中堅・中小企業様がM&Aを活用できるように、また企業それぞれの思いを繋いでいくためにと活動されている樋口様にお話を伺いました。
Q)よろしくお願いします。まずは樋口様の自己紹介と会社概要について教えて頂けますでしょうか?
はい、まず私の自己紹介ですが、新卒で野村證券に就職後、外資系も含め複数の証券会社に勤め、これまで中小企業から大企業まで様々な企業様の資金調達やM&Aの支援を経験してきました。
会社概要について、事業承継やベンチャーExitなど、企業が新陳代謝をしていくためにM&Aを活用するにあたって、中堅・中小企業などの裾野までマーケットを広げていきたいという気持ちと、証券会社に勤めていた際に多くの企業の社長様とお付き合いさせて頂く中で、社長様ひとりひとりの思いを繋げていくお手伝いをしたいと思い、弊社を設立致しました。
現在は、M&Aのアドバイザリーや、M&Aの際の譲渡側と譲受側のマッチング業務に取り組む機会が多いです。また、それのみならず事業パートナーや資本業務提携に関するお手伝いをさせて頂くこともあります。
Q) 株式会社Orchestra Holdingsの傘下として会社を設立された経緯を教えて頂けますでしょうか?
はい、Orchestra Holdingsの中村社長とは、野村證券時代からお付き合いさせて頂いており、また、設立時にお互いに方向性が一致した事が一番の要因です。
更に、資本的な制約や社会的な信用度で言うと、ゼロから立ち上げるとスピード感が出ないということもあったのでOrchestra Holdingsの傘下として設立致しました。
Q) 株式会社コンチェルトパートナーズ(Concerto Partners)の社名の由来をお伺いしてもよろしいでしょうか?
コンチェルト(イタリア語で「協奏曲」)。主役となるメインの楽器とそれを活かしていく周囲の楽器で協奏曲が作られる中で、我々とクライアント様が共にあるべき立ち位置に立ち共に協奏曲を作り上げていくイメージを描いております。また、親会社が「Orchestra Holdings(オーケストラホールディングス)」ということもあるので、音楽つながりで座りがいいと思い決めました。
Q)事業内容に関して、詳しくお伺いさせて頂いてもよろしいですか?
現在、一番注力しているのが、スモールM&Aの裾野を広げるため、会社や事業を譲渡したいとご相談を頂いた際にどういう買い手がいるかというペルソナ*をしっかり想定しながら、かなり数多くアプローチさせて頂くことです。
やはり、中小企業のM&Aとなると一社毎に特性が違っており、独特の企業文化があります。その特性に完全にフィットさせる為には、多様な企業にアプローチする必要があると考えております。譲渡を検討されている企業様のお考えに沿い、もちろん買い手側の意向も細かく把握しながら、将来的にちゃんとシナジー(相乗効果)が生まれることを想像しててマッチングさせて頂いております。
※ ペルソナ:サービス・商品を利用するの典型的なユーザー像のこと。
Q)事業を推進していくうえで、樋口様の証券会社でのご経験はどのようにシナジー(相乗効果)を生んでいるのでしょうか?
証券会社に勤めていた頃に、IPO*予備軍に対して企業評価(株価算定)をお手伝いしており、「何が投資家の評価になるんだ。」みたいなところを年間300件程を各企業様と検討してきました。そのため、特定の業種に関わらず広い業種において、どういったビジネスモデルで事業を運営されているかを理解する力が非常に活かせております。
※IPO:Initial Public Offeringの略。未上場企業が、新規に株式を証券取引所に上場すること。
Q)現在、お問い合わせを頂くことが多い業種や、今後推進していきたい業種はございますか?
特定の業種に偏っているわけではないですが、やはりITを含めたサービス業の企業様にお問い合わせを頂く機会が非常に多い印象を受けています。
経営者のご年齢が30~40歳であろうが、60~70歳であろうが、世の中の変化を捉えながら新しい事に取り組まれている会社様はあまた世の中には存在しています。
たまたまタイミング上で、「会社のモデルチェンジがしたい。」または「後継ぎがいないので年齢上、事業承継戦略を考えていかなければいけない。」等、次の世代の経営者にバトンを渡す時に、やはり我々としては、新しい事や価値のある事に取り組まれている企業様のご支援に注力していきたいと考えています。
Q)ありがとうございます。上記回答から、チャレンジしている企業様に力を注いでいきたいという意味合いだと考えますが、チャレンジしたいけど行き詰ってしまっている企業様や、M&Aなのか、上場なのか等、出口をどうしようかと悩んでいる方も多々いらっしゃると思います。
行き詰まる理由は多々あると思います。
製品やサービスは素晴らしいが営業してくれる人がいない状況、どうしても会社を取り巻く競合先を鑑みるとなかなかうまく進んでいけない状況など。一方で、自分たちで良い製品・サービスを提供できていない場合はお手伝いできることは限られてしまうこともあります。
それぞれの企業の強みと弱みをしっかりと理解することにより、M&Aなのか、上場なのか、M&Aにおいてはどのような相手が最良なのかをご提案することが可能になると考えています。また、その理解をベースにしてM&Aとは別にビジネスマッチングサービスも展開しております。
M&Aという手段が企業のブレイクスルーのきっかけとなるべく、我々がサポートしていきたいと考えております。
Q)コンチェルト様のプラットフォームにて、会員登録頂いた企業様と頻繁にコミュニケーションを取られているとのことですが、具体的にはどのような取り組みをされていますか?
M&Aに対してどういうニーズがあるのか等、会員登録時に自発的に情報を入力して頂ければ、我々でそこを理解させて頂きニーズに合ったものをご紹介させて頂きます。
ただし、プラットフォームに情報を入力して頂いた際、より細かな情報を我々が把握することで更にニーズに沿ったものをご紹介できるので、後工程となってしまいますがインタビューをさせて頂くことが通例となっています。その後、頂いた情報を更にブラッシュアップさせ、より精緻なところでニーズの把握をさせて頂きます。
一方で、買いたいとご記入いただいた際には、譲渡企業様の候補が上がってきた際にはシステム経由もしくは直接ご連絡を申し上げ、ニーズに合った企業様をご案内させて頂くようにしています。
悩みとしては、ニーズに沿ってお客様へピンポイントでご紹介できているのかという点がありますが、現状ではある程度の対面も挟みながら取り組んでおります。
Q)今後、会社規模の拡大のご予定はございますか?
今の世の中は、パートナー企業様も含めて各種業務内容に対してパーツパーツでお手伝い頂ける企業様が増えていると思います。我々はそれをうまく活用しながら、コントロールタワーとしてはしっかり社員を抱えて業務を遂行しますが、様々なリソースを使いながら事業に取り組んでいく予定です。
効率性を求めていくために、正社員という肩書きだけではなく、ビジネスの拡大とともにメンバーを増やしていきながらも、外部パートナーもうまく使いながら事業に取り組んでいきたいと考えております。
Q) M&Aや第三者承継のマーケットが今後どのように変化していくとお考えでしょうか?
明らかに、スモールM&Aという言葉自体が世の中で一般化してきている中で、売り手のみならず買い手側の裾野も広がっていると捉えています。もちろん、譲渡をご検討される方でもM&Aをご検討したいという声も多くなっており、マーケットが広がっている事は強く感じています。
その一方で、マッチングサイトの設計をどうするか?等、どうやって市場におけるプレイヤー(売り手と買い手)を結び付けていくか、また、譲渡する側としては他社に売却することや従業員に譲渡するといった情報が漏れてしまうことで、既存ビジネスがダメージを負いかねないと考えています。
その為、秘匿性を担保しながら、どうやってスピーディーにアプローチしていけるかが大きな課題となると思います。行政の支援機関ができることと民間の努力でできることは違うと思います。我々としては少ない人員の中で世にあるリソースをうまく取り込みながら、かつ質を保ちながらボリュームを増やしていく事を課題として取り組んでいます。
M&Aの仲介会社やアドバイザリー会社様、行政の支援機関と連携し切磋琢磨しながら、増えていくプレイヤーをうまく繋げていく仕組みを考えてければと思います。
また、現在はM&A仲介会社やアドバイザリー会社のあり方が整理されている状況なので、どうやって利益相反を回避していくかが課題だと考えます。特に譲渡を検討されている方には人生で一度きりの方もいらっしゃると思いますし、どう取り組めばいいか分からない事も多いと思いますので、しっかり透明性を持つことも大切だと考えています。
我々としては、設立当初から利益相反とならないよう、両手仲介をしないようにしています。一方で、譲渡サイドに立っていても、譲受サイドにもサービスしなければいけないところもあるので、仲介者の立場として何に注意が必要で、どうあるべきなのかをクリアにしなければいけないと考えています。
初めてM&Aをされる買い手及び売り手の方へしっかりお伝えして、やってみて良かったなと思って頂けるマーケットしていきたいと考えています。
Q)最後に、事業承継・M&Aを検討したい企業様へメッセージをお願い致します。
譲渡をご検討される方については、人生のリタイアメントプラントと密接だと考えています。そうなると時間をかけざるを得ないと思います。
例えば株式を100%丸ごと譲渡することから始めるのではなく、後継者探しの一環としてパートナー企業探しをしていくという手段もあると思いますので、様々なバリエーションの中からメリット・デメリット等を考慮しながら、選択肢の一つとしてM&Aをご検討頂ければと思います。
必ずしもM&Aを最終的なゴールにしなければいけないという事はないと思いますので、様々な可能性をご検討頂き、ベストな選択肢を取って頂きたいと考えています。
ありがとうございました。
株式会社コンチェルトパートナーズ(Concerto Partners)
代表取締役 樋口 能敬氏
野村證券株式会社勤務を経て、外資系投資銀行にて企業の資金調達支援、M&Aアドバイザリー業務等の投資銀行業務を担当。その後みずほ証券にて上場企業のエクイティファイナンス(公募増資、売出等)、IPOのマーケティング~プライシング統括責任者として数多くの案件に携わる。2019年4月株式会社Orchestra Holdings入社。東京大学経済学部卒。