“事業承継”が世の中で取りざたされる前から支援に取り組まれているおふたり。ご自身がされた事業承継の経験を活かした新潟県での活動についてお伺いしました。

新潟県でしっかりとした事業承継支援に取り組みたい

Q)にいがた事業承継サポート室について、設立を決断された思いをお聞かせ頂けますか。

代表取締役の土田正憲(以下、「正憲」)と取締役の土田克則(以下、「克則」)は、10年以上前に中小企業診断士の資格を取得していますが、その当時から、事業承継の問題が取りざたされており、また、これから問題が拡大していくと思っていたので、事業承継支援の必要性を感じていました。たまたま、その点について2人の考えが一致して「にいがた事業承継サポート室」の設立を決意し、今に至っています。

新潟県内で事業承継をきちんと支援する専門家が足りないと感じていたことも理由の一つです。ちょうど「事業承継士」の資格ができた頃だったこともあり、事業承継士の資格を取得しました。
その後、他の中小企業診断士と税理士の2人が事業承継士の資格を取得したこともあり、「事業承継協会 新潟支部」も立ち上げました。

 

Q)中小企業診断士となられてからの10年間で実際に事業承継に関するご相談は受けていましたか?

(正憲)最初の頃はほとんど無かったです。いわゆる経営全般のご相談が多くて、売り上げ向上(マーケティングに関する)などの相談が多かったのですが、今は「資金繰りが苦しい」などの経営改善に関するご相談がホントに多くなりなした。それに付随して事業承継に関するご相談もだんだん増えてきました。

 

事業承継支援の専門家として

Q)事業承継支援を進めていく中で、注意されていることやおふたりならではの強みはございますか?

(克則)私自身、もともと中小企業の後継者です。卸売りと小売りの会社を27歳の時に父から引き継ぎました。先代からの引継ぎを全然していないままに即社長になった経験があります。

中小企業診断士となった時には、店舗型ビジネスの支援をしたいと思っていましたが、周囲からの「土田さんは事業承継で苦労してきたんだから、事業承継支援をやったほうがいいんじゃない?」という声があったことと、また自分でも「その通りかもしれない」と思っていたこともあり、本格的に事業承継支援に取り組むようになりました。

事業承継の際、やはり後継者がどうしても苦労する立場にあると考えています。後継者自身が、後継者として何をする必要があるのか、「社長になったらこんなことを学んでいかなければいけないよね。」ということを私は知っているので、それが強みです。

自称、「事業承継の専門家」と謳っていても、中小企業経営者としての立場から見ると事業承継のことを何にも分かっていない専門家は今でも多いと思っています。「自分は新潟県内で事業承継の支援ができる本物の専門家である。」という自覚を持って取り組んでいます。

 

覚悟をもって事業承継に取り組む(事例)

Q)にいがた事業承継サポート室を設立されてからの6年間で、思い出深い内容やエピソード、救われた企業様はいらっしゃいますか?

(正憲)個人事業で、親族外の従業員承継を支援した機会がありました。その件は我々がしっかり参画し、フルに支援したので印象深いです。最終的には現社長が株式会社を設立し、そこへ事業を譲渡しました。その会社は現在も経営しながら、経営革新に取り組んでいます。

事業承継後の現在も継続支援しております。

 

・事業承継に取り組まなければいけない状態で放置された状況

(正憲)当時の状況は、事業承継をする予定だったにもかかわらず5年間話が進んでいない状況でした。先代の体力的な問題もあるし、そろそろ事業承継しなければいけない状況となり、地元の商工会経由でご相談頂き、そこから支援が始まりました。

当時は、後継者は決まっていたものの、「個人事業から個人事業へ引き継げばいいのか、それとも株式会社を設立したほうがいいのか」等の、事業承継に関して具体的にどのように取り組んでいけばよいか分からない状況でした。

 

・後継者と先代の覚悟

(克則)後継者が”経営者”となる為に、「これくらいは知っていなければいけない」ということを教えました。後継者自身10年間程度本事業に従事されていたこともあり、本筋の”ビジネスの肝”や”大切にすべきこと”はしっかりと理解していたので、経理の基本を教えたり、顧問税理士を紹介したりというサポートをしました。

また、後継者本人も自分で労務の勉強をしていたりと、サポートを受けながら事業承継に向けた準備を進めていきました。

先代は、代が変わることで自分のイメージするお店では無くなってしまうのではという不安を持たれていましたが、「先代の思いを制約として残しすぎることはできない」等の承継する側としての覚悟や考え方をアドバイスし、覚悟を決めてもらえた時に、「いい仕事をしたな。」という達成感を感じました。

充実した事業承継支援のためにすべきこと

Q)現在おふたりが感じていらっしゃる事業承継のマーケットで求められているものは何でしょうか?

(正憲)先代が事業承継に対して軽く考えている印象があり、軽く考えすぎてしまっているために、「支援」に入りにくい印象があります。

・なんとなく事業承継をイメージされた段階での一次的な相談を受ける機会があり、「ちゃんと後継者の方と話してくださいね!」と伝えても全然動いて頂けない。

・会社を継がないことが決まっているが、その後どうすればいいか分からないという状態で止まってしまっている。

・売却以外の選択肢が無いのにも関わらず行動しない。

「自分が幸せに終われればそれでいい。」という思いを持たれており、問題を放置する方が多い印象を受けます。そのため、はじめは企業再生で支援するが、後に「事業承継も必要だ」となるパターンも多いです。

 

Q)これから取り組んでいきたいこと、支援していきたいこと、変えていきたいことはありますか?

金融機関との連携

(正憲)にいがた事業承継サポート室として、昨年から、地元の複数の金融機関とコンサルティングの協定を締結しています。
金融機関との連携を活かして、事業承継の支援を強化したいと考えております。

また、これから事業承継がからむ経営改善となりそうな案件があったりと、実際に事業承継がからむ経営改善の案件が続いていくと考えられるので、これからもそのような案件にしっかり支援していきたいです。

M&A支援の強化

最近では、新型コロナウイルスの影響でスモールM&Aが増えてくるという見解もありますが、弊社の克則先生もご自身で実際にM&Aを経験しているので、その経験を活かしてよりリアルなアドバイスをしていこうと考えています。

M&Aの市場が佳境となっていくかもしれませんが、やはり売り手と買い手がいての話なので、その中で”不公平さ”や”不利益”、”不都合”といった問題の解決に取り組んでいきたいと考えております。

後継者塾

(正憲)後継者塾の取り組みを強化していきたいと考えております。積極的に活動し、「後継者ってこういう勉強をしなくちゃいけないんだよ。」というのをしっかり伝えていきたいです。

やはり後継者の育成は事業承継支援の王道かなと考えています。後継者塾を受講して頂き、そこで自信を持って後継者として活躍して欲しいですし、また、その中で更なる支援が必要であればしっかり支援していきたいです。

受講生が塾を通して能動的に事業承継に取り組めるように後押しをしていきたいです。

おわりに

Q)新潟県ないし全国の事業承継を検討されている経営者・後継者に伝えたいメッセージはありますか。

・後継者の方へ

(正憲)先代経営者への尊敬の気持ちを持ってほしいと考えています。どんなに小さな会社でも経営者の立場的な辛さはあると思います。会社をしっかり存続させてきた先代への尊敬は忘れないでほしいです。

・先代経営者の方へ

(正憲)事業承継は重要度は高いですが緊急度があまり高くないので、先送りにされてしまうケースが多々あります。
元気なうちにしっかり会社を承継して、会長的な立場で会社を支援するほうがスムーズで良いと考えています。後継者が決まっているのであれば、是非、事業承継に向けて早めに行動して頂ければと思います。

(克則)借金があり事業承継ができないと考えて悩まれている経営者の方を最近お見掛けしますが、そんな状況でも事業承継ができる可能性はあるので、是非、一度専門家に相談して頂ければと思います。

にいがた事業承継サポート室

代表取締役 土田正憲氏

取締役 土田克則氏

中小企業診断士が設立した『事業承継支援専門』のコンサルタント会社。
事業継続と持続的な成長に向けた経営課題に対し、成長戦略と経営課題解決の専門家である中小企業診断士が経営全般の視点で事業承継を支援している。