現代の組織運営や経営のあり方を根本から見直し、持続可能な新しい組織モデルを提唱する株式会社手放す経営ラボラトリー。その代表である坂東放レ氏に、「進化型組織とは/手放す経営とは/事業承継の解決策」について詳しく伺いました。
手放す経営ラボラトリーは、いわゆる「進化型組織」と呼ばれる新しい経営スタイルや組織形態の研究を行うラボです。従来の企業組織はトップダウン型のピラミッド構造が一般的でしたが、近年はそれに代わる新しい形の組織モデルが増加しており、私たちはその研究と実践を進めています。また、研究成果をもとに、同様の取り組みを行いたい企業や組織を支援することも重要なミッションとしています。
現在、私たちは「コミュニティと企業が融合した形態が、持続可能性の高いモデルである」という仮説を掲げています。この仮説に基づき、オンラインコミュニティー(Facebookグループ)には約3,300人のメンバーが所属。また約130人の「研究員」が会費を支払いながら活動に参加しています。研究員たちは報酬を受け取るのではなく、逆にお金を払いながら仕事やプロジェクトを行うという、ユニークな仕組みです。また、正社員やパート、業務委託といった多様な契約形態で関わっている方も入り混じっていて、コミュニティーと会社の境目が曖昧な「コミュニティーカンパニー」として運営しています。
さらに、外部にも価値観や理念の共有を基盤とするコミュニティが存在し、利益や契約関係によらない結びつきを形成しています。このように、伝統的な「社員」という枠組みを超えた、自由に出入りできる柔軟な組織構造が特徴です。
自由参加型のコミュニティとして、参加者の活動の原動力は多様です。「進化型組織を学びたい」「実際に体験したい」「社会に広めたい」といった個々の動機が活動を支え、それ自体が参加者にとっての報酬となっています。つまり、知識を得る楽しさ、自分らしさの発揮、理想的な組織を体験することが最大の価値です。
私たちの存在目的は「世界がごきげんにめざめる」としています。一般的な企業は利益を最優先しますが、私たちは「個人のごきげん(=well-being)」を組織運営の中心に据えています。この「ごきげん度」を追求することで、結果として会社全体のパフォーマンスも向上するのではないかと考えています。重要なのは、ごきげんは誰かに強制されるものではなく、自分自身のごきげんを追求しつつ、他者のごきげんも尊重することです。
たとえば、利益を重視して働く人がいてもよいし、そうでない人がいてもかまいません。全員のゴキゲンを大切にする姿勢を組織内でどう融合させるかが、私たちの大きな課題であり目標です。また、理想としては社会全体が「大人が毎朝ごきげんに目覚められる環境」を目指しています。現状、仕事や会社に対してネガティブな気持ちを抱えている人も多いと思いますが、職場が「明日も行きたい」と思える場になるといいなあと考えているのです。
具体的な支援としては、まず経営を進化型にアップデートさせるためのプログラムである「DXO(ディクソー)」の開発と周知に最も注力しています。このプログラムは人が人らしく働ける組織(自律分散型組織)が増えて欲しいという願いから、著作権フリー(Copyleft)で全てを無料公開しています。実際にDXOを活用して私たちが知らないところでコンサルティングを行っているというケースもあるようです。無料公開なので、誰でも実践できるのですが、自社単独では導入が難しい、という企業に対しては有償で導入支援を行っています。
また、YouTubeで「社長、今日も斬らせていただきます。」という経営者の内面をひもとくセッションの動画コンテンツを2年以上運営しています。これは組織や経営を進化させていく上で、経営者の意識やパラダイムの変容も必要だと考えているためです。
経営者には「業績を上げたい」「もっと稼ぎたい」という上昇志向の強い方が多いですよね。でも、それを目的にした進化型経営の導入は不可能に近いと私たちは考えているんです。なぜなら、進化型経営では、従業員一人ひとりが主体的に行動できるいわば「自律分散型」を重視します。そこで最も重要視するのは、組織運営の最上位の目的は一人ひとりの“ごきげん(well-being)”です。会社中心ではなく、人間中心を追求することで、結果として業績の向上が得られるという考え方であり、業績向上を目的として、well-beingを手段にすると、うまくいかないと私たちは考えているのです。
この“人間中心”“well-being(ごきげん)中心”のアプローチを本当の意味で実現するには、経営者自身がその価値観に心から共感し、意思決定権を分散させていく覚悟が必要になります。ただ現実的には、決定権を分散することに抵抗を感じる方も少なくありません。そのため組織変革を進める際には、トップとの密な連携が欠かせないと感じています。
何をいちばん大切にするか?の問題だと思うんです。
業績アップがいちばん大切なのか?
社員と、トップ自身のwell-beingがいちばん大切なのか?
社員のwell-being(ごきげん)をいちばんに考えるならば、自己決定できる権利を社員が持つことは極めて重要な要素なんですね。
実は私自身も経営者としてめちゃくちゃ葛藤を経験してきました。かつて私は「会社を成功させるため」に経営をしていましたが、2016年ごろ、その方法が限界に達していると感じて…。そこで2017年には自分の会社の管理や権限を手放し、まったく新しい方法を模索し始めました。それで翌2018年には、「手放す経営ラボラトリー」を立ち上げます新しいカタチの企業をたくさんリサーチすることで「会社を成長させるために」や「業績を上げるために」という思い込みが、私自身に強く根付いていたことが分かってきたんです。
それまで、人事コンサルティングのプロフェッショナルとしてサービス提供をしてきましたが、会社の業績向上以外を目的とした組織運営については分からなかったのです。そのため自分が学ぶための場としてWebメディアを立ち上げたりして、多くの方々に取材をしながら知見を広げてきました。つまるところ元々は僕の葛藤や実体験が今の事業の出発点になっているんですね。
上場すると株主から短期的な利益を求められる場合が多く、現行の資本主義に基づく株式や上場の仕組みとの折り合いが難しい問題になってきます。
現代の資本主義における制度は、「会社は株主のもの」という前提に基づいているので、このパラダイム自体が私たちが目指す理想とは必ずしも一致しない部分があります。そのため、そもそも上場することの必要性自体を深く考える必要があるでしょうね。
ただ、現状の上場企業の中でも、「自律分散型」の経営を志向している会社は存在します。そうした企業の動向は、私たちも興味深くウォッチしています。
そうですね、BtoCの小売業や飲食業など、個々人のパフォーマンスが付加価値に直結しやすい業界には特に相性が良いと思います。
ただし「手放す経営」が成功するには、事業の基盤となるビジネスモデルがしっかりしていることが前提です。このプログラムを導入すれば赤字の事業も黒字になるよ、という話ではなくて、ビジネスモデルが整ったうえで、どうすれば事業をよりスムーズに運営できるか、という観点から導入を検討してほしいですね。
従来の管理型組織における事業承継は、トップへの負担が非常に大きくなりがちです。たとえば意思決定の集中、融資など経営責任の保証といった要素が重くのしかかるため、次の経営者がその全てを背負うのは至難の業と言っていいでしょう。
一方で意思決定が分散された組織では、トップの負担が軽減されることは明らかです。経営的な意思決定を担える人が組織内にあと数名存在するだけで、会社の経営力は相当高まりますし、そのなかで社長は、自分にしかできない役割に集中することができるようになります。
また自律分散型経営では、社員から経営人材が生まれることも期待でき、より柔軟な体制で次世代への移行が可能になってきます。こうした理由で、進化型組織は事業承継への特効薬!と、確信しているくらいです(笑)
話が少し反れますが、事業承継とも関連して、規模が600名近くの会社で、自律分散型の経営を取り入れて非常に上手くいっているケースがあります。この会社では、小売を中心に写真館やレンタル着物店、質屋さんなど、30を超えるBtoC事業をされています。代表はもともと「10人の社長を育てたい」という目標を持っており、子会社をたくさん作ってホールディングス体制の構築を目指していたのですが、実際には社長の育成が難しかったようで、2018年から自律分散型の仕組みを導入されました。
今では事業部ごとに意思決定を完全に任せて、以前は社長自身がすべての事業部の会議に出席していたそうですが、今は一切出ずに済んでいるそうです。事業計画も立てないし、お金の決定権も全部事業部に移譲しています。これがとても上手く機能していて、クレームが激減し、定着率は向上。代表は、社長を育てる必要がなくなったし、将来的に事業継承して行く際にも、負担は軽いだろう、と仰っています。
確かに、誰かがリーダーとして決まっている方が分かりやすいですよね。しかしこの自律分散型組織では、リーダーシップも分散しています。ですから、たとえば店舗の場合、店長が全てを決めるわけではなくなります。仮に店長がITに弱くてQRコード決済の導入の決断ができない場合でも、この仕組みでは得意な人が「じゃあ私がやりましょう」と言って意思決定できるんです。
つまりリーダーシップが状況に応じて移動していくイメージです。話し合って決めることもできるし、店長が決めることもできるし、専門性のある得意な人が決めることもできる。その意思決定が見える化されている店舗(事業)の収益を考慮した上で判断を下せる人なら、誰が決済してもいいじゃないか、という考え方です。
このように「手放す経営ラボラトリー」のDXOは、従来の経営モデルを根本から問い直し、個々のwell-beingを中心に置いた自律分散型経営を探求しています。従業員それぞれに意思決定が分散し、より柔軟な体制で新しい経営スタイルを模索することができるので、事業承継においても、また違った角度から捉え直すことができるきっかけとなるかもしれません。
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