2021年6月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比5件減の51件だった。前年を下回るのは2カ月連続。前月比では17件減。ただ、1~6月(上期)では447件と前年同期を26件上回り、2008年(468件)以来13年ぶりの高水準で推移している。

売却案件が増加傾向

6月の取引総額は前年比倍増の4310億円で、不動産投資信託(REIT)のインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人を巡る2000億円規模の対抗TOB(株式公開買い付け)が金額を押し上げた。

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online編集部)が集計した。

6月に目を引いたのはM&Aの全51件中、売却案件が16件を占め、3分の1に達したこと。売却案件が3分の1を超えるのは昨年6月(全56件中、売却20件)以来となる。新型コロナウイルス感染拡大による事業環境の変化を受け、国内外で不採算事業や非中核事業の切り離しを積極的に進めている様子がうかがえる。

実例情報

AGCは、北米建築用ガラス事業を住宅用窓・ドア用ガラスメーカーの米カーディナル(ミネソタ州)に495億円で売却すると発表した。7月中に売却完了の見通し。AGCは1992年にAFGインダストリーズ(現AGC Flat Glass North America)を子会社化したが、近年、収益力の立て直しが課題となっていた。

歯科診療用品の通販大手、歯愛メディカルは新電力子会社の四つ葉電力(大阪市北区)と新潟県民電力(新潟市)を電力小売りのLooop(ループ、東京都台東区)に譲渡した。これに先立ち、1月に石川電力(金沢市)、福井電力(福井市)を手放した。年初の寒波や発電燃料不足を受けた卸電力価格の急騰で新電力を取り巻く事業環境が不透明感を増し、経営多角化のために進出した新電力事業の縮小に動いた。

1~6月の売却案件をみると、累計116件に上り、前年同期(81件)より4割以上増えた。この結果、全M&Aに占める売却の割合は26%と、前年同期の19%より7ポイント高まった。

6月M&A:金額上位案件(10億円以上)は次のとおり。

 

1米インベスコ・グループ不動産投資信託のインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人をTOBで非公開化2002億円
2三菱HCキャピタル海上コンテナリース大手の米CAIインターナショナルを子会社化1219億円
3AGC北米建築用ガラス事業を米カーディナルに譲渡495億円
4オリバー国内投資ファンドのインテグラルと組み、MBOで株式を非公開化385億円
5アステラス製薬欧州・ロシア・CIS・アジアで販売する感染症治療薬など5製品をドイツ製薬企業Cheplapharmに譲渡126億円
6綿半ホールディングス木造住宅フランチャイズ事業の夢ハウス(新潟県聖籠町)を子会社化27.1億円
7日本管理センター賃貸住宅管理のシンエイ(東京都立川市)など2社を子会社化27億円
8Nexus BankSAMURAI証券(東京都港区)など2金融関連子会社を譲渡12.7億円

 

 

株式会社ストライク

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