公認会計士・税理士・中小企業診断士・金融機関・ファンド・事業会社等の多様な専門人材が集まり、中小企業を幅広く支援されているロングブラックパートナーズ株式会社。事業承継・M&Aに加え、事業再生や事業成長など、企業の成長のために包括的にご支援されているその取り組みについて伺いました。
――ロングブラックパートナーズ株式会社を創業したきっかけをお聞かせください。
弊社はPwCで事業再生に取り組んでいたメンバーによって2008年に設立致しました。当時、PwCは事業再生支援の先駆けの会社で、サービスを提供しているお客様は大手の上場企業や地場でも最大規模の会社ばかりでした。
しかし、日本にある会社の9割以上が中小企業です。その9割の会社に対してもPwCと同じサービスを提供し、地方ないしは日本全体の活性化に役立ちたいという想いで設立致しました。
――創業当時からM&A支援は行っていたのですか?
創業初期の数年は、いくつかの地域において事業再生を中心とした業務を行っていました。中小企業は、経営力が弱かったり、人手不足だったりと課題も多いです。そのような中小企業に対して、コンサルタントとして外部からアドバイスをするだけでは、しっかりと事業再生を実現することができないケースも多々ありました。
そのため、自らリスクマネーを提供し、ハンズオンで中小企業の再生を支援すべく2012年に地域の金融機関と一緒に地域再生ファンドを立ち上げました。
その後も、業務を行う中で直面した中堅中小企業の各種課題に対応すべく、監査法人や税理士法人等の立ち上げを行っています。M&A支援業務に関しては2017年度より本格的にサービスを開始しており、弊社サービスの中でもどちらかというと後発になります。
事業再生サービスを原点に企業のステージや課題に対応する形でサービスの拡充を図っており、現時点においてもITコンサルティング等の新たなサービスの拡充に取り組んでいます。
――M&A支援業務をスタートしたきっかけを詳しくお聞かせ頂けますか?
我々は買い手ニーズからM&A支援をスタートしました。
それこそ、事業再生支援をして業績が良くなったお客様から「M&Aで会社を拡大したい。」という声や、投資ファンドからデューデリジェンスを依頼されることが少しずつ増え、更に「こういう会社を買収したい。」という声が上がり、買い手側として、売り手企業を探すことが始まりました。
更に、いざ売り手企業を探してきても、実際にM&Aとならないケースももちろんあり、ただ、残った売りニーズの企業に対して買い手企業を探すという流れで、売り案件も支援するようになりました。
どちらかと言うと、M&A市場が盛り上がってきたからM&A支援を始めたというよりも、お客様のリアルなM&Aニーズによって支援が始まりました。買いニーズからスタートしたM&A支援ですが、今はもちろん売りニーズの案件もご支援しております。
――それではM&A及び事業承継のご支援内容の詳細をお聞かせください。
我々は、M&A・事業承継に限らず、一気通貫でサポートできる体制を整えています。
具体的には、事業承継における後継者不足などの課題を持つ企業に対しては、まずは相続税など税務面のサポートや株式評価などから支援を開始します。そして、先々の承継プランを共に作成し、実際の事業承継を支援しています。
また、明確に売りニーズのあるお客様に対しては、他のM&A支援会社様と同様に買い手を探してM&Aを支援しています。
M&A・事業承継の受け皿という観点では、昨年度末に弊社グループ単独で運営を行う事業承継ファンドを立ち上げました。5月末に1件、事業承継に悩むオーナー様から株式を買い取らせていただきましたが、今後は弊社のM&A支援から承継ファンドの投資実行に繋がるケースも出てくると思います。
投資も含め、すべてを一気通貫で支援することができれば、お客様との信頼関係もより深く築くことができますし、スムーズでかつ細かく支援することができます。
――ファンド業務はどのような企業へ向けて支援されているのですか?
はい、国の中小企業経営力強化支援ファンド出資事業に基づいて設立されたファンドです。コロナ禍によって事業の再構築が必要となった企業や、事業承継に関する支援が必要な企業に対しての支援を目的としています。想定している投資先としては、小規模で事業承継・M&A先が見つかりにくい会社や、事業性があまり高くなく承継しづらい、いわゆる日本における事業承継課題となっている企業となります。
本ファンドは、弊社の、成長支援コンサルティング等の他のサービスラインも活用しながらご支援していく予定です。規模や業種、収益性等の観点からなかなか直ぐには他の企業からの投資が受け難い企業様のご支援も行っておりますので、事業承継にお困りの会社様、オーナー様は是非一度ご相談いただければと考えております。
本ファンドは、事業承継や業績改善が必要である中小企業に対して、LBPグループが総力を挙げて、地域と連携のうえ、積極的なハンズオンにより支援を行うことを目的としております。
具体的には、有用な経営資源を有するものの、事業承継や業績改善が進まない中小企業(新型コロナ感染拡大により経営環境が悪化・規模小・業績が不安定等)に対するソリューションツールとなることを企図しております。事業承継の受け皿機能、且つ、積極的なハンズオンによリ、中小企業の成長・磨き上げを後押しします。
――事業承継・M&Aでご支援される企業の特徴はございますか?
M&A支援をしているお客様には大きく分けて2パターンあります。
まずは、弊社からアプローチをした企業の中でM&Aに対するニーズをお持ちだったお客様、また、逆に先方よりお問い合わせ頂くパターン、加えて、弊社グループの税理士法人から紹介頂いたお客様などを支援するパターンです。
こちらは、一般的なM&A支援と言えます。
一方で、事業再生支援と関連して事業承継・M&Aを支援するパターンがあります。過去に弊社で事業再生を支援した会社や、金融機関様よりご紹介頂くお客様で、「後継者不在だが事業は残したい、かつ負債が重い。」というように、M&A・事業承継と合わせて事業再生が合わせて必要となってくるお客様です。こちらは金融機関と調整しながらM&Aの支援を行っています。
――お客様との関わりの中で気を付けている点はございますか?
弊社の強みであり、これからも守り続けていかなければいけない特徴ですが、我々がM&A支援をする際に最も大切にしていることで「しっかりと情報を伝える」ということです。
ただ売り手情報・買い手情報を伝えるのではなく、各会社をしっかりと分析して、M&Aにおける注意点やリスクを伝えるように努めています。正しい情報を伝えて正しく判断してもらうように努めています。
会社名のロングブラックパートナーズの名前にある「ブラック」という単語は「長期的な黒字」という意味を込めていますが、加えて、「何色を垂らしても黒色は黒色のままであり、何色にも染まらない。」という想いも含まれています。
アドバイザリー業務を生業のベースとしている弊社としては、客観性・中立性にこだわり、大切にしています。
――その他に御社ならではの強み・特徴はございますか?
泥臭い業務を堅実にこなすことができるのが当社の強みだと考えています。我々が支援している中堅中小企業は、人手不足や管理体制に悩んでいる企業が多いです。そのような中堅中小企業をコンサルティングと称して表面的に見ても、本質的な課題は分かりません。また、業界のセオリーで支援しても千差万別の中堅中小企業においてはあまり意味を成しません。
お客様が大量に抱えている紙ベースの生産データなどの細かな情報を細かく理解し吸い上げて分析し、財務情報と結びつけてしっかりとエビデンスを取ったうえで支援していくようにしています。
そこまで深く分析しお伝えすることで、中堅中小企業の社長様は自社の実態を、納得感を持って把握することができます。
――お客様を深く理解するように努めているのですね。
はい。また、実際にお客様のもとへ赴いて、社長や役員の方々と対話を重ねることも大切にしています。しっかりと対話をすることでお客様の課題が見えてきます。こまめに訪問することはもちろんですが、案件によっては数日間常駐して状況を把握させていただく場合もございます。
それは、地方のお客様であっても変わらず、しっかりと対話することを大切にしています。大変ではありますが、やはり対話は大切にしており、結果としてそれが我々の強みになっています。
――御社の強みが活きた事例はありますか?
一気通貫の支援体制が整っている我々の強みが活きた事例で、地方企業のM&Aを支援した案件があります。
当該案件は仲介案件として売り手/買い手双方をサポート致しましたが、買い手企業には弊社のグループ監査法人が財務観点からのサポートをさせていただきました。また投資後においても弊社グループ監査法人の関与は継続しています。
勿論、M&Aを実施するにあたり秘匿情報も多く取り扱うので、情報遵守の観点から弊社内でもしっかりと業務主体毎に情報管理は行います。
そのうえで、双方で議論すべきことや重要なポイントを共有しやすいという状況を作ることができます。
結果として本案件は正しい情報をしっかりとお伝えし、売り手買い手双方にとってwin-winなM&Aを支援することが出来ました。その後の継続支援も含めると、一気通貫で支援を行うという弊社の特徴を生かせた案件ではないかと考えています。
――これから注力していこうとお考えの支援内容はございますか?
これからはM&Aだけをスポットで支援するのではなく、会社の成長とセットで支援していきたいと考えています。日本の企業は6~7割が赤字と言われており、負債を抱えてしまっているが故に事業承継をしたくてもできない会社も多いと思います。実際に我々がアプローチしている会社にもそのような会社がありました。
そのような会社に対して、もちろん負債をどう返していくかも大切ですが、企業の成長へ向けて支援していくことも大切だと考えています。例えば、DXを後押しするなどです。実際に、この4月に中小企業のDX支援を目的にコンサルティング会社も設立しました。より包括低に会社の成長を包括的に後押ししていけたらと考えています。
――最後に、事業承継・M&Aをお考えの経営者・後継者様へメッセージをお願い致します。
まずは、ご自身の会社の現状をしっかりと把握して頂けたらと思います。それが事業承継・M&Aの取り組みのファーストステップだと考えています。そのうえで抱えている課題を客観的に捉えて、解決へ向けて取り組んでください。
「事業承継をしたい。」となんとなく話をされても、正しく会社の実態を理解できていない状況ではうまくいきません。また、実際に切羽詰まってから取り組みを検討するより、早い段階から検討したほうが、確実に選択肢の幅は広がります。時には外部のサポートを活用したりしながら、早期に、かつ客観的に会社の課題を判断して頂くことが重要であると考えています。
ロングブラックパートナーズ株式会社
M&Aアドバイザリー部門 統括
監査法人を経てPwCに入社。8年間一貫して事業再生業務に従事し、地域の中小企業から大手上場企業まで多数の再生案件に関与。ロングブラックパートナーズ入社後はサービスラインの拡充を図るべくM&A担当部署を立ち上げ、責任者として業務拡大に注力。オーナー企業の事業承継案件に加え、大手上場企業や民間投資ファンド含む多数の企業へのM&Aアドバイザリー及びデューディリジェンス業務に関与。また、一般企業の社外役員にも就任し、経営に関するアドバイザリー業務も日常的に行っている。LBPのM&A部門のリーダー。
京都大学経済学部卒 公認会計士