チームを守るMBO事業承継「遊んでいたら褒められた」を当たり前にする組織のために

事業承継には家族間での継承やM&Aなど様々な方法があります。日本ではまだなじみの薄いMBOでの事業承継を行った会社の一つがヴァンパイア株式会社（以下、文中ではヴァンパイアと表記いたします）。2019年に創業したばかりのSNS運用事業の会社です。
（MBOについては、詳しくは「事業承継としてのMBO」の記事をご参照下さい）

代表取締役の加藤洋平氏はヴァンパイアミーティングというオンラインサロンを立ち上げ、全国の参加者とともに活発な交流を行っています。サロンのLINEグループでは1日1000件以上の通知がくるほど。人材採用に苦しむ企業が多い中、ヴァンパイアで働きたい！という希望者が後を絶たないそうです。

加藤氏がMBOでなぜ事業を独立させようと思ったのか？ヴァンパイア株式会社が目指すビジョンは何なのか？お話を伺いました。

経営者としては賢い選択ではなかったと思います。それでも

「こいつらと一緒にいたい」、そう思える仲間達と一緒に楽しく働ける環境を守りたかったんです。

ヴァンパイア株式会社の設立は、前の会社で事業部長をしていたので、事業を譲渡頂き独立した流れになります。当時、元の会社では経営の悪化もあり、事業部の人員削減をしなくてはいけなかった。職務としては人を切るべきだと分かっていても、当時から自分の理想に近いチームを作れていたので、「この仲間達を手放したくない」と思ってしまったんです。

チームメンバーとは何度も何度も話をしました。リアルの個人面談、メールなど、死ぬほど対話をくり返しました。自分たちがどうありたいか？を突き詰めました。

元々独立志向は強めではありましたが、そのための勉強をしていたわけではなかったんです。ただ彼らと一緒にいたかった、だからこそできる限りのことをして、独立に至りました。

着いてきてくれたメンバーには「俺と結婚してくれ。お前ら俺の嫁や」くらいのことを言いましたよ。もちろん会社ですから、退職など「離婚の可能性」はそれぞれ当たり前にありますが、みんな大事なパートナーです。

「遊んでたらほめられた」を普通にしたいのです

仕事の成果を出すのは会社として当然ですが、ヴァンパイア株式会社のメンバーはみんな「遊び」を大切にしています。

フレックスや在宅が可能なのはもちろんですが、昼休みにゲームやカラオケをしていても全然構いませんし、アウトプットがしっかりしていれば、遊びのために会社を早退しても問題ありません。

ゆるく組織を成り立たせて、遊びや規格外を制限しない。そういった経験が、SNSでのキャラクター運用にも活かされます。キャラクター運用は「卑屈にならない」ことが大事です。クライアントの意向に添いすぎずに、こちらから提案していくことが求められます。

キャラクターにしても例えば「かわいい！」で許されやすい、攻撃されない安全かつファンが作れる運用などをご提案しますが、クライアントによっては緩すぎるキャラクターなどは受け入れられないときもあります。それでも提案を恐れない。遊びとチャレンジが掛け合わさった先に、輝くアイデアがあるんです。

全人類ヴァンパイア化計画、本気で掲げてます

ヴァンパイア達の楽園を作りたい、それがヴァンパイア株式会社の目的のひとつです。

「ヴァンパイア株式会社って名前は珍しいね、変わっているね」ってよく言われます。会社名を思いついて調べてみたら、誰もが知っている単語なのに英語表記でもカタカナ表記でも社名としては存在していませんでしたね。

社名の由来として、ヴァンパイアってモンスターが昔から大好きだったんです。ヴァンパイアがどれだけ好きなのか語ると長くなりすぎるのでやめておきますが、でも好きだから社名にしただけではありません。

ヴァンパイアって誰でも知っている怪物、いわば日陰者ですよね。血を吸って、ニンニクが嫌いで、昼は生きていけないけれど、夜は最強です。

私自身が実は多動性注意欠陥障害、いわゆるADHD傾向が強く、そんな自分に悩んで、くすぶっていた時期がありました。でもいざチームの仲間に話すと、「実は僕も…」ってカミングアウトがちらほら。今くすぶっている人達も、適切な環境になれば最強のヴァンパイアかもしれないじゃないですか。ならヴァンパイア達の楽園を作りたいと思いました。あと、全国各地にヴァンパイアの仲間を増殖させていきたいんですよね。名付けて、全人類ヴァンパイア化計画です。本気ですよ？

現在の事業面の課題としては、立ち上げたばかりの会社ですから、これからもっと営業をして事業を育てていきたい。そして資金繰りをしっかりしながら、共感してくれる人と組んで拡大させていきたいと思います。

やりたいアイデアは何万個とありますから、事業を育てたら、誰かに継承してもらって、また仲間達と次のビジネスを立ち上げていきたいとも思っています。最終的な夢は、世界征服ですかね。