IT・ソフトウエア業界の2021年4-6月のM&A発表件数は38件で、4-6月としては2012年以降の10年間では、2020年の36件を上回り過去最多となった。
全上場企業に義務づけられた東証適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。
取引金額は約8276億円で、4-6月としては2012年以降の10年間では2016年の約8379億円に次ぐ2番目となった。7000億円を超える大型の案件があったため、金額が大きく伸びた。
金額のトップはパナソニックの7800億円。
取引金額のトップはパナソニックが、製造業や流通業、物流業などの業務を効率化するためのサプライチェーン(供給網)用ソフトウエアの専門会社である米ブルーヨンダー(アリゾナ州)の株式80%を取得し、子会社化すると発表した案件で、買収金額は株式取得で56億ドル、有利子負債の返済を含めて71億ドル(約7800億円、ほかにアドバイザリー費用約30億円)。
パナソニックは2020年7月にブルーヨンダーの株式20%を取得しており、今回の株式の追加取得で完全子会社化する。顧客企業の生産性向上などに向けたサプライチェーンマネジメントサービスを強化し、世界規模で事業拡大につなげるのが狙いで、2021年度第3四半期(2021年10~12月)までに買収完了を見込む。
取引金額の2番目はAOI TYO Holdingsが、米カーライル・グループと組んでMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した案件で、買付代金は最大213億9058万円。
中江康人代表取締役グループCEO(最高経営責任者)ら経営陣の依頼に基づき、カーライル・グループがTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株取得を目指す。
AOI TYOはテレビCM制作トップだが、コロナ禍の影響拡大でCM需要が大幅に減少し、2020年12月期決算は営業赤字に陥った。こうした中、広告のデジタル化への対応などを進めるうえで、非公開化を通じて中期的な視点で経営を進められる体制を作り出すことが不可欠と判断した。
金額の3番目はPKSHA Technologyが買収目的会社を通じて、オウケイウェイヴのソリューション事業を買収することを決めた案件で、取得金額は73億1400万円。オウケイウェイヴが対象事業を会社分割して設立する新会社PRAZNA(東京都港区)の全株式を取得する。
オウケイウェイヴのソリューション事業は、法人向けFAQ(よくある質問)/お問い合わせ管理システム「OKBIZ.」シリーズなど。PKSHAはグループ企業を通じて展開する自動応答エンジンとの掛け合わせにより、高付加価値化などにつなげる。
このほかに10億-50億円台が5件、10億円未満が9件、金額非公表などが21件あった。
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