大手監査法人から地元・鴻巣へ。黒字率80%超を実現する「未来会計」と「後継者伴走」の真髄|こうのす未来会計

 埼玉県鴻巣市。ここに、一般的な「街の会計事務所」とは一線を画すスタイルで、地域企業の成長を力強く牽引する公認会計士・税理士がいる。 「こうのす未来会計」を率いる新井秀人氏だ。

 世界的な会計事務所であるデロイト トーマツにて、大企業の監査やM&Aアドバイザリー業務に従事してきた新井氏。エリート街道を歩んでいた彼が、なぜ突如として地元・鴻巣に戻り、中小企業支援の道を歩み始めたのか。そして、同事務所の顧問先が驚異的な「黒字率80%超」を叩き出す秘密とは何か。

「会計は税金計算のためだけにあるのではない。未来をつくるためにある」

そう断言する新井氏に、自身の原体験から、独自の支援スタイル、そして事業承継に悩む後継者への熱い想いまで、たっぷりと語っていただいた。


目次

公認会計士を目指されたきっかけや、これまでのキャリアの歩みについてお聞かせください。

 私が会計の世界に興味を持ったのは、高校生の頃でした。漠然とですが「公認会計士」という資格があることを知り、もともと数字が好きだったことやビジネスへの興味もあって、大学は商学部に進学しました。

 ただ、恥ずかしながら大学入学当初の1年間は、勉強そっちのけで遊んでばかりいたんです(笑)。サークル活動に明け暮れ、友人たちと楽しい日々を過ごしていました。大学内では会計士や税理士の資格講座の案内もありましたが、当時の私はそれを横目に見ながら、「まあ、このままでもなんとかなるだろう」と楽観的に考えていたんですね。

 転機が訪れたのは、大学1年の春休みでした。友人と二人でバックパッカーとしてタイへ旅行に行ったんです。バンコクを拠点にアユタヤなどを回り、陸路でカンボジアのアンコールワットを目指しました。

学生時代の旅行、刺激的ですね。そこで何か心境の変化があったのですか?

 はい、人生を変えるような衝撃的な体験をしました。 タイからカンボジアへ入国する国境での出来事です。私たちが乗っていたマイクロバスから降り立った瞬間、現地のストリートチルドレンの子どもたちが、物乞いのために一斉に寄ってきたんです。上半身裸で、必死に手を差し出してくる子どもたち。ふと横を見ると、用水路にはゴミが溢れ、ヘドロのような状態になっていました。

 ニュース映像などで貧困の現実は知っていたつもりでしたが、リアルな光景を目の当たりにして、言葉を失いました。そして同時に、強烈な自己嫌悪に襲われたのです。「自分はなんて恵まれた環境にいるんだろう。それなのに、この1年間、ただ遊んで過ごしてしまった」と。

 このまま恵まれた環境に甘えて生きていてはいけない。自分も何かを成し遂げなければならない。そう強く感じ、帰国後すぐに公認会計士の勉強を本格的に始めました。それが大学2年生の時です。

その強烈な原体験が、難関資格への挑戦を支えたのですね。

 そうですね。あの時の光景がなければ、今の私はなかったかもしれません。 大学卒業と同時に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツに入所しました。そこでは約10年間、主に大企業の会計監査や、IPO(新規上場)を目指す企業の支援などに携わりました。また、途中で2年間ほど、グループ会社のデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーに出向し、M&Aの専門業務も経験しました。


大企業を相手に最前線で活躍されていたわけですが、そこからなぜ独立、それも地元である鴻巣での開業を選ばれたのでしょうか?

 M&A業務から監査部門に戻ってしばらく経った頃、私は「マネジャー」という中間管理職のポジションに就きました。すると、それまでの現場業務とは打って変わり、仕事の大半が「調整業務」になったのです。 我々の組織も大きいですし、クライアントも大企業ですから、内部の調整、外部との調整……と、とにかく調整ごとの連続でした。

 ふと、「自分がやりたかったのは、この調整業務なのだろうか?」という違和感が芽生え始めました。会計士としてもっとダイレクトにクライアントの役に立ちたい、という想いが強くなっていったんです。

 ちょうどその頃、子供が生まれたこともあり、生活の拠点を東京から地元の鴻巣に移していました。鴻巣から都心へ通勤する日々の中で、地元への愛着もあり、「自分の好きなこの街で、開業しよう」と決意し、2020年の5月に独立開業しました。

独立後、中小企業を支援する中で感じたことはありますか?

 独立して何より衝撃を受けたのは、中小企業の社長がいかに「数字」を見ていないか、ということでした。これは私にとって大きなカルチャーショックでした。

 監査法人時代に関わっていた大企業の経営者は、当然のように毎月の数字を把握し、それに基づいて議論をしていました。しかし、中小企業の現場では、「今期の売上見込みは?」と聞いても答えられない社長が珍しくありません。

「決算書の見方がわからない」

「全部税理士に任せているから」

とおっしゃる方が、肌感覚で8割くらいいらっしゃったんです。

中小企業では「数字は税理士任せ」というケースが多いのでしょうか。

 非常に多いですね。多くの中小企業経営者にとって、会計事務所は「年に1回、税金の計算をしてくれるところ」という認識なんです。

 しかし、私は「中小企業だから数字を見なくていい」とは思いません。むしろ、リソースが限られている中小企業だからこそ、数字を武器にして経営判断の精度を高めなければならない。 「会計は税金計算のためだけにあるのではなく、未来の経営のためにある」。その本質を伝え、実践してもらうことが私の使命だと感じるようになりました。


新井様の事務所では「こうのす未来会計」という屋号を掲げていらっしゃいます。「未来会計」とは具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

 私たちのサービスの特徴は大きく3つあります。 第一に、「記帳代行(領収書などを預かって会計ソフトに入力する作業)を行わない」ということです。お客様ご自身で会計ソフトに入力していただく「自計化」を原則としています。

会計事務所といえば記帳代行が主な業務の一つというイメージですが、あえてそれをしないのですね。

 はい。私たちが記帳を代行してしまうと、どうしても数字が上がるまでにタイムラグが生じます。また、社長自身が「何にいくら使ったか」をリアルタイムで把握できなくなってしまいます。 自分たちで入力をすることで、数字を「自分ごと」として捉えていただく。それが経営の第一歩だと考えています。もちろん、入力の体制構築やチェックは私たちが徹底的にサポートします。

 第二に、「毎月の対面面談(月次決算)」です。 試算表を見ながら、「今月はどうだったか」「予算に対してどう推移しているか」を毎月必ず話し合います。そこで設備投資や採用、資金繰りなどの経営課題についてディスカッションし、次のアクションを決めます。

 そして第三に、「管理会計と予算管理」の導入です。 税務会計(税金計算のための会計)だけでなく、部門別や商品別などで業績を管理する「管理会計」を取り入れ、さらに将来の目標数値である「予算」を作成します。そして毎月、実績と予算を比較(予実管理)し、ズレがあればその原因と対策を考える。いわゆるPDCAサイクルを回す仕組みを提供しています。

「過去の処理」ではなく「未来のアクション」に時間を割くための仕組みですね。

 その通りです。この「未来志向型の会計」を実践していただいた結果、当事務所の顧問先の黒字率は現在80%を超えています。 一般的な中小企業の黒字率は3割程度と言われていますから、これは非常に高い水準だと自負しています。

 特別な魔法を使っているわけではありません。社長が数字に関心を持ち、毎月現状を把握し、未来に向けた手を打つ。この当たり前のサイクルを回すだけで、会社の収益性や社長の決断スピードは劇的に変わるんです。


新井様はM&Aの深い経験もお持ちですが、独立後にあえて「事業承継士」の資格を取得されています。これにはどのような意図があったのでしょうか?

 独立当初は、自分の強みである「M&A支援」を前面に出そうかとも考えました。しかし、鴻巣という地域柄、いきなり「第三者への売却(M&A)」を検討している企業ばかりではありません。 むしろ、「息子に継がせたい」「従業員に譲りたい」といった「親族内承継」や「従業員承継」の悩みの方が圧倒的に多いのです。

 地元の企業を支援するためには、M&Aという「テクニック」だけでなく、親族内承継における「感情」や「関係性」、そして後継者の育成までを含めたトータルな知識が必要不可欠だと感じました。そこで、事業承継士という資格を通じて、親族内承継のノウハウを体系的に学び直したのです。

M&Aと親族内承継、両方の視点を持っていることは大きな強みですね。

 そうですね。最近では地方の中小企業でも、事業承継の選択肢としてM&Aが一般的になりつつあります。また、創業から数年でバイアウト(売却)を目指すような若い経営者も増えてきました。 「親族内承継」の情緒的な側面と、「M&A」のドライな実務。この両方を知っているからこそ、社長や後継者の状況に合わせて、フラットな視点で最適な選択肢を提案できると考えています。


後継者支援において、特に印象に残っているエピソードはありますか?

 創業80年続く地元企業の4代目社長のケースが強く印象に残っています。 その方は、私が顧問になったタイミングで代表取締役に就任されたのですが、当初は非常に優柔不断な印象でした。面談をしていても、悩み相談のような話が4時間も5時間も続き、結局何も決まらないまま終わる……ということが何度もありました。

 しかし、毎月の面談で根気強く数字の話をし、予算を作り、予実管理を徹底していったところ、彼の顔つきがみるみる変わっていったんです。 「数字」という客観的な根拠ができると、人は自信を持って決断できるようになります。

「今月はここが良かったから、次はここに投資しよう」

「ここは悪かったから、すぐに撤退しよう」

と、意思決定のスピードと質が劇的に向上しました。

 1年経つ頃には、以前の優柔不断な姿は消え、堂々とした経営者の風格を漂わせていました。会社としても筋肉質になり、業績も上向いています。 「数字を介して社長の頭の中を整理する」。それが私の役割ですが、最終的に決断し行動するのは社長ご自身です。後継者の方が数字を武器にして成長していく姿を間近で見られるのは、この仕事の最大の醍醐味ですね。

まさに「会計で会社を強くする」を体現された事例ですね。

 ありがとうございます。先代社長は「感覚」や「カリスマ性」で会社を引っ張ってきた方が多いですが、今の30代・40代の後継者世代は、もっとロジカルに、情報やデータを元に経営したいと考えている方が多いように感じます。 ただ、「どうやって数字を見ればいいかわからない」「管理手法がわからない」と悩んでいる。そこに私たちが入り、翻訳してあげることで、彼らのポテンシャルが一気に開花するのだと思います。


現在、事務所では「正社員」「パート」に加えて、「学生インターン」の採用も行っていると伺いました。地方の会計事務所としては珍しい取り組みではないですか?

 そうですね。これには明確な狙いがあります。 鴻巣のような地方都市では、即戦力となる20代・30代の経験者を採用するのは非常に困難です。しかし、実はこのエリアから都内の大学に通っている学生はたくさんいるんです。

 灯台下暗しで、優秀な学生が地元にいるのに、彼らは「地元には面白い仕事がない」「働くなら東京だ」と思って通り過ぎてしまっている。 そこで、「地元にもこんなに面白い、未来志向の会計事務所があるんだよ」ということを知ってもらいたくて、インターン採用を始めました。

実際に学生さんはどのような業務をされているのですか?

 現在は2名の学生さんが働いてくれています。 会計帳簿のチェックや、予算案の作成補助、決算書の作成補助などを一緒に行っています。

学生にとっても、中小企業のリアルな経営支援に関われるのは貴重な経験ですね。

 おっしゃる通りです。私は彼らに、仕事のスキルだけでなく、「働く楽しさ」や「キャリアの考え方」も伝えたいと思っています。 私自身、ビッグ4(大手監査法人)も経験していますし、M&Aの現場も知っています。そして今は地元の個人事務所の代表です。 「将来は東京でバリバリ働きたい」という子にはそういうキャリアの話ができますし、「地元で働きたい」という子にはその良さを伝えられます。

 彼らが社会に出る前のステップとして、うちの事務所での経験が役立てば嬉しいですね。そしてゆくゆくは、彼らのような若い世代が地元に戻ってきて、地域を盛り上げてくれたら最高だなと思っています。


最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 私たちのミッションは「会計で会社を強くする」です。 大好きな鴻巣を中心とした地元の企業様が、一社でも多く「強い会社」になってもらいたい。企業が元気になれば、そこで働く従業員の生活も豊かになり、地域全体が活性化します。

 そのために、まずは私たち自身が「未来会計」のプロフェッショナルとして、地域No.1のクオリティを提供し続けたいと考えています。 また、事業承継支援においては、「親族内承継」と「M&A」の両面からサポートできる稀有な存在として、スムーズなバトンタッチを支えていきたいです。

 特に、これから会社を背負って立つ「後継者」の方々への支援には力を入れていきます。 孤独になりがちな後継者に寄り添い、数字という「共通言語」を使って、先代に続いて発展成長できる経営スタイルを一緒に築き上げていく。そうやって、100年続くような強い会社をこの地域に増やしていくことが、私のこれからの目標です。


編集後記

「数字に弱い社長が多い」という現実に嘆くのではなく、「だからこそ伸びしろがある」と捉え、地道な対話を重ねていく新井氏。 インタビュー中、何度も「お客様の会社が良くなるのが楽しい」と笑顔で語る姿が印象的でした。

記帳代行をしないという、一見すると「不親切」にも思える方針も、すべては「社長自身に経営の手綱を握ってほしい」という親心(プロ意識)の裏返しです。 「どんぶり勘定から脱却したい」「後継者として自信を持って経営したい」と願う経営者にとって、新井氏はこれ以上ない伴走者となるでしょう。

鴻巣という地から、埼玉、そして日本の会計事務所のあり方を変えていくかもしれない。そんな「未来」を感じさせるインタビューでした。


こうのす未来会計(新井公認会計士事務所)

代表 新井 秀人氏 (公認会計士 / 税理士 / 事業承継士)

埼玉県鴻巣市出身。 大学卒業と同時に公認会計士試験に合格。その後、大手監査法人に入所し、上場企業の会計監査やIPO支援に従事。監査法人でのマネジャー職を経て、2020年5月に地元・鴻巣にて独立開業。 経営の意思決定に役立つ「未来会計」を提唱し、月次決算・予実管理・資金繰り管理などを通じて中小企業の黒字化・成長を支援している。また、M&Aや事業承継の専門家として、地域の後継者支援にも注力している。

事業承継ラボ

日本は大廃業時代に突入するとも言われ、 「事業承継」をいかにうまく行うか。そして、次の世代交代で新たなチャレンジを「IT」と「マーケティング」を活用して実施していく必要がある。 そんな、チャレンジングな強い日本企業の成長を支えて行きたいと考えています。 Facebook URL https://www.facebook.com/jigyoshokeilabo/ Twitter URL https://twitter.com/jigyoshokeilabo

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