まず最初に、全国47都道府県に設置された「事業引継ぎ支援センター」による事業承継の相談件数と実施件数を見てみましょう。なお事業引継ぎ支援センターとは、後継者不在の中小企業の事業承継を支援する目的で設置された国の機関です。
事業承継やM&Aを強力にバックアップしてくれるので、ぜひ参考にしてみてください。
事業引継ぎ支援センターでは、まず相談の場を設けた上で事業承継の実施可否を判断します。そして実施する決定に至った場合は、引き継ぎ相手とのマッチングを行い、事業承継を実現する流れになります。
中小企業庁の公表するデータによると、平成30年度の事業引継ぎ支援センターへの相談件数は7,768件、そのうち事業承継に至った件数は545件でした。
言い換えると、最低でも7,768社の中小企業が事業承継に興味を持ち、実際に545社が事業承継を果たしたと言えます。
事業引継ぎ支援センターによる事業承継の支援件数は年々急増しています。平成24年度には相談件数994件で実施件数はわずか17件でした。ですがそれ以降、相談・実施件数共に右肩上がりに増加し、わずか6年で相談件数は7.8倍、実施件数は32倍にもなりました。このデータからは、事業承継の件数がここ数年で確実に増加していることが見て取れるでしょう。
次にご紹介するのは、中小企業のM&Aを支援する仲介会社「レコフ」が公表している事業承継やM&Aの件数です。なおレコフが定義する事業承継やM&Aとは、「売り手の経営者・個人株主が株式の大半を売却した案件」を意味します。
つまり中小企業がM&Aによって行った事業承継の件数、ということです。
レコフが公表している独自のデータによると、平成30年度の事業承継M&Aの件数は543件でした。事業引継ぎ支援センターの公表するデータとほぼ同数であるため、M&Aによる事業承継の件数はおよそ540件程度であると推測できます。
年間543件ということは、休日を除くと一日平均で2件もの事業承継M&Aが行われていることを意味します。一日平均で見ると、M&Aによる事業承継が活発であることが分かるでしょう。
レコフのデータからも、事業承継の件数がここ数年で急増していることが分かります。平成23年の事業承継M&A件数は約130〜140件。この8年間で、なんと約4倍もM&Aによる事業承継が増加しました。なおレコフは、未公開案件も含めると事業承継M&Aの件数は4,000件に上ると推測しています。
最後に、事業承継税制の申請件数を見てみましょう。事業承継税制は、主に親族内承継での節税手段として用いられる制度です。よって事業承継税制の申請件数を見れば、親族内での事業承継の件数を推測することが可能です。
中小企業庁によると、平成30年度の法人向け事業承継税制の申請件数は、4月から12月だけで1,857件に上るとのことです。12月単体だけで見ると一ヶ月で499件も申請が行われており、年間6,000件に迫る勢いで申請件数が増えています。
事業承継税制の申請件数が増加していることから、M&Aのみならず親族内や従業員への事業承継の件数も増加していると推測できるのではないでしょうか?
事業承継税制の申請件数が増えている背景には、事業承継自体の件数が増加していることに加えて、事業承継税制の改正もあります。
事業承継税制の改正により、納税猶予の割合が100%に拡大された上に、税制の適用要件が緩和されました。この改正によって事業承継税制は、中小企業にとって使いやすい制度となったのです。
事業承継税制について詳しく理解したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
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さまざまなデータを見てきて分かるとおり、事業承継の件数はここ数年で急増しています。M&Aの普及や事業承継税制の改正の影響で、今後もさらに事業承継の件数は増加する可能性が高まるでしょう。
一昔前とは違い、資金力や後継者の面に不安があっても事業承継を行える時代となりました。後継者不足や資金不足に悩む方も、M&Aや税制を活用して事業承継にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?