事業承継税制の発布を受けてか注目を集めている事業承継。
それに伴って、事業承継に意欲的な中小企業も増加しています。
しかし、事業承継には会社法や税法が関わってきたり、後継者の適切な選定・教育が必要になったりと煩雑な手続きが必要です。
「せっかく事業承継に興味を持ったのに、なんだか手続きが面倒だ」と及び腰になってしまう経営者の方も少なくないでしょう。
この記事では中小企業が事業承継を行う際の手順や注意点を網羅的に解説しています。
10分程度で読めるように分かりやすくまとめていますので、ぜひ最後までお付き合いください。

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事業承継と中小企業の実情は?

中小企業が事業承継に意欲的になっている背景を理解するために、中小企業庁が発表している『事業承継に関する現状と課題について』を参考にしながら、中小企業を取り巻く環境についてみていきましょう。

まず、中小企業が事業承継を行うことで得られる最大のメリットは投資・売上の増大です。
経営者の年齢ごとに投資や売上増大への意識をヒアリングした調査では、成長・投資への意欲は年齢が上がるごとに減少していることが分かります。
また、経営権を交代することで多くのケースでは経常利益や売上高が増加している、というデータも。
このデータを受けて中小企業庁は

”経営者年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まる。経営者が交代した企業や若年の経営者の方が利益率や売上高を向上させており、計画的な事業承継は成長の観点からも重要”

と述べています。

こういった背景を受けてか税制面でも様々な優遇制度が導入され、事業承継税制を利用すれば相続税や贈与税が非課税になる仕組みも作られているのです。
自分の会社が今後も維持し、さらなる発展を遂げるためにも事業承継は有効な手段と言えるでしょう。

事業承継を始める際の注意点を紹介

中小企業が事業承継をすすめるために注意すべき点は以下の通りです。

  • 事業承継によって得たい結果を明確にする
  • 事業承継だけでなくM&Aについても検討してみる
  • 親族内承継が難しい場合は親族外承継も視野に入れる
  • 事業承継税制を理解・活用する

それぞれ詳しくみていきましょう。

事業承継によって得たい結果を明確にする

中小企業は事業承継によって様々なメリットを得ることができます。
先ほど紹介したように、売上や利益が増大することも一つですが、現経営者が引退する際に自社株を譲渡することで「株の売却益」を受け取れることもメリットでしょう。
その場合は贈与によって事業承継をすすめなければならないので、事業承継の方法が明確になります。

事業承継によってどのようなメリットを得たいのか明確にすることで、事業承継の手段を選べるようになるでしょう。

事業承継だけでなくM&Aについても検討してみる

事業承継の手法としてM&Aを検討している中小企業も少なくありません。
M&Aによって事業承継を済ませることで、自社株の売却益を得られたり、さらなる事業の発展が見込めたりといったメリットが得られます。

事業承継とM&Aについて詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみてください。

親族内承継が難しい場合は親族外承継も視野に入れる

中小企業や個人事業主が事業承継を行う際は、多くの場合『親族内承継』によって経営権を譲り渡します。
親族内承継とは、現経営者の親族に事業を承継する方法です。
しかし、親族の中に十分な経験と知識を有した後継者候補がいないケースも考えられます。
また、親族が事業承継に意欲的でないことも考えられるでしょう。

親族内に後継者候補がいない場合は親族外承継も視野に入れて検討しておくことをおすすめします。
社内外から後継者候補を募り、最も有望な方に次期経営者の座を譲り渡せれば、事業承継もスムーズに運ぶでしょう。

事業承継税制を理解・活用する

中小企業が事業承継を行う場合、自社株の移動が必要になります。
現経営者から後継者へ株式を移動させる際に相続税や贈与税がかかりますが、事業承継による課税額がゼロになる『事業承継税制』というものが存在するのです。
事業承継を検討している方はぜひ理解して活用していただきたい制度ですが、様々な条件が課せられていたり、適用される範囲が複雑だったりします。
そこで、事業承継税制についてわかりやすく解説した記事があるので、節税効果を高めたい方はぜひ参考にしてみてください。

中小企業が事業承継をすすめるための手順は?

中小企業が事業承継をすすめるための手順は以下の通りです。

  1. 会社の経営状態を確認する
  2. 後継者候補を選ぶ
  3. 後継者候補の教育・実績作り
  4. 自社株式の贈与・相続
  5. 株主情報の変更など税務手続き

それぞれ詳しくみていきましょう。

会社の経営状態を確認する

まずは会社の経営状態を確認し、資産・負債・資本や売上・費用・利益の数値を明確にしましょう。
中小企業の多くは非公開会社になるので、財務状況から自社株の株価が決まるケースがほとんどです。
株式を後継者へ移動させる際に、だいたいどれくらいの費用がかかるのか概算するためにも株価の算出は必要となるので、まずは自社の状態を理解することから始めましょう。
また、事業承継後に新規事業を立ち上げられる状態なのか、維持できそうか判断するための指標としても活用できますので、事業承継を検討するのであれば、まずは財務諸表のチェックから始めます。

後継者候補を選ぶ

自社の状況を把握したら、後継者候補を選びます。
先ほども解説したとおり、事業承継の多くは親族内承継によるものです。
親族内に事業承継への意欲が高く、能力のある方がいる場合は良いのですが、そうでない場合は親族外承継やM&Aによる事業承継も視野に入れて検討していきます。

また、後継者候補を教育する期間が必要だったり、社内での反発や分裂を防いだりといった側面も踏まえて、後継者候補を選ぶのは早めが良いでしょう。

後継者候補の教育・実績作り

後継者候補を選んだら、次期経営者になるための教育や実績作りに取り組んでいきます。
業種・業態に関する知識の習得はもちろん、ノウハウやマネジメント能力の獲得も必要となるでしょう。
現経営者と共にマネジメント業務を担当することも必要です。
また、現場経験を積んだり新規事業の立ち上げを担当したりといった実績作りも社内の反発を防ぐためには重要でしょう。
しかし企業の規模や業態、社内の状態、後継者の能力によって最適な教育方法は異なります。
事業承継の専門家に依頼すれば適切な方法で後継者を教育できるので、ぜひ検討してみてください。

自社株式の贈与・相続

後継者や企業内の準備が整ったら、経営者が保有している自社株式を後継者へ移動させて経営権を譲り渡します。
経営権を保有するためには、最低でも全体の51%以上の自社株式を保有していなければなりません。
また、自社株式を譲り渡す際に制限が設けられている可能性もあるので、定款や会社法をもう一度確認してみましょう。

こちらの記事で株式の譲渡についてわかりやすく解説しているので、自社株の譲渡について不安が残る方はぜひ参考にしてみてください。

株主情報の変更など税務手続き

株式の移動が完了したら、税務署へ提出している株主情報を書き換えます。
これで中小企業の事業承継は完了ですが、それぞれの手順は非常に多くの要素から成り立っているのです。
現経営者と後継者候補だけで事業承継を行う場合は本業をこなしながら手順をひとつずつクリアしていかなければならないため、大きな負担がかかるでしょう。
事業承継の専門コンサルタントへ依頼すればこういった手続きを力強くサポートしてもらえるので、確実に事業承継を済ませたい方はぜひ専門家へ相談してみてください。

親族外への事業承継ならM&Aも視野に入れて検討しよう

中小企業の事業承継について、手順や注意点を解説してきました。
中小企業の事業承継は、まず手順を明確にし、注意点を理解しながらスムーズに進めなければなりません。
事業承継や会社法、税法に関する知識が必要になるので、ぜひ他の記事も参考にしてみてください。
また、事業承継を自社内だけで行うのが難しいケースも考えられます。
もし事業承継について分からないことがある場合は、ぜひ事業承継ラボまでお問い合わせください。