社長の「思考整理」と「おわりを見越した戦略的準備」の重要性に着目し、会社の着地分野において、各種コンサルティングを提供されている、事業承継デザイナーの奥村聡氏に、サービス内容やメディア構築についてお伺いしました。
執筆者:桐谷晃世
基本的な事業内容としては、社長が会社を辞めるお手伝いをしています。
これからどうすればいいのか分からないという社長がご相談にいらっしゃるので、一緒に作戦を練り上げていって、結果的にそれが世に言うM&Aになる場合もあれば、社内で承継する場合もあるし、いっそ畳みましょうという場合もあります。
畳む場合にしてもМ&Aとの間の子のように、一部を事業譲渡で他に譲渡してから残った部分を畳むということもしました。
他にも社長が亡くなったとか、あるいは自分が亡くなったときのことを考えて準備しておきたいとか、そんな案件も受けています。
まとめると、社長が社長を辞めるときというのは亡くなるか、会社が潰れるか、自主的にゴールを作るかというパターンなので、それらをすべてお手伝いしているという感じですね。
事業承継は15年ほど続けています。事業承継デザイナーは8年ほどですね。
前職は百貨店に入社してすぐに辞めて、司法書士の資格を取って事務所を開いて、ある程度の規模まで到達した後にM&Aで他所に引き取ってもらいました。
そして一人になってからはずっと今のスタイルです。
やはり千差万別ですが、全体としてはもう二進も三進も行かなくて畳むしかないというケースが基本です。
また不慮の事故等で辞めざるを得ないことなどもありますが、それらも含めてすべてに支援しています。
僕の場合は、自分の仕事を「無事に社長を辞めるのをお手伝いする」という風に定義しています。
なのでМ&Aや事業承継といった区切られた分野の話とは違い、業種や報酬には拘らず、とにかく会社の最後をどうしようという社長の悩みに寄り添うことをモットーとしているんです。
そうした段階から相談に乗って一緒に考えてくれる人を社長は求めているのですが、意外に周囲にいないことが多くて、だからこそその部分を僕が担当しなければいけないと考えていますね。
まず前提として、倒産と廃業はまったく別物だという話があります。
倒産はもうお金がなくなって強制的に潰れさせられる。対して廃業は自主的に辞めるものなので自由度があり、円満な形を作ることができる。
さらに言うと、倒産ですと例えば顔見知りの買掛仕入れ先のお金だとか、従業員の未払い給料だとか、それすらも払えない。そこに裁判所が介入したところで、その人から買った恨みは変わらないし、社長としても業界なり地域なりで生きていけなくなってしまいます。
そういう世界がある一方で、廃業という形ならば、ある程度法律の制限はあるにしても守るべきものを守ることができますし、多少手元にお金を残すこともできる。
そういう風にゴールを調整できるんですね。
そのうえで、望ましいゴールを作るためにどういう手順で何をしていけばいいか、そもそも今廃業するかどうかという決断まで含めて、コンサルティングが必要とされます。
ただ僕以外にコンサルティングできる人がいるのかは知りませんが。
この仕事を続けていて感じたことは、やはり廃業のノウハウが世間に存在していないことなんです。何となく廃業というものは簡単だと思っている人が多いんですが、やってみるとそうではない。
そこで作戦を作るための教材を用意したかったというのが一つ、あともう一つは、やはり最後には社長が会社に決着を付けなければいけなくて、その基本は廃業だという意識を伝えたかったということがあります。
M&Aだとか事業承継だとか、それが当たり前のように見えますが、それって余裕があって初めてできることじゃないですか。
でも買いたい人も売りたい人も継ぎたい人もいない場合でも決着は付けなければいけないんです。そうしないといつか倒産するか、会社を残したまま社長が逝去してしまうのですから。
だからこそ、「まず基準を廃業というとこに置いておきましょう、すると経営も上手くいきますよ」、というメッセージを発信したかったんです。
廃業する目安、廃業を見据えた対策を行った方が、結果的に経営も人生も上手くいく、という風に私は考えています。
みなさん会社のことで悩むんですね。それは後継者のことであったり、業界のことであったり、それは当然なんですが、でも本当に一番考えるべきはやはり自分のことです。
つまり会社のことをずっと考えていても答えは出なくて、自分はどういう人間でどういう風に生きていくべきなのか、そこの腹が座らないと根本的な解決には繋がりません。
これは私の活動の中で実感したことで、たとえば会社の問題ではあるけれど社長は結局どういう人なのか、子供の頃から遡ってどういう子供だったか、そういう会話を経て自分自身の価値観がはっきりしたときにようやく決断できるようになるものなんです。
悩んだときは一度原点に戻って、自分の生きざまを大切にしましょう、というのがメッセージとして伝えたいことですね。