東大阪市においてパッケージの設計から販売までを一括して手掛ける株式会社美販の3代目後継ぎであり、「モノモコトモ」などでデザイン性の高いパッケージの創造に努める尾寅玄樹様にお話を伺いました。
株式会社美販は、段ボールケースや梱包資材の販売から始まり、現在は主にパッケージの設計・製造・販売までを一括で行っています。
当社では箱そのものを売るだけでなく、お客様の課題を解決できるようなパッケージを設計し、提案させていただきます。
たとえばSDGsの観点から発泡スチロールやプチプチを使わず、なおかつ中の商品が割れにくい箱がほしい、というご要望があれば、当社は段ボールだけでそれにそぐう解決策を提示することができるんです。
以前は一般的な箱やそれに関連する梱包資材を取り扱っていて、梱包関連の商社という感じであったようです。
2代目である父が美販を継いでから箱の設計・製造までをメインとして取り扱うようになっていきました。
主に設計に関する課題解決の能力が強みとなります。
「プチプチなどの梱包資材を使用せずに中の商品を保護・固定できる箱」といった設計(メカニック)要素が必要な場合、当社では営業全員が創業当初から培ってきた設計・パッケージノウハウを駆使する事で、スピーディーに課題解決の提案を出来るのが競合他社にはない当社の強みです。
加えて、お客様への提案力も強みの一つです。
当社では、この品物にはどういった形状のパッケージ、どういった材質が適切かといったご提案まで常にさせていただいております。
たとえば何か高額な商品をオンラインで購入して、実際に届いた荷物を手にしてみたとき、それが味気ない段ボールや封筒であったら、どうでしょう。よい商品にはそれ相応の梱包がある、と考える人は多いのではないでしょうか。
10年程前からBtoB専門だった企業が個人向け通販を始めたり、ECサイトが盛んになったりと、オンライン通販が主流の時代となりつつありました。この流れがコロナ禍を経てより加速したと感じております。その中で箱はただ単に物をパッケージするだけでなく、作り手の思いを顧客へと届けるメディアとしての役割を担えると思っております。
そのような「パッケージでブランディングのお手伝いをする=お客様の課題を解決する」というコンセプトそのものが、他社にはない当社独自の強みと言えるでしょうね。
「モノモコトモ」は、2023年から発足したパッケージの筐体デザインを提供する新事業です。
具体的には、美販の技術者がふさわしい機能を備えたパッケージを設計し、「モノモコトモ」がその素材や形状まで含めた商品の魅力を伝えるデザインを提案する、という流れになります。
先述したような、箱そのものをブランディングするという発想が事業として結実した形ですね。
主に毎年参加しているものが二つあり、一つは東大阪市で開催されている「ものづくり体験教室」、もう一つは「Sカレ(Student innovation college)」です。
「ものづくり体験教室」については、東大阪市の市内小学校の子どもたちのために各企業が自社の商材を持ち寄り、ものづくりに触れてもらうというイベントです。
一方で「Sカレ」は、全国の大学のゼミを対象とし、マーケターとして商品を企画してもらうイベントになっています。
どちらも学生の皆さんへ学習機会を提供するという目標はもちろんとして、社内にも新しい刺激を与える企画として、美販は積極的に参画しております。
元々学生のときから、父親には「家業のことは気にせず、好きに働け」と言ってもらえていました。
なので当初一般企業に就職したのも、家業が嫌だったということはまったくなく、ただ単に興味があった企業に勤めたというだけのことなんです。
それが社会人2、3年目くらいのときから、あちらからの誘いで毎年父と外食に行く機会があって、近況報告がてら会社の話も聞いていたのですが、やがて「継いでみないか」という話を受けるようになりました。
ただそのときは即決できず、結局承継することを決断したのはさらに2、3年後のことでした。話自体を受けたのはまだ勤め始めて3年目あたりで、まだやり切った感覚がなかったのですが、6年目にもなるとある程度のことは学べたという実感がありましたので、それで戻って来たという感じはありますね。
社外においては、社会にパッケージの価値を普及させたいと思っています。
パッケージ用の箱などはやはりどれも変わらないと見られてしまいがちですが、そこに唯一無二の付加価値を創造することを目標としている美販としては、当社でしか作れない魅力をお客様に知っていただきたいです。
他方で社内においては、美販で働いているということを誇れるステータスにしていきたいと思っています。
製造業はいわゆる3Kのイメージが強く、慢性的に人手不足の状況にあります。
特に今までの美販が作っていた箱は、まさしく工業製品といった感じの茶色い箱でしたので、お客様に注目される立場でもありませんでした。
それが箱そのものをメディア化し、人目に触れるようにすることで、それらを作っている人たちにも視線が集まり、引いては美販の製造業の魅力が高まっていけばよいですね。
後継ぎの方々も社内に籠り切りだとメンタルが落ち込んでしまうと思うのですが、今の時代、Xであったり色々なコミュニティであったり、同じ境遇の人たちと繋がる手段はたくさんあります。
外部に出ていくことは新しい刺激を受けると同時にリフレッシュにもなりますので、後継ぎの皆さまはぜひイベントやコミュニティを積極的に利用していってほしいですね。