北海道共創パートナーズ、「伴走型」の中小コンサル
企業コンサルティングの北海道共創パートナーズ(HKP、札幌市)は4月から、北洋銀行の完全子会社となった。コンサルとしては、相談の受け付けから具体的な解決策の提示まで一貫体制で手がけるのが身上。地銀の店舗網も活用し、事業承継に悩む北海道企業に徹底的に寄り添う。
設立は3年前。中小を含む道内企業の経営者の要望に応えようと、約30人の職員が奔走してきた。岩崎俊一郎社長が目指すのは「一緒に走りながら踏み込んで解決できる『伴走型サービス』」だという。
経営ビジョンを作る「企業コンサルティング」や中間管理職の育成などの「人材紹介」のほか「M&A(合併・買収)」の支援もある。年間で200件程度の案件を扱ってきた。
道内では経営者の高齢化が進み事業承継のニーズは増えている。ただ帝国データバンクの調査で後継候補を属性別にみると「子供」が52%で全国平均を10ポイント超上回る。「非同族」は32%で全国平均を下回り、家族を後継者として重視する傾向にある。
「事業承継を考えているが、自分にある選択肢を知りたい」。道内で企業を経営する男性は2018年、HKPにこんな相談を持ちかけた。男性には事業を引き継ぐ子供はいなかったが、保有株式を第三者には売り渡したくないと考えていた。 HKPの担当者は男性と約1年間話し合って様々な解決策を提示。最終的に男性は、当初固持していた第三者への譲渡がが最適として株式の売却を決めた。現在も同社が支援を続けている。
企業の要望に合わせ、相談の受け付けから解決策の提示まで一連の作業全てを手掛ける。人材紹介事業やM&A仲介を手掛ける地銀や地銀関連企業は全国で見られるが、最後まで関わり続けるのは珍しい。1年以上という長期間の協議を通じてオーダーメード方式の解決を目指す。
HKPは3月まで日本人材機構(東京・中央)との共同出資だったが、北洋銀が全株式を取得し、銀行の傘下に入った。HKPの岩崎社長は「北洋銀への信頼を武器に顧客を安心させられる」ことをメリットに挙げる。経営者の相談案件の多くは銀行の店舗経由で入ってくるケースが多く、拠点網を活用できるのも大きい。企業のささいな課題まで情報が入ってくるようになったという。
事業の将来性などで融資の可否や規模を判断する「事業性理解」を進める北洋銀にもメリットがある。近年は企業との対話を強化しており、融資だけでは補えないナイーブな課題が出てきた際にHKPのノウハウを活用できるというわけだ。
新型コロナウイルスの終息後には、V字回復を求める一手の指南を求める経営者が増えるとみている。毎月の定額報酬制といった新たな顧客との関わり方も検討している。地銀グループという強みも生かしながらも、個別の企業の経営改善にきめ細かく向き合うという基本にブレはない。
(塩崎健太郎)
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