建築家と顧客のマッチングプラットフォームに始まり、事業承継・М&A仲介に至るまで、あらゆる角度から建築業界を支援する株式会社青山芸術の代表取締役 桂 竜馬様にお話を伺いました。

2020年に設立された株式会社青山芸術ですが、メルカリからの独立のきっかけをご教授いただきたいです。 

 金融機関勤務を経てメルカリに入社するときから、数年後に独立して建築家さん向けのサービスを立ち上げたいという想いがありました。メルカリの方々は入社するときも独立する時も温かく支援していただき、在籍中も貴重な経験をたくさんさせてもらったので、メルカリには今でも本当に恩を感じています。

 独立のきっかけとしては、コロナがあります。

 コロナ中、コロナ後で家に居る時間が増え、通勤の頻度が減ると、今までは会社へのアクセス重視だった家選びが、多少会社から遠くても広めの土地に自分たちのライフスタイルに合った家を建てたい、という需要に変わっていくだろうと考えました。

 各家庭に合う住宅をゼロから設計するというのは建築家の方々が得意な領域でもあるため、この機会に一組でも多くの方が建築家さんと家づくりをしてほしいという想いのもと、コロナをきっかけに独立しました。

青山芸術の社名の由来や想いをご教授いただきたいです。 

 「青山芸術」という社名には、建築家の方々の仕事を普遍的な「芸術」と捉え、その価値を伝え支援していける会社をつくりたいという想いが込められています。

 あまりベンチャー企業感を出したくなく、あえて二、三十年ありそうな古びた会社名にすることで、私たちは伝統ある建築業界の方々を縁の下から支えさせていただきたいという想いや決意も込めた会社名が「青山芸術」です。

 

『titel(タイテル)』のサービス構想の背景をご教授いただきたいです。 

『titel(タイテル)』は、住宅や別荘を建てたいクライアントと、ぴったりの建築家さんを繋げるサービスです。

 一般的に家を建てようと考えると、まずハウスメーカーの展示に行ってみたりカタログを取り寄せたりするというパターンが多いと思いますし、マジョリティの方にとってはそれが最適な選択だとも思います。

 ただ、とことんこだわって家づくりがしたい、デザイン性や機能性を追求したいという方などにとっては、ハウスメーカーさんでは他のメリットを享受できる反面、思い描いていた設計の全てが叶わないということもあるかもしれません。

 そんな方には建築家さんとの自由な家づくりがぴったりだと思いますが、自分に合う建築家をどのように選べばよいのか分からないという方も多くいらっしゃると思います。

 そこでより多くの方に建築家さんとの家づくりという選択肢を知ってもらい、建築家選びまでトータルサポートできるプラットフォームを創りたいという想いから『titel(タイテル)』を立ち上げました。

 クライアントからお問い合わせがあれば、まず社内の一級建築士が建てたい家の理想像について詳細にヒアリングし、その希望にぴったりな建築家さんを紹介するとともに、土地探しや資金計画なども含めて自由な家づくりのすべてをサポートしています。

2021年11月にリリースされた『アーキタッグ』について事業概要をご教授いただきたいです。

『アーキタッグ』は、設計事務所や建築企業向けの、協力事務所・設計パートナーが見つかるマッチングプラットフォームです。

設計事務所・企業の方は無料で『アーキタッグ』に登録し、完全成功報酬型でサービスを利用することができるという、特許出願済みの新しいサービスです

具体的には、設計士不足の事務所や企業から依頼をいただき、『アーキタッグ』のスタッフが最適な建築事務所を探し出し「パートナー」として紹介しています。

タイテルの建築家さんと色々やり取りしていると、仕事の波が激しく、ピーク時の人手の確保にも困っているといったお話をよく伺うようになりました。

実際に建築設計業界では、一つの案件が長期にわたったり延期や中止も珍しくなかったりするので、仕事の見通しをつけることが難しく、経営状況やリソース確保が不安定になってしまうことがよくあります。

そこで多くの設計事務所同士で仕事を共有し合うことができるのではないかという発想から、『アーキタッグ』をプラットフォームとして開始いたしました。

おかげさまで今では全国から3,000社・20,000名以上の登録があり、多くの建築士や設計事務所に使っていただいています。

設計事務所 M&A のサービス構想の背景を教えてください。

 これも『アーキタッグ』と同様、建築業界の方々から寄せられたお悩みから生まれたサービスです。

 建築設計業界でも、他の業界と同じように後継者不足に困っている方が多くいらっしゃいます。特に数名以上のスタッフがいる事務所にとっては、スタッフの将来の雇用を考える上でも大きな課題となります。

 一方でゼネコンや組織設計、デベロッパーやハウスメーカーなど慢性的に設計士が不足していて、採用を積極的に募集している企業も多くあります。

 アーキタッグを中心に弊社も数千社を抱える建築プラットフォームとなった中で、後継者探しに困っている設計事務所と、設計士不足に悩む企業が一定数見つけられるようになったため、双方にとって最適な M&A を創出できる機会が増えたことで正式なサービス化に至りました。 

設計事務所 M&A のサービス概要を教えてください。

その名の通り、建築設計の領域に特化したM&A仲介アドバイザリーサービスです。

近年M&A仲介会社が増加していますが、設計事務所の価値評価では業界特有の知見や経験値が必要になってきます。

財務諸表にはあらわれない、この事務所にはこういうスキルや経験があり、こういう建築用途を得意としている、といった設計領域で評価されやすいことや評価されにくいことを熟知しているというのが弊社の一番の特徴かと思います。

ニッチだからこそ、業界経験に基づいた手厚いM&Aサポートを提供していきたいと思っています。 

設計事務所 M&Aの強みをご教授いただきたいです。

強みとしては、当然ながら建築業界に精通したメンバーが案件をサポートさせていただくということと、М&Aのプロとも連携することができるということがあります。

私個人もゴールドマン・サックスというM&Aに強い投資銀行の出身ですし、その時に培った専門家ネットワークも活用しています。

加えて、『アーキタッグ』3,000社以上の企業とコネクションがあるため、希望に沿ったマッチング先を見つけられる確率はとても高くなっています。アーキタッグで全国の設計事務所や建築企業と密接な関係を構築させていただいているため、日頃の取引から各企業についても深く理解させていただいている強みがあります。

事業承継ラボの読者にメッセージをお願いいたします。

もし読者の中で、後継者探しに困っている設計事務所の方、M&Aで設計士不足を解消したい企業の方などがいらっしゃれば、ぜひお気軽にご相談いただければ、と思っています。

弊社ではM&A仲介に限らず、『アーキタッグ』による案件や協力パートナーのご紹介、『設計転職』からの正社員人材のご紹介など、設計事務所の経営や人材についてはあらゆるサポートをご提供できるかと思います。