会社の清算とは、会社の解散により事業活動を終了した後に行われる、会社としての使命を終わらせための手続きです。
清算を行うことで、これまでの事業活動によって発生した債権債務を整理して、最終の残余財産を処分し、登記によって会社としての存在が抹消されます。
最近では、事業承継という目的のために、能動的に清算を選択するケースも。
こちらでは、事業承継を実現させるために活用されている清算の方法について見ていきましょう。

企業の解散と清算

「解散と清算」の両者が混同されるケースが多いので、まずはしっかりと区別して理解しましょう。
「解散」とは、会社の事業活動を停止する手続きであり、「清算」とは、解散後の会社の債権債務を整理して最終的に法人格を消滅させる手続きです。

会社の解散とは?

会社の解散とは、次の事由(会社法471条)に該当する場合にのみ認められる、会社の事業活動を停止する手続きです。

会社法471条に明記された事由

    • 定款で定めた存続期間の満了
    • 定款で定めた解散の事由の発生

株主総会の決議

  • 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る)
  • 破産手続開始の決定
  • 会社法第824条第1項又は第833条第1項の規定による解散を命じる裁判

 

解散事由のうち、1~4の4つの事由による解散を「任意解散」、5~6の事由による解散は「強制解散」です。
また、一番多いのが「株主総会の決議」による場合であって、業績悪化等の理由から会社を計画的に清算するような場合に選択される解散事由となります。

これに加えて、「休眠会社のみなし解散」制度に該当する場合も認められます。

休眠会社のみなし解散制度の適用

休眠会社のみなし解散については、登記手続きを12年間行っていない会社に、管轄の法務局が、事業を廃止していない旨の届け出をするよう通知したにも関わらずこれに応じない場合、休眠会社としてみなす制度です。

清算とは何か?

会社の清算とは、解散により事業活動を停止した会社が、事業活動によって生じた債権を回収して得た資金で債務を弁済し、最終的に残った会社の残余財産を株主に分配したうえで、会社の法人格を消滅させる手続きになります。
会社の清算には、「任意清算」と「法定清算」の二種類があります。

「任意清算」とは、合名会社、合資会社に認められた清算手続きであり、定款の定めや総社員(合名会社、合資会社の社員は、出資者であり、業務の執行者の地位にあって、無限責任を負います。)の同意によって会社財産を自由に処分できるものです。

「法定清算」とは、法律上の手続にしたがって財産の整理を進める清算手続きであり、「通常清算」と「特別清算」に分類されます。

通常清算

取締役に代わって選任される清算人によって進められる清算手続きであり、裁判所の監督外で行われる私的な清算手続き。

特別清算

債権債務に争いがあって通常清算の手続きに支障を来す特別な事情がある場合や、債務超過などによって債権者保護の手続きが必要な場合に、裁判所の監督の下で行われる公的な清算手続き。

特別清算の事業承継への活用

東京商工リサーチによると、全国の企業倒産の件数は、リーマンショックが一段落した2010年以降、減少傾向が続いていますが、その一方で、特別清算の件数が増加傾向にあると報告しています。
また、特別清算が事業承継の手法として積極的に活用されていると分析し、注目されているのです。

特別清算は、破産などの他の法的手続きと比べると裁判所に納める予納金が少なくて済み、また、裁判所が選任する破産管財人の支配下に置かれないため、債権者への配当も清算人の裁量で比較的自由に決めることができます。
債権者の数が少ない企業や、そのほとんどの債権を親会社がもつような完全子会社において適用される清算手法として活用されているという背景があるのです。

最近では、この特別清算を事業承継の目的で活用するという手法が注目されています。
これは、将来にわたって残していきたい事業を別の会社に移管して、既存の会社にはその事業で発生した債務を残し、特別清算によって消滅させる方法であり、「第二会社方式」と呼ばれているものです。

第二会社方式は、この制度を活用して、これまでの事業活動によって生じた債務を一掃して身軽になった事業を、次代を担う承継者に託し、事業を再生してもらうことが狙いです。

次代に事業をつなぐ「会社の清算」

会社の清算とは、事業活動を終了した会社の使命を終わらせるために、会社としての存在を抹消する手続きになります。
そして、裁判所の監督の下で行われる公的な清算手続きである特別清算を活用すれば、債権債務に争いがある場合や、債務超過に陥っている場合であっても、合法的に清算処理を行うことができ、将来に亘り存続させたい事業を次代の承継者に託すことが可能になるのです。
業績の悪化により債務の増大に苦しんでいる中小企業において、事業再生の手段として検討する価値は高いと言えるのではないでしょうか。