日立、マレーシアのAI企業を買収 グローバル事業拡大
日立製作所は10日、マレーシアのIT(情報技術)企業、フュージョテックホールディングス(HD)を4月1日付で買収したと発表した。フュージョテックは大手ITのフュージョネックスインターナショナルが事業継承した新会社で、人工知能(AI)やビッグデータ関連サービスを手掛けており、100億円規模の売り上げがある。買収額は数百億円程度とみられる。
フュージョテックは製造や流通・物流、金融などの分野で、AIやデータ分析を使ったソフトウエアをクラウドを通じて提供する「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」事業を手掛けている。顧客はアジア地域で1万1000社以上に上る。従業員は330人にもかかわらず、AIにたけた人材やデータサイエンティストを260人抱え、2桁台の営業利益率を出している。
日立が買収に踏み切ったのは、同社が注力するデジタル事業「ルマーダ」のグローバル展開を加速するためだ。2021年度を最終年度とする中期経営計画で、ルマーダの売上高を18年度比42%増の1兆6000億円にする目標を掲げる。
この目標達成のために重視するのが、1割程度にとどまる海外売上比率の引き上げと、幅広い業種に短期間でサービスを提供する仕組みの強化だ。
フュージョテックの買収により、アジア地域で1万社超の顧客基盤を手に入れる。東南アジアでデジタル投資意欲の高い中小企業を対象に、23年度までに6万社強の顧客獲得を目指す。
SaaS事業のサブスクリプション(定額課金)の仕組みも取り込む。データ分析による売り上げ予測や潜在的優良顧客の洗い出しなど、業種ごとに共通するニーズをテンプレート化するノウハウも吸収し、ルマーダの横展開に生かす。
海外顧客の悩みや課題を引き出し、デジタル技術を使った解決策を提案する「フロント人材」と呼ぶ営業部隊も強化する。日立はデジタル関連のフロント人材を18年度の2万3000人から、21年度に4万人まで増やす。さらなる買収や提携に加え「フュージョテックの人材を核に社内の人材育成を加速する」(徳永俊昭執行役専務)としている。(井原敏宏)