不動産業界における“後継者不足”と“情報の非対称性”。この構造的課題に、異色のバックグラウンドを持つ一社が真正面から挑んでいる。学習塾の運営からM&A仲介へと事業領域を拡張し、現在では不動産業、建設業、人材業、運送業までを横断的に展開する株式会社インフィニティライフ。中でも、不動産業専門M&A仲介サービス「レスマ」は、サービス開始からわずか1年7ヶ月で累計支援件数200件を突破。これまで埋もれてきた小規模不動産会社の“承継の選択肢”を切り拓いてきた。今回は、同社の取締役であり事業責任者を務める高木氏に、その原点と未来を伺った。
株式会社インフィニティライフの高木と申します。弊社は2024年で創業10期目に入りました。当初は、学習塾の運営事業からスタートしました。私自身も塾業界出身で、M&Aの世界にはまったく縁がなかったのですが、事業拡大の一環で地域の学習塾を買収していく中で、売却ニーズ・買収ニーズの双方があることを体感し、そこに“仲介”の必要性を強く感じました。それが、学習塾専門のM&A仲介サービス「セカチャレ」の立ち上げにつながり、やがて不動産業にも同様のニーズがあると確信したことから、「レスマ」へと発展しました。
きっかけは、私たちが自社で不動産業を始めたことにあります。宅建業免許を取得し、実際に賃貸・売買仲介、管理業などを手がけていく中で、不動産会社にも学習塾と同じように「事業を辞めたいけど買い手がいない」「後継者がいない」という声があることを肌で感じました。私たちは実際に事業者として現場に立っていたので、どんな人材が必要か、どんなタイミングで困るかといった“生の課題”がよくわかります。その蓄積が、不動産M&A仲介に特化した「レスマ」というサービスに結実したのです。
これは私ではなく、代表の小嶋が名付けたものです。彼は元々警察官で、さまざまな人と接する中で「人それぞれの人生には無限の可能性がある」と感じたそうです。それぞれの“らしさ”を大事にしながら、個人や企業がより良い未来を築いていける社会を作っていきたい。そんな想いが込められた社名です。
一つの大きな軸は“許認可制”であることです。学習塾は異なりますが、不動産業、建設業、運送業、人材業はいずれも免許制・許認可制であることから、参入障壁が比較的高い領域です。だからこそ、承継ニーズも顕在化しており、大手では拾いきれない“スモールプレイヤー”が数多く存在します。人材事業に関しては、我々が塾や不動産のM&Aを手がける中で、「この人材がいれば承継が成立したのに…」と感じる場面が何度もあったことが背景にあります。だったら自社で人材事業もやろう、と。現場の課題から事業が生まれるのが、インフィニティライフの流儀です。
一つは、売り手の手数料体系が非常にリーズナブルで、ほぼ“リスクゼロ”で利用できる点です。完全成功報酬型で、一定額を超える場合のみ手数料をいただく仕組みにしています。大手仲介会社では最低報酬が高く、そもそも小規模案件では赤字になってしまうケースも多い。それでは、本来M&Aが必要なスモールオーナーに届きません。
二つ目は、“話が通じる”ことです。我々は塾や不動産業を自社で経験してきたので、業界特有の商慣習やトラブル事例も熟知しています。そのため、経営者との対話の中で共通言語で話ができ、意思決定を円滑に進められます。これは現場経験があるからこその大きなアドバンテージだと思います。
FAXなどのアナログな文化が根強く残っている点です。未だにメールすら使わず、電話とFAXだけでやり取りする事業者も多く、情報のやり取り自体に時間がかかるケースがあります。また、ワンオペ経営が長く続いた会社では、財務資料や業務の管理体制が整っておらず、売却時に必要な資料を揃えるだけで一苦労ということも珍しくありません。ここは、IT化・可視化の重要性を再認識させられる点ですね。
実は、大規模なネット広告などはほとんど行っていません。むしろ、紙媒体やFAX-DM、地域の商工会議所との連携など、あえて“オフライン”のアプローチを重視してきました。高齢の売主層にはその方が伝わりやすいからです。実際、地方の不動産会社の多くはオンラインに不慣れなため、我々が訪問や電話で丁寧に案内することで、初めて“M&Aという選択肢”が浮上するケースが多々あります。
東京・神奈川・大阪・愛知・福岡などの大都市では、一定の認知が得られてきましたが、まだまだ地方は“手つかず”の状態です。特に中山間地の事業者は、我々の存在すら知らない可能性が高い。2025年度は、より広範囲に“事業承継という選択肢”を届けるべく、営業体制・サポート体制ともに強化していく予定です。
私たちは、事業承継を“当たり前の選択肢”にしたいと考えています。今はまだ「辞めるか続けるか」の二択が多いですが、第三の選択肢として“誰かに託す”という道を社会全体で後押しできるようにしたい。企業が地域に残り、価値が継承され、次の世代にバトンが渡されていく。そうした社会の実現こそが、レスマの存在意義だと考えています。