全国132の金融機関と提携し、地方におけるM&A支援に取り組まれているインクグロウ株式会社。地方における”買い手企業網”を作ることからスタートし、現在は約4,000社もの企業が買い手候補として登録しています。そんな、独自の路線でM&A支援に取り組まれている活動について、取締役 ネットワーク推進部長の成瀬 俊一氏に伺いました。

ヒト・会社・社会の繋がりを促進させる

――「インクグロウ」という社名の由来をお聞かせください。

はい、「企業の成長」を意味する「Incorporation Growth(インコーポレーション グロース)」を略して”インクグロウ“と命名しています。”ベンチャー・リンク”という会社から独立した会社で、ベンチャー・リンク時代からの「中小企業の活性化が日本経済の発展に繋がる」という理念のもと、企業の成長に寄与することを最大の目的として独立致しました。

また、会社のロゴマークでもある「水引き」について、「人と人が繋がる・人と会社が繋がる・会社と会社が繋がる・社会と会社が繋がる」などの”リンク”の思想を持ち、「様々なものが繋がることで”価値”が生まれる。」ことに貢献したいと考えています。

 

――事業承継(M&A)支援をスタートした背景をお聞かせください。

「中小企業の活性化にどう貢献していくか。」これが我々の事業領域となります。中小企業における経営者の高齢化・後継者不足問題が非常に大きな社会問題となっていますが、その問題にしっかりサポートしていきたいと考えており、「中小企業の『事業引継ぎ』支援NO1カンパニーへ!」というビジョンを掲げています。

ベンチャー・リンクより独立当初から、「次世代経営者支援」として、全国の信用金庫や地方銀行と共に「ビジネスクラブ」と呼ばれている会員サービスを運営しています。会員企業様より会費を頂きながら、経営支援に関するサービスの提供や情報発信を行っています。現在、全国132の金融機関と連携していますが、当時から提携している金融機関もかなり多く、長きに渡り提携させて頂いています。

本サービスは、後継者がいらっしゃる中小企業に向けに運営しており、企業の成長支援を目的としたサービスです。例えば「経営戦略の作成方法」をサポートしたり、「補助金の情報提供・申し込み支援」などを行っています。

ビジネスサミットONLINE:https://www.business-summit.jp/

 

――後継者不在に悩んでいる企業のために。

様々な支援を重ねている中で、「そもそも後継者がいらっしゃらないという会社が全国にたくさんいる。」という事に気づきました。そんな後継者不足で悩まれている中小企業へ向けてのソリューションとして、“M&A仲介事業”がスタート致しました。後継者不足の中小企業を支援するためにスタートした事業ですが、地方の企業様も含めれば、今後ますます増加していく”ご相談”すべてを対応するには限界があることを感じました。

そこで多くの企業様が安心して相談でき、M&Aのお相手も見つけることができるような支援をするためにスタートしたのが事業引継ぎ.netです。

地方における後継者不在に悩まれている社長は60~70代の方々が多く、最近はM&Aのマッチングプラットフォームが流行っていますが、そもそも高齢でITリテラシーの高くない経営者様にとっては到底使いこなすことができません。

我々の長きに渡る金融機関との提携関係を活かし、地元の企業同士でのM&Aを活性化させることを目的としてスタートしました。地元の金融機関と提携することで、地方の企業でも、規模に関わらず安心感を持って譲受先及び譲渡先を探すことができるプラットフォームとなっています。「事業引継ぎ.net」でマッチングした案件のサポートは、金融機関がそのまま支援する場合もあれば、我々が支援させて頂く場合もあり、案件によって金融機関に最適な支援方法を選択してもらっています。

事業引継ぎ.net:https://www.hikitsugi-net.com/

 

事業引継ぎ.net」での高確率なマッチング実績

――「事業引継ぎ.net」での実際のマッチング実績はどの程度ありますか?

現在、78%ほどの売り手企業様にマッチングが発生しています。これだけのマッチング発生率を誇っている理由として、「事業引継ぎ.net」ならではの特徴があることが挙げられます。

通常M&Aを進めていく際、売り手主体で話が進みますが、地域の中でのM&A(第三者承継)を促進するという目的を達成するため、我々は”買い手”企業を募ることから始め、買い手網の構築に取り組んでいます。大手M&Aマッチングサイトを分析してみると、”買い手企業”として都心の企業の掲載が非常に多く、地方県によってはほとんど掲載のない地域もあり、webリテラシーの差が如実に出ています。

 

――地方のM&Aは地方の企業同士で。

地方におけるM&Aは、地元の企業が地元の企業を引き継ぐことが圧倒的に多いです。その割に、M&Aマッチングサイトは地方の買い手網が確立されていません。そのため、地域の企業(特に中小企業)は買い手先が見つからない状況となってしまっています。その課題に対して、提携している金融機関と「地元でしっかりとした買い手企業を構築する」、地域内承継のインフラを構築することを最大の目的として、「事業引継ぎ.net」を立ち上げました。

2021.2.8現在、売り手企業登録数が“77”社で、買い手企業登録数が約”4000”社となっています。売り手数に対して買い手数が圧倒的に多いので、マッチング発生率が非常に高くなっています。

買い手の属性が大手M&Aマッチングサイトと違い、金融機関の取引先法人のみとなっています。M&Aでの買収に積極的な地方企業様、M&Aに興味はあっても自らマッチングサイトに登録するには至っていない企業様まで、取引関係のある金融機関が直接アプローチすることで、これだけの企業様にご登録頂いています。

 

――特に実績の高いエリアはございますか?

特に、立ち上げから取り組んできた“静岡県”は、買い手数が非常に充実しており、約2000社の買い手網を構築しています。これだけの買い手企業数なので、ほとんど売り手企業様にマッチング相手が見つかります。また、売り手企業に対して「興味がある」とご連絡頂く企業のほとんどが同じ静岡エリアの企業です。地元の企業へアプローチすることが成約率の向上に寄与すると捉えています。

対照的に、ご登録の数がまだまだ少ないエリアでは、そのマッチング率も低くなってしまっています。地元の買い手ネットワークは、地元の金融機関様が活動頂くことでしか作れないので、我々も支援を一層強化したいと思います。

 

全国132との金融機関との連携

――貴社が得意とすることをお聞かせ下さい。

我々の最大の強みは「全国132の金融機関との連携」です。地方の中小企業の実態を知っている金融機関と提携することで、地方のM&Aを後押しできると考えています。また、弊社は金融機関と長くお付き合いさせて頂いているので、金融機関の特徴を熟知しています。「事業引継ぎ.net」は、一般企業ではなく、金融機関として利用しやすいサービスとしています。他社とのマッチングサービスとの大きな違いです。

 

――「事業引継ぎ.net」の特徴が活きたM&A事例はございますか?

静岡県でのM&Aの案件で、我々がやりたかったことが形になった成約事例です。
売り手が非鉄金属卸業で年商数億円の企業様でした。後継者不在という状況で、金融機関へ相談されたのがはじまりで、「事業引継ぎ.net」へ掲載するまでに1年間ほど金融機関も独自で買い手企業を探していましたが、お相手が見つからないという状況でした。

しかし、「事業引継ぎ.net」へ掲載したところ、すぐに8社からお問い合わせを頂きました。その中で同金融機関が買い手登録していた2社とトップ面談を行い、うち1社とM&A成約に至ることができました。

当時、金融機関の営業担当者も日々の営業活動から各企業の買い手ニーズを汲み上げており、ニーズのイメージに則した買い手企業様や同業種の企業様へアプローチをしていました。
そういった人的な探索に加えて「事業引継ぎ.net」で全業種の買い手企業様の潜在的なニーズにもアプローチすることで、広く相手探しを行うことが可能となります。本案件もまさに、人的な探索ではアプローチしていなかった異業種の企業からの反応でM&Aの成約となりました。

「事業引継ぎ.net」を活用する事で、あらゆる企業に情報を届けることができるので、マッチングを最大化させることができます。

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さらなる中小企業支援の促進へ向けて

――今後注力されていく内容をお聞かせください。

事業引継ぎ.net」の買い手登録者数を更に増やし、マッチング精度の向上に取り組んでいきたいと考えています。現在、「レコメンド機能」があり、ご登録頂いた業種やエリアなどからオススメ企業をメール配信させて頂いていますが、今後は、レコメンドに対するマッチング結果などを集計・学習をさせながら、マッチング精度の向上に取り組みたいと考えています。買い手の数が増えれば増えるほど、よりレコメンドの精度は高まっていくと考えています。

また、今後は小規模のM&Aも増えていくことが予想されます。ある程度M&Aに掛かる業務を事業引継ぎ.netの中で完遂できるように機能拡張にも取り組んでいきたいと考えています。

また、会社全体として、M&Aアドバイザーとしての質の向上に取り組むことはもちろん、後継者がいらっしゃる企業様への「次世代経営者支援」にも注力しています。

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後継者不在に悩まれる経営者へのメッセージ

まず、我々や金融機関をどんどん頼って頂きたいと思います。コロナ禍の影響で、先行きが不安で、誰にも相談できない経営者様が全国にはたくさんいらっしゃいます。そんな時に、同業種で同じような規模の会社の社長様がどのような取り組みをされたか等、積極的に情報収集をしてほしいと思います。

金融機関、また我々は多くの情報を持っています。まずはご相談頂き、同じような悩みを多くの経営者が抱えている事を知ってもらい、そのうえで、様々なアドバイス・ご支援をさせて頂きたいと考えています。

 

インクグロウ株式会社

取締役 ネットワーク推進部長:成瀬 俊一 氏