困難な製造にも知識と経験を武器に果敢に挑戦していく中島鉄工において、業務改善や公式Xによる広報などを担当するアトツギである中島様にお話を伺いました。
現在は加工担当者が7名、事務担当者が1名で計8名の鉄工会社となっています。
どちらかというとBtoBの依頼のほうが多く、様々な機械の部品を受注製造することが基本の作業です。
さらにお客様から依頼があれば、図面を引いて設計から製造までをワンストップで行うこともありますね。
自分も現在は広報担当を兼ねつつ、一作業者として機械を使って作業をしているという形になります。
これまでの経験によって培われた対応力が強みです。
たとえば大型の部品であったり、加工が難しい部品であったり、メーカーの取り扱いが終了している部品であったり、とにかくこれまで困難な製造に何度も挑戦してきました。
それができるのは長年の経験と知識の蓄積があるからで、本当に技術力で勝負している会社と言えるでしょう。
近辺の取引先様は「困ったときの中島鉄工」などとも言ってくださいまして、内外どちらからも強みとして認識されていると思います。
熊本大学の大学院まで通い、卒業後にすぐ後継ぎとして入社しました。今は社員として5年目になります。
小さいころからものづくりが好きで、仕事場には入れなかったものの、機械を使って加工する音を聞いて育ってきました。そのため家業には関心があり、後継ぎとして入社することは前々から決めていたんです。
それ以前には他の企業で経験を積むことも考えていたのですが、中島鉄工は職人技術で勝負している会社なので、まず技術者としてその技術を身に付けていくため、早いタイミングで入ったほうがいいと考えました。
そうですね、最初から家業に関連する知識を学ぶ目的で大学に行きました。
具体的には工学部で圧接などの材料研究をずっとしていたのですが、これも加工の技術は家業でも学べるため、大学でないとできないことでかつ加工に必要そうなスキルを選んだんです。
単純に、機械関連の知識を幅広く付けることが一番重要だと思っています。
どんな機械でも操作方法や段取りがとても大切なのでそれを覚えたり、材料の特性を覚えたり、そうした細かい知識が蓄えられることで技術力が向上していきますから、とにかく勉強です。
それに社内の環境改善も必要ですね。
昔ながらの町工場で紙ベースの図面など昔の慣習が強く残っていますので、電子化の模索も必要になりますし、職人さんの世代交代も進めなければなりません。そうしたたくさんの問題に対して、今検討を進めているところです。
実は後継ぎとして頑張ろうと思い始めたのは、本当に今年に入ってからなんです。それまでは仕事に慣れることに精いっぱいで、品物を加工する日々の繰り返しでした。
ただ最近になって余裕が出てきたので、社長と検討しつつこれからの方向を模索していこうと思っています。
当社は機械の部品を製造していますから、入社する前は作ったものがどのように使われるか、まったくイメージできていませんでした。
それが実際に加工に携わってみて、意外と身近で使われているものばかりだし、地域にも貢献しているな、ということを実感として得られたんです。そこは後継ぎとして入社して良かった点かもしれません。
前述した当社の問題の一つとして、営業スタイルが昔から変わっていないということがあります。
たとえば社長一人による営業であったり、取引先からの紹介であったりが多く、結果として地域に強いことはよいのですが、それだけでは遠方の方に会社の存在を知ってもらえません。
今の時代は技術力があるというだけでは不十分で、その強みを伝えることも不可欠だという考えもあり、広報の手段としてXを始めました。
やはり現在取り組んでいることをさらに発展させていきたいです。紙ベースの図面の電子化、技術の勉強、広報などはまだまだできることがありますから。
それ以外では、これまでずっと技術的な研鑽を積んできたので、経営の勉強にも着手したいと思っています。現在社員数が8名ですが、私の目標としては一旦16人を目指しています。父から受け継いだ会社なので、さらに規模拡大を果たせたらいいですね。
何年後に継ぐかといった今後の展望は、正直まだ話し合っていないんです。
この会社の場合、社員の皆さんに加工方法を提案できるほどの知識がないと社長である意味を活かせません。今年で入社して5年目になりますが、その観点からすればまだまだ未熟ですから。
さらに10年、15年と長い年月を経たうえで交代するのかな、と個人的には感じていますし、事業承継も長い目で続けていきたいです。
自分は元々後継ぎとして家業に戻ってくると決めて生きてきた人間なのですが、SNSや身内からは、自分は望んでいないのに何等かの事情でやむを得ず後継ぎになった、という人たちの話をしばしば聞きます。
ただそういった方たちに自分の記事が少しでもお役に立てればいいと思いますし、後継ぎとしてこれからの日本を支える仲間だと感じていますので、一緒に頑張っていければよいですね。