを練る
事業承継補助金でまかなえる金額や、事業承継税制で軽減される費用の分も組み込みながら、新規事業や経営改革のプランを練っていきましょう。例えば、新規事業を打ち出す上で自社内ではノウハウが不足している場合は、ノウハウが足りていない部分について外注するなどの施策が必要になりますが、この場合の外注費についても事業承継補助金の補助対象内になります。
「自社の設備を使えばこういう事業ができそうだけど、専門的なスキルを持った人材がいない…」という悩みは事業承継補助金で解決できるので、多角的な面から新体制の経営をイメージしつつ、何が足りないのか、揃えるのにどれくらいの費用がかかかるのかを算出することに尽力しましょう。それらを組み込んで、新たなビジネスモデルを現実に落とし込んでいきましょう。
――◯実現に必要な費用や時間を算出する
上記であぶり出した支出と収益を具体的な事業計画に落とし込んでいきます。必要な時間や人材などもまとめて、ひと目で「事業承継後に自社はこのような経営革新を行います」というのが伝わるように、申請書に記載していきましょう。
その過程でアドバイスを仰ぐためにも、早めに経営革新等認定支援機関に相談しておくのが重要です。
――◯事業承継補助金の加点要素を抑えておく
事業承継補助金の審査においては、先ほど紹介した審査基準に加えて加点基準が存在します。以下の画像をご覧ください。
事業承継補助金は、地域の雇用創出や地域産業の活性化など、「地域への貢献」という点で見たときに「その企業がどれだけ地域に貢献しているのか」を加点基準としています。これは暗に「その企業がなくなると地域にどれだけのダメージが与えられるのか」を測っているとも言えるのです。
もともと、事業承継は日本の地域産業を支えている中小企業がなくなることで、地域の経済が弱くなったり、雇用がなくなったりするのを防ぐという役割も持っているので、事業承継補助金ではそのあたりも含めて補助金の採択を行っていると言えます。もし地域貢献を行っているのであれば、上記の加点基準と照らし合わせながら当てはまる内容を盛り込んでおくと、採択される可能性が高まるでしょう。
事業承継そのものにかかる費用や税金の負担なども考慮すると、事業承継補助金だけでは事業承継後の経営革新まではまかないきれない可能性もあるでしょう。そんなときは事業承継補助金以外の補助金も視野に入れて、広い視野で資金調達をかなえるのが大切です。
――◯承継後の経営をスムーズにするために他の制度も視野に入れて
事業承継補助金以外にも、事業承継を支援するための施策が存在します。ここからは、事業承継補助金以外の支援制度について詳しく見ていきましょう。
・事業承継税制
事業承継では株式の譲渡が必須となりますが、事業承継税制は株式や資産の譲渡にかかる贈与税・相続税を免除・延期する制度です。適用するためにはいくつか条件が必要なので、以下の記事でポイントを抑えておくと良いでしょう。
・各自治体の補助金
中小企業庁の事業承継補助金だけでなく、各自治体が主体となって支給する補助金も存在します。自社が存在する自治体でも使える補助金がないか調べてみると良いでしょう。以下の記事では自治体の補助金について詳しく解説しています。
・日本政策金融公庫
日本政策金融公庫でも事業承継で必要となる株式の取得費用などを補助するために、事業承継・集約・活性化支援資金を用意して中小企業を支援しています。特筆すべきは融資対象者の要件として記載されている以下の点です。
”事業承継に際して経営者個人保証の免除等を取引金融機関に申し入れたことを契機に取引金融機関からの資金調達が困難になっている方であって、公庫が融資に際して経営者個人保証を免除する方”
経営承継円滑化法の施行によって、事業承継によって代表を辞任する方に対しては個人保証の責任を免除することが認められました。しかし、金融機関によっては、それ以降の融資を断るケースも散見されています。
こうした状況で資金が調達できない中小企業を援助するためにも、公庫が事業承継にかかる費用を融資する商品を打ち出しているのです。
・よろず支援拠点
中小企業や個人事業主の経営上の悩みを解決するために全国各地に設置されているよろず支援拠点。創業や経営改善だけでなく、事業承継の支援にも注力しているのがポイントです。
「事業承継を考えてはいるけれど、どのように進めたら良いかわからない」という方は、まずよろず支援拠点へ相談してみるのがよいでしょう。中小企業の悩みはケースバイケース。各分野の専門家があなたの企業の悩みに寄り添い、解決に向けて一緒に走ってくれます。
参考:よろず支援拠点
――◯まとめ
中小企業や個人事業主にとって喫緊の課題となっている事業承継。資金面での問題をクリアしても、今度はどのように引き継げばよいのか分からない、という悩みに直面します。
そうした悩みを一人で抱えるのではなく、専門家に気軽に相談するところから始めるのが事業承継を成功させるコツです。