2021年4月のM&A件数(適時開示ベース)は83件と前年同月を31件上回り、3カ月連続で増加した。4月としてはここ10年間で最多だった。

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

M&A件数増加の理由

国内案件が活発だったうえ、海外案件の復調が鮮明になっている。足元では新型コロナウイルスの変異株の感染が拡大しているのが、4月のM&A市場は回復基調が鮮明になっている。

1~4月の累計は325件で、前年同期を30件上回るハイペースで推移している。一方、4月の取引金額は1兆9263億円で、こちらも3カ月連続で1兆円の大台を超えた。前年4月は約350億円と過去最低水準に落ち込んだが、一転して4月として過去最高となった。

全83件中、海外案件は28件と3分の1を占め、2016年12月(29件)以来およそ4年半ぶりの高水準となった。海外案件は昨年の同時期、コロナショックの影響で失速した後、秋口から持ち直していたが、ここへきて一段と勢いづいている。

 

1兆円に迫る案件も

金額トップは、米投資ファンドのベインキャピタルがTOB(株式公開買い付け)などで日立金属を買収する案件で、総額約8100億円に上る見通し。TOBは11月下旬に予定。日立金属をめぐる一連の買収には日本産業パートナーズ(東京都千代田区)、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(同)の国内投資ファンド2社が参画し、日米連合で進められる。日立金属の売却は日立製作所のグループ事業再編の一環で、昨年は日立化成を約9600億円で昭和電工に売却した。

もう一つの大型案件は、パナソニックが約7800億円を投じる米ブルーヨンダーの買収。ブルーヨンダーはサプライチェーン(供給網)用ソフトウエアの有力企業で、株式80%を追加取得し、完全子会社化する。顧客企業の生産性向上などに向けたサプライチェーンマネジメント(SCM)サービスを世界規模で強化する。

インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の非上場化を巡るTOBは国内REIT(不動産投資信託)初の敵対的買収に発展した。米投資ファンドのスターウッド・キャピタル・グループが仕掛けた1600億円超の大型TOBだが、インベスコが反対を表明した。

金額上位の案件は次の通り。

1米ベインキャピタル日米3社連合で日立金属を買収8100億円
2パナソニックサプライチェーン・ソフトウエア企業の米ブルーヨンダーを
子会社化
7800億円
3米スターウッド・キャピタル・グループ国内不動産投資信託(REIT)のインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人をTOBで非上場化1665億円
4ノーリツ鋼機ワイヤレスイヤホン・ヘッドホン開発の米JLabを子会社化350億円
5ソニーグループブラジルの独立系音楽会社ソンリブレを買収283億円
6シティインデックスイレブンス日本アジアグループを再TOBで子会社化172億円
7Jトラストリース・割賦事業のJTキャピタル(ソウル)など韓国金融2子会社を現地社に譲渡114億円
8リログループ不動産事業の日商ベックス(東京都渋谷区)を中心とする日商ベックスグループ3社を子会社化86億円
9アスリード・キャピタル
(シンガポール)
富士興産をTOBで子会社化82.9億円
10レスターホールディングス半導体商社のPALTEKをTOBで子会社化74.4億円

 

 

株式会社ストライク

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