日本交通系とDeNA、「配車アプリ」事業統合
タクシー大手の日本交通(東京・千代田)とディー・エヌ・エー(DeNA)は4日、両グループの配車アプリ事業を4月に統合すると発表した。DeNAが配車アプリ事業を分割し、日本交通グループのジャパンタクシー(同)に承継させる。配車アプリは中国・滴滴出行系が進出するなど競争が激化。割引クーポンの乱発で利用者獲得を狙う消耗戦が続く。今後さらなる再編が進む可能性もある。
ジャパンタクシーは2011年からタクシー配車アプリを運営。現在、全国約7万台のタクシーが対応し、アプリの累計ダウンロード数は900万超に上る。株主にはトヨタ自動車やNTTドコモなども名を連ねる。
DeNAは配車アプリ「MOV」を18年から本格展開しており東京や神奈川、関西圏が対応エリアだ。DeNAはジャパンタクシーへ事業承継後同社に出資し、日本交通グループと並ぶ筆頭株主となる。
統合の背景にあるのは競争の激化だ。国内では中国・滴滴出行とソフトバンクが共同出資するDiDiモビリティジャパン(東京・千代田)が18年に配車アプリの運営を開始したほか、ソニーなどが出資するみんなのタクシー(東京・台東)は19年に「S・RIDE」の運営を始めている。
DiDiを筆頭に、各社は割引クーポンを多用しながら利用者拡大を競っている。その結果、ジャパンタクシーの19年5月期の売上高は19億円なのに対し、最終損益は29億円の大幅赤字になるなど、消耗戦が繰り広げられていた。
全国には約22万台のタクシーが走る。DeNAとジャパンタクシーの配車アプリ事業が統合することで、対応するタクシー数は計10万台に達し、主な収益源であるタクシー車内の広告用タブレット端末の設置台数も約4万台に達する見込みだ。
普及が見込まれる次世代移動サービス「MaaS(マース)」ではバスや鉄道といった公共交通網の隙間を埋めるタクシー配車の存在感は増す。MaaS時代に備えた生き残り策として、合従連衡は今後も進んでいきそうだ。(高尾泰朗)