スクールバッグからドローンまで、跡継ぎの視点で縫製業をアップデートする|片岡商店

創業127年を誇る片岡商店。広島の地で長い歴史を刻みながら、時代の変化に対応し進化を続けてきた同社の現在と未来を、5代目アトツギである片岡勧氏に伺いました。

まず、片岡商店の事業概要をお伺いしたいです。

創業127年の歴史を持つ片岡商店ですが、現在は以下の三つの事業を中心に展開しています。
第一に、主力である学生向けスクールバッグの製造・販売事業。この事業は同社の売上の大部分を占め、広島市を中心に地域密着型で展開しています。

第二に、地元企業への消耗品の卸売事業です。地場の食品会社や水産会社に対し、手袋や前掛けなどを提供しています。
第三に、新たな市場に挑む異業種コラボやデジタル技術を活用したプロジェクトが挙げられます。これには、家業を超えた取り組みとして、ドローンを使った空撮や水耕栽培といったユニークな事業が含まれています。

127年の歴史の中で、事業形態はどのように変わってきたのでしょうか?

創業当初は、「柳行李」と呼ばれる竹製の鞄の製造・販売が中心でした。当時、広島は軍港として栄え、兵隊が使用する収納用具やスーツケースへの需要が高まり、それが片岡商店の出発点となりました。

戦後、原爆で店舗と工場を失い卸売業として再出発しました。

その後、兵庫県豊岡のカバン業者と連携し、現在のスクールバッグ事業へと転換しました。この事業の基盤は、「耐久性が求められる学校用品」という市場であり、学校指定の製品を供給することで安定した需要を築いています。

片岡様の家業に入られる前のご経歴についてお聞かせください。

大学卒業後、求人広告会社での勤務を経て、フォークリフトメーカーで経理や企画に従事しました。その後、フリーランスとしてウェブ制作やデジタルマーケティングを手掛け、さまざまな業界の知見を深めました。こうした多様なキャリアが、家業に戻った後の新規事業開発に生きています。

家業を継ぐ決断に至った経緯をご教示いただきたいです。

「廃業の危機」という家業の現状が事業承継の決意を後押ししました。父から「このままでは事業継続が難しい」という話を受け、「自分が動かなければ、片岡商店の歴史が途絶えてしまう」という責任感から家業に戻ることを決意しました。

入社前と後で感じた家業のギャップについてお伺いしたいです。

入社後に最も衝撃を受けたのは、縫製業界全体の「アナログ性」でした。

業務効率化の遅れやデジタルマーケティングの欠如に課題を感じました。SNSやウェブを活用した発信を強化し、従来のやり方を革新する取り組みに注力しております。

家業行われた新たな挑戦をお伺いしたいです。

スクールバッグ事業では「3年間壊れないバッグ」をコンセプトに商品を改良し、耐久性をアピールポイントに据えました。

また、FPVマイクロドローンを使った空撮事業は、カバン業界にとどまらず、異業種との新しい接点を生み出しています。

さらに、水耕栽培プロジェクトでは、屋上を活用して新たな事業モデルを模索。これらの取り組みには、「家業の枠を超えて新たな価値を創造したい」という思いで活動しました。

事業承継の準備で進めている事をお伺いしたいです。

株式移転の負担軽減や外部人材の活用を進めています。特に、家族経営の課題として内向きの体制が挙げられます。そこでタイミーの活用など自社以外のリソースを積極的に取り入れることで、より持続可能な経営を目指したいと考えています。

片岡様の多様な活動を支える原動力は何ですか。

物事の本質を追求したいという強い探究心が原動力です。新しい分野に挑戦する過程で、自分の手で学び、結果を出すことに喜びを見出しています。楽しみながら課題に向き合い、成果を形にすることが次の挑戦のエネルギーとなっています。

縫製業をどのように変えていきたいとお考えですか。

日本の縫製業界が抱える自給率の低さを課題として挙げます。耐久性に優れたスクールバッグの品質を武器に、国内外での認知度を高めるとともに、縫製業全体の価値を見直す活動を進めたいと考えています。

今後の目標について教えてください。

存在感のある、面白いクレイジーな会社を作りたいです。単なる売上拡大ではなく、新しい価値を社会に提供し続けることで、片岡商店を地域だけでなく日本全体、さらには海外にも展開していきたいです。

アトツギにメッセージをお願いいたします。

家業の継承は大変ですが、挑戦する価値があります。特に縫製業界のような伝統産業には、多くの可能性が眠っています。まずは一歩を踏み出してみてください。楽しみながら課題に挑むことが、成功への近道です。

事業承継ラボ

日本は大廃業時代に突入するとも言われ、 「事業承継」をいかにうまく行うか。そして、次の世代交代で新たなチャレンジを「IT」と「マーケティング」を活用して実施していく必要がある。 そんな、チャレンジングな強い日本企業の成長を支えて行きたいと考えています。 Facebook URL https://www.facebook.com/jigyoshokeilabo/ Twitter URL https://twitter.com/jigyoshokeilabo