「経営理念」をどのように捉えているでしょうか。
会社の信条、大事にしていること、社長の意思、等々様々な解釈をお持ちかと思います。ビジョンやミッション、社是こそが理念であるという方もいらっしゃるかもしれません。

理念という言葉がやや堅苦しく、概念的に感じるかもしれませんが、「共通目的」もしくは「会社が大切にしてきたこと、これからも大切にしていくこと」と言葉を変えると、納得しやすいのではないでしょうか。

経営理念の浸透例

従業員まで理念が浸透している代表例は、東京ディズニーランドではないでしょうか。
東京ディズニーランドでは、マニュアルにとらわれず、アルバイトや現場の従業員が実態に合わせて自分で判断し、行動しています。来場者を見て行う臨機応変な対応が、感動を呼んでいます。
こうした状態になっている理由は、会社が何を大切にし、何を存在価値として運営されているかを全員が知っているからです。即ち、共通の目的や目標があり、組織、社員一人ひとりに浸透し、個人レベルで何をすべきかが理解されているからこそ成せる状態です。

あなたの会社に置き換えた時はどうでしょうか?

自社のパートや従業員は、同じような動きができるでしょうか?

 

うまくいっていない会社の本当の理由

うまくいっていない(業績が悪い)会社は、似たような声が聞こえてきます。
ほとんどの場合、社長は次のような言及をします。

・社員が経営感覚をもたずに行動している

・言われたことだけを行い、自分で考えようとしない

・指示待ち人間が多い

一方で社員は、「社長が何をやりたいのか、ビジョンが見えない」と言います。

「共通目的」もしくは「会社が大切にしてきたこと、これからも大切にしていくこと」が浸透していないと、経営者と社員が互いに不満を抱えるのは当たり前のことです。では、経営理念が浸透しているとなぜうまくいくのでしょうか。

会社では、それぞれの部署に対し共通目的を達成させるための役割(責任) が配分され、同時に権限が委譲されます。さらに、その部署の構成員に対して、部署の役割を達成するための、構成員の役割と権限が配分されます。このように整理すると、根幹はすべて共通目的、即ち理念です。

経営において大切なことは、責任の大きさに応じた権限が委譲されることです。人はお金だけでは動機づけされません。任されるという、自らの存在を認められ信頼を受けたときにモチベーションが高くなります。うまくいっていない会社は、権限移譲が適切に行われていません。
共通目的とは異なる役割や権限が配分されてしまい、それがコミュニケーション不足をうみ、セクショナリズムを発生させてしまいます。

結果として、冒頭のような声が聞こえてきてしまいます。

 

理念とコミュニケーション

コミュニケーションが大切なことはご理解頂けると思います。

しかし、コミュニケーションではなく、一方的な発信に近くなってしまっている会社もあるのではないでしょうか。特に社長から社員へ、上司から部下へという上から下のコミュニケーションです。共通目的が浸透していくのに必要なプロセスのため、大切なコミュニケーションであることに違いはありません。しかし、これが一方通行になってしまったら、ワンマン体制となってしまいます。

共通目的が伝わった後、部署間、社員間の水平方向のコミュニケーションがないと、連係して顧客にサービスを提供することができません。自分の範囲だけでは、顧客を満足させることには不十分な場合が多いです。
ディズニーが何故感動を生み出せるのか。それは、会社の理念を知った人同士が常に現場でコミュニケーションをとっているからです。

また、現場から管理者や経営層へのコミュニケーションもとても大切です。
顧客との接点や技術は現場にあります。それを経営陣が知ることで、経営上の適切な意思決定が行えます。現場の人が自分の状況やポジションを把握するだけでなく、経営者が現場の声を反映した戦略を策定することが可能になります。

多様な方向とのコミュニケーションが適切な状況判断を生み、現場の社員が自ら判断して行動に移せるような環境が生まれます。

 

経営理念を構成する要素と企業の策定例

経営理念は、次の5つの要素で構成されています。

ビジョン:実現したい未来

ミッション:果たすべき使命

バリュー:価値・強み

スピリット:大切にすべき精神

スローガン:合言葉

ミッションを起点にすると、ビジョンは未来軸、バリューは企業軸、スピリットは個人軸です。スローガンは、ミッションを示す合言葉です。未来(ビジョン)に向けた、4つの要素が企業の価値観や風土、「その企業らしさ」に繋がります。これら5つの要素は、必ずしも全て満たさなくてはならないものではありません。

いくつか例を記載します。

 

ライオン(創業102年 設立:1918年(大正7年))

1.われわれは、人の力、技術の力、マーケティングの力を結集して、日々の暮らしに役立つ優良製品を提供する。
2.われわれは、創業以来の伝統である「挑戦と創造の心」を大切にし、事業の永続的発展に努める。
3.われわれは、企業を支えるすべての人々に深く感謝し、誠意と相互の信頼をもって共栄をはかる。

スピリット(創業の想い)やミッションを中心に据えています。

※別途、社是があります。

 

  • グリコ(創業98年 創業:1922(大正11))

「おいしさと健康」

おいしさの感動を 健康の歓びを 生命の輝きをGlicoは、ハート・ヘルス・ライフのフィールドでいきいきとした生活づくりに貢献します。

~Glicoスピリット~
「創る・楽しむ・わくわくさせる」

創ることを精一杯楽しんで、大胆に行動を起こしてみよう。面白いこと 新しいこと愉快なこと 素晴らしいこと創意に満ちたチャレンジは、きっとぼくらを わくわくさせる。もっとみんなを わくわくさせる。

ミッションとスピリットで発信しています。また、行動規範も併記されており、スピリットに厚みが出ています。

 

  • シャボン玉石けん株式会社(創業71年 設立1949(昭和24))

「健康な体ときれいな水を守る」

理念に対して、「人と環境にやさしい商品づくりを通して、社会に貢献し地球環境の保全を図り、次の世代に住み良い地球と社会を残すよう努めます。」と方針を持つことで、ビジョンやミッション、スピリットがより伝わるように工夫しています。

 

  • 凸版印刷株式会社(創業120年 設立1900(明治33))

「私たちは常にお客さまの信頼にこたえ彩りの知と技をもとにこころをこめた作品を創りだし情報・文化の担い手としてふれあい豊かなくらしに貢献します」

「企業理念は、私たちトッパンが社会に役立ち末永く発展することをめざして定められたものです。」と、理念の存在意義を説き、更に深堀りした説明が加えられています。

 

  • グンゼ株式会社(創業124年 設立1896(明治29))

「私たちは「人間尊重」「優良品の生産」「共存共栄」という創業の精神を経糸(たていと)に、「社是」の実践を通じて、社会からの期待に誠意をもって柔軟に応えることを緯糸(よこいと)として、社会に貢献してまいります。」

~創業の精神~
人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる

創業時からのスピリットを基に理念を据えており、124年という歴史から非常に説得力が伺えます。

 

  • 株式会社虎屋(創業216年 創業:1804年(文化元)

「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」

とてもシンプルなひとことですが、シンプルがゆえに会社としてのミッションが非常に伝わってくるフレーズです。

 

  • 株式会社Mizkan Holdings(創業216年 創業:1804年(文化元)

「買う身になって まごころこめて よい品を」
~相手の身になって考える~

「脚下照顧に基づく現状否認の実行」
~自身をよく見て挑戦する~

社外(お客様)と社内(社員)へ向けそれぞれに理念を伝えています。

 

  • 株式会社桃屋(創業100年 創業:1920年(大正9)

「良品質主義」

「広告宣言主義」

スピリットをシンプルに伝えています。

 

  • 株式会社にんべん(創業421年 創業:1699年(元禄12)

「顧客の立場になって仕事をする(顧客の利益)」
「社員の生活向上に努力する(社員の利益)」
「わが社の成長と安定に全力をつくす(わが社の利益)」

ミッションを分かりやすい言葉で伝えています。

経営理念はどこに行きつくのか

経営理念を突き詰めて考えていくと、実態は「企業が大切にしてきたこと」、「これからも大切にしていくこと」です。

よって、全ての経営理念は下記に行きつきます。

・共通の目的

・意思疎通

・協働の意欲

うまくいっていない(経営理念が浸透していない)例に触れましたが、これは、必ず経営者に原因があります。
下記3点のいずれかに該当します。

・社員に言い続けていない

・理念に反する言動をしている

・(昔設定した理念であり)現状に合わない

事業承継のタイミングでは、理念が現状と合わなくなっていることは多々あります。それをどうするかが、後継社長の最初の腕の見せどころです。強い企業は経営理念が明確化されており、全社員に浸透しています。
より強い企業へ、経営資源と経営理念を見つめなおし、より強固になるきっかけとなれば幸いです。