大分県別府市亀川を拠点として創業65年の歴史を持ち、オフィスのプロデュースなど新たな方向から働く人のための支援を展開する老舗文房具店 株式会社堀文 代表取締役社長 堀裕太郎様にお話を伺いました。
展開されている事業概要についてご教授いただきたいです。
株式会社堀文は、大分県別府市亀川において創業65年の歴史をもつ老舗文具店です。
ただし現在は文房具の小売事業はもちろんのこと、「働く人のよりよい環境つくり」を軸として、オフィスプロデュース事業にも力を入れております。
オフィスとは一日に最も長い時間を過ごす空間であり、理想のオフィスを作り上げることは毎日の気持ちを落ち着け、作業を効率化させる効果があります。
堀文では、まずお客様の希望や大切にしたいことを詳しくヒアリングし、目指すべき一つのテーマを設定してから、機能・経済・デザイン的内容まで鑑みてお客様にとって理想のオフィスを追求いたします。
またそれに付随して、オフィス家具レンタルサービスも実施しています。
これは多くの「オフィス」、「幼稚園さん」、「保育園さん」、「介護施設さん」とお付き合いするうちに、いつのまにか「買うほどではないけれどあったら便利」というレンタル品の在庫が豊富になったために始めた事業になります。
オフィス用品が不足の場合は、ぜひともご気軽にお声かけください。
加えて地域振興策として、観光商品づくり・街づくり事業も営んでおり、後述するような空き店舗の活用もその一環となります。
堀文は設立当初、文房具屋からスタートされて現在に至るとお見受けしましたが、どのような流れで今に至っているのでしょうか。
堀文の歴史は1954年から始まります。
その前身は私の曾祖母が開いた町の小さな町の文房具屋さんで、当時は紙文具店という名前でした。
モノが少ない時代でしたが、地域という狭いコミュニティに密着し、近隣の方々と深くあたたかい関係を築いていたと聞き及んでいます。
その後は時代の流れとともに、鉛筆などの文房具から、コピー機・子供用品・オフィス家具・パソコンなど幅広い商品を取り扱うようになりました。現在は小売業のみならずプロデュースやレンタルまで手掛け、複数の学校・福祉施設・各企業様とお取引をさせていただいております。
これらもすべて、半世紀もの間弊社を愛してくださった地域の皆さまのおかげです。
行なって良かった事業承継の準備があればご教授いただきたいです。
準備ではないですが、事前に自分が継承するんだという覚悟を持てたことはよかったと思っています。
私が入社したとき、既に父に信頼されていた先輩がいました。その先輩は仕事もできて、人間的にも周囲から愛されている方だったので、心のどこかで「この人が社長になったほうがいいんじゃないか」という気持ちがあったんです。
けれど、ある日新たに会社を立ち上げるということで辞めていってしまって。すると会社全体の雰囲気がすごく寂しくなって、父も口数が減って、これまで見たことがないくらいにショックを受けているようでした。
そうなって初めて、「自分がやらなければいけない」と腹を括れたんです。
勉強ももちろん大事ですが、一番の準備といえば、「なんとなく継げればいいな」ではなく、自分が継いで会社を発展させていくという強い覚悟を持つことだと思いますね。
2019年10月に事業承継をされたと思いますが、事業承継にあたって1番思い出深い内容があれば教えて頂きたいです。
自分が社長となることで、父は違う役職になってしまう。子どもの頃から見ていた背中が変わってしまった瞬間は、少し寂しくて、それがとても印象に残っています。
やはりずっと父親に対して憧れはありましたし、社長として働いている姿を格好いいとも思っていましたから。承継するということは、親にその役割から降りてもらうことでもあります。
ただよかったと思うのは、2019年10月に承継して、2020年1月に会長職だった祖父がちょうど引退したので、父が会長を継いだんです。祖父が亡くなったのはそれから間もなくでした。
なので代替わりはスムーズに終えられましたし、今も亡くなった祖父を意識しながら業務に向かっています。
承継後行われた新たな取り組みについて教えていただきたいです。
具体的には商店街の空き店舗を貸し出すサービスを展開しています。
これは地域の活性化を目的として取り組みを始めたものです。地域の活性化といっても人それぞれに定義がありますが、私としては人の流れが増える、お店が増える、ということを重要視しています。
地方の商店街の問題として、空き店舗があるにもかかわらず、埋まることがなくずっとシャッターが閉まり続けているということがあります。
これはなぜかというと、不動産屋さんにとって単純に立地がよくない商店街を取り扱っても利益にならないから、不動産情報として取り上げられないという構造になっているからなんです。
だったら地域で主体的にやろうというのが私たちの考えで、現在は一か月だけの体験入居として、飲食店であったり、事務所であったり、倉庫であったりという形で空き店舗の再利用を支援しています。
今後はそうした事業を別府市とも連携を取って進めていきたい、というのが現段階での目標ですね。
保育の業界に取り組まれた理由はなんですか。
去年の10月にソフトウェア開発の会社を立ち上げ、今年の4月からは試験的に保育園向けのシステムを開発しています。
保育に焦点を合わせた理由としては、先述したような保育向けの小売事業・オフィス関連事業を経験する中で、業界の問題を実感したことがあります。
保育園も国や自治体からお金を受け取って経営しているので、定期的に監査が入り、日頃の業務について様々なチェックを受けます。そのために記録を管理するシステムも運用されています。
ただ現在、私が体感した限りでは「現場にシステムが合わせる」風潮が強いと思っているんです。実際に必要な要件を満たしつつ利便性を追求するというのは、保育に限らずどんな業界でも現場の知識が豊富でないとできませんから。
ですので私としては、柔軟性がある「現場に合わせるシステム」を開発・運営し、保育の世界を支援していきたい、ということを今の目標としています。
事業承継ラボの読者にメッセージをお願いします。
応援しています、頑張ってください。
私としてもまだまだ言える身分じゃないですし、単純に同じ境遇の仲間ですから。純粋な気持ちで応援していますので、ぜひとも頑張ってください。