事業継承は対処することが非常に多く、一歩間違えると取り返しのつかない失敗を招いてしまいます。
この記事では、事業継承に失敗しないため、またスムーズに進めるためにはどんな点に気を付ければよいのか紹介していきます。

事業継承は時間がかかる

事業継承には3つの方法があります。親族内継承・親族外継承・M&Aとありますが、どの方法を選択しても時間がかかるので早めの準備が必要。ここでは簡単に3つの方法を整理しておきましょう。

◯身内へ事業を継承する
親族内などの身内に事業承継することを親族内承継といいます。

社内に子どもや親族が複数いる場合、後継者を選んだときに相続争いが生じてしまう可能性もあるので、親族に理解してもらうのに時間がかかる可能性も。
なぜその人を後継者にしたのか、納得のいく説明をしないといけません。事業承継士などの専門家を入れて公的な場で家族会議を行うのがおすすめです。

また、事業承継計画に沿って後継者を教育するので時間がかかります。

◯親族外へ事業を継承する

親族外へ事業承継を行う場合は、後継者選びに時間がかかってしまうケースが多いです。

後継者が親族であれば経営権を譲ることにもある程度の道理がありますが、親族内承継であっても社内の反感を買わないために入念な準備と教育が必要となります。親族でない方を後継者にする場合は、さらに慎重な人選が必要となるでしょう。

親族外で後継者を探す場合は、まず最初に社内の従業員の中から適任の人物を探すことになります。それでも後継者候補が見つからない場合は外部から人間を招牌することになりますが、どの人物が適任なのか見極めるのは非常に困難です。

事業承継のプロ人材を斡旋するプロフェッショナルバンクなどの企業や、各自治体が設置している事業引き継ぎセンター内にある後継者人材バンクなどを利用することで、スムーズに後継者を探せるので、ぜひ参考にしてみてください。

◯M&Aによる承継
M&Aで友好的な引継ぎをするためには、時間をかけて信頼できる後継者を見つける必要があります。

M&Aは、仲介会社との契約から始まります。条件などのヒアリングをしてもらい、その後マッチングする案件を探すことになるでしょう。

資料をもとにして、仲介会社が紹介してくれた買い手と面談を行い、合意が成立すれば契約を交わしてM&Aは完了です。近年はM&Aを行う中小企業の数も増加傾向にあります。

また、詳しいM&Aの流れについて理解したい方には以下の記事がおすすめです。

事業の継承で失敗する原因を8パターンに分けて紹介

事業を継承するうえで失敗する主要な8パターンを説明していきます。

パターン①:準備が遅すぎる
事業の継承が失敗する原因として散見されるのが準備の遅さに依るものです。

事業の継承にはさまざまなステップがあり、準備期間も中小企業の発表によると5〜10年ほどかかると言われています。また、資産の引き継ぎや税制面での制度利用については数々の専門家と協力しながら進めていく必要があるので、大掛かりなプロジェクトになるでしょう。

きちんと計画せずに作業をなんとなく進めると、どこかで無理が生じて事業承継そのものが不可能になってしまう可能性も。

例えばワンマン経営の経営者が急に亡くなってしまうと、会社の経営について誰も何も知らない状態で放り出されてしまいます。少なくとも、早めに事業承継計画書を作成しておくことが大切です。会社の状況を見える化して、経営を引き継げる状況にしておくことで、ひとまずいきなりの廃業や休業は避けられます。

ベストはあらかじめ後継者候補を決めておき、先代経営者が動けない状態になったとしても、後継者に教育を施している状態を維持することです。たとえ後継者の育成が不十分であっても、一旦は経験豊富な役員や外部の経営者を迎え入れることで、会社の体制を整えたまま時間を稼ぎ、後継者へバトンタッチしていけるでしょう。

パターン②:社内派閥が出来て後継者が決まらない
お金や権力も絡んでくる事業承継では誰が継ぐのかも問題になります。親族内での事業承継であっても、外部人材の事業承継であっても、少なからず反発は出てくるでしょう。

この反発が加熱し、社内で派閥が出来て企業が分断してしまうと健全な経営さえ難しくなります。社内で起こりそうな問題が予め予想できるなら後継者を別で立てるか、対立しない形で権限を持たせるなど、工夫をする必要があります。

パターン③:後継者が見つからない
息子や娘が後継者になりたくないというケースも増えてきました。職業選択の幅が増えて親族内承継の割合はひと昔前に比べて大幅に下がっています。
参考:帝国データバンク

親族が引き継がなくても、いずれ後継者が見つかるだろうと楽観視するのは非常に危険です。早めに計画を立てて引継ぎ先を見つけなければ、後継者が見つからないまま歳を重ねてしまう可能性があります。有能な後継者を、どの企業も喉から手が出るほどに求めている状況を鑑みて、希少な後継者候補を迎え入れるためにも早めに手を打つようにしましょう。

パターン④:前任者の過度な口出し
事業承継をしたのに、ついつい不安になって後継者のやり方に口を出してしまう、というのはよくあるケースです。しかし、引き継がれた後継者からすれば、先代経営者からの意見が多発してしまうと社内に対して管理能力を示す機会を失ってしまうでしょう。

先代からすれば後継者の一挙手一投足が気になってしまうかもしれませんが、それが社内に伝わることで統率力が失われてしまいます。

「先代社長があんなに気にかけるということは、まだ経営者としての器じゃないのかもしれない」と社員に思われてしまうことで、せっかく教育を施した後継者の辣腕が振るえなくなってしまうこともあるでしょう。

こうなると、結果的に経営がいつまでも前任者から手離れできずに後任者も自信を失ってしまいます。

とはいえ経験豊富な先代経営者が近くにいてくれる環境というのは、後継者にとって非常に心強いのは確かです。後継者から「意見をください」といった申し出があったときに助けてあげるだけでも、会社や後継者にとって先代経営者は無くてはならない存在になります。
いざという時に頼れるご意見番として、どっしりと構えていたほうが承継後の経営がスムーズに運ぶのです。

パターン⑤:トップが変わった瞬間に信頼が落ちる
中小企業は社長の能力や人脈に頼っているケースも少なくありません。しかし、社長が一人でガンガンお客さんをとってくるような会社ほど事業承継で苦労することも。ワンマン経営をしてきた会社ほど、資産が見える化されておらず、引継ぎに時間がかかってしまうのです。

代表を引き継いだ途端に取引先が離れていってしまい、会社が成長しにくくなることも考えられます。人間的な魅力や能力は一朝一夕で身につくものではありません。

引き継ぐ前に営業の経験を積んでおいて、取引先から信頼が得られるようにしておくことが大切です。

パターン⑥:事業の継承が現場レベルに浸透していない
事業承継では組織が大きく変わるので、どうしても承継後の不安や混乱は生まれてしまいます。経営者や各部署をまとめる責任者クラスの従業員には、不安がある社員の迷いを払拭できるように力強く導くリーダーシップが求められます。

特に中小企業では団結力が欠かせません。幹部のそれぞれがリーダーシップを持つことが重要で、経営者や責任者が明確な指示を出すことで事業承継は円滑に進むようになります。
事業承継ではマネジメントのトップ層に意識が向きがちですが、承継後の経営も見据えてミドルクラスの幹部職にも目を向けておきましょう。中間管理職のメンバーが力強く現場を引っ張り上げていける状態であれば、承継後の経営についても安定した基盤で挑むことができます。

パターン⑦:議決権が確保できない
会社の経営には関係ない株主の家族から相続した株式の買い取り請求をされ、議決権の過半数を持てなくなることがあります。
経営者の意思の通りに経営ができなくなると、事業相続もうまくいきません。

パターン⑧:相談しないまま勝手に進めてしまう
誰にも相談することなく会社のあり方や、承継の方法を決めてしまうのもよくありません。
引継ぎ先との合意がとれても、社内で事後報告であれば反感を買う可能性が高いです。

そのまま説得できないと、従業員などがやめてしまい会社自体が回らなくなってくることも。
会社は社長だけのものではありません、会社で働く人、その家族のことも考えて計画し、行動することが大事です。

事業継承を成功させる4ポイント

事業継承を成功させるためには焦らないことが大切。そして、会社のことを第一に考えることも大事です。
それらを可能にするには、客観的に状況を把握できる第三者の存在が必要不可欠でしょう。それ以外にも、事業承継を成功させるためのポイントがあるので、今回は4つのポイントを紹介します。

ポイント①会社状況を正確に把握
事業継承を成功させるには、まずは会社を取り巻く環境を正確に理解することが重要です。

・後継者候補がいるのか。
・どんな資産があるのか。
・株式の評価額はいくらか。
・株式の保有状況はどうか。

など会社状況を知るだけでも多岐にわたります。売上高や営業利益、キャッシュフローなど、会社の資産が今どうなっているのかを正確に把握しましょう。

上記以外では会社や事業のリスクについて改めて認識しておくことも大事。
負債や競合力など、会社の経営に直接影響をもたらすリスクを洗い出しましょう。
会社の引継ぎまでにリスクを減らせるのであればそれがベストです。

ポイント②事業継承の方針を決める
会社としての方針を決めて施策が固まればで会社としてやるべきことが見えてきます。

事業承継の方針を決めることは従業員をはじめ、ステークホルダーと意識を共有する目的もあります。目指す方向を明確に掲げることで組織がまとまります。
また個々人が何をすべきか自分たちで理解して行動に移しやすくなります。

ポイント③具体的な進め方を決める
具体的な行動を小さな単位に落とし込むことで進めやすくなります。実際に事業継承を進める際にも躓いたポイントがはっきりします。

・株式が分散しているから90%以上を集める
・まず2022年までに後継者を副社長する

など具体的な進め方が決まっているととても進めやすくなります。

ポイント④政策を上手く使う
事業承継は、現在国の課題にもなっているので政策が打ち出され国のサポートが受けやすい状態になっています。
特に、従業員への引継ぎなどの際には承継にあたって多額の税金がかかり負担になることもあります。その負担を減らすためにいくつかの政策が出されています。それらを簡単に確認してみましょう

・特例事業承継税制
後継者に一括で贈与等をした自社株の贈与税額が全額納税猶予される

・事業承継補助金
事業承継後、後継者が新しい取組みをするさい、その取組みにかかる資金を一部支援する補助金

・経営承継円滑化法
後継者以外に先代経営者の相続人がいる場合、自社株の贈与分について遺産分割上の遺留分から除外するなどして、後継者の意欲を削ぐことなく事業承継の合意ができる制度

・経営承継円滑化法による金融支援
後継者による自社株の買取り資金などを金融機関が融資をすることを後押しする制度

・事業引継ぎセンターによる支援
引継ぎ先の紹介や、事業承継ファンドなどを使った承継の斡旋

ただ、これらの方針や計画を社長一人で考えて実行するのはとても大変です。
そもそも何から始めればいいかわからないはず。
最初の一歩をはじめる時は中小企業庁が作成しているテンプレートを使ってみてください。
無料で公開されているため誰でも使用できます。

◯関係者への説明も忘れずに
事業承継の内容はお互いの経営者の間でのみ共有されることが多いです。
できるなら早めに共有することをおすすめします。

社員に対してどのように統合が進んでいくかが共有されていないと、
事業承継が始まっても準備が間に合わずバタバタしてしまいます。

・組織の編成がどうなるのか
・業務プロセスはどう変わるのか

などは必ず共有してスムーズに順応できるようにする必要があります。
また、社外の取引先や投資家・株主などのステークホルダーにもしっかりと情報を伝えてあげましょう。

取引先や投資家は、会社を応援してくれている存在です。
「統合後に会社がどのようになっていくのか」「どんなビジョンで統合をするのか」を熱意を持って伝えられるとこれまで以上の関係の構築ができるチャンスにもなります。

専門家に相談して効率よく事業承継を成功させる

事業承継が失敗すると、それまで続いていた会社が一瞬で消えてなくなってしまうこともあります。社長からしても従業員からしても、それは望ましくない状況です。そんな時は事業承継の専門家にサポートしてもらうことをおすすめします。

◯煩雑な事業承継を徹底サポート
事業承継の問題なら事業承継士に相談しましょう。
事業承継に関わる問題を解決するプロです

・後継者選定
・税金対策
・契約関係

などなどやることは大量にあります。
事業承継士は、会社についてのヒアリングをして事業承継のベストを出していきます。

ほとんどの経営者が事業承継をするのははじめてのはず。
しかし、事業承継では法律や財務など複数のジャンルの専門知識を使って解決してきます。
この最後にして一番大変な社長の仕事を徹底的にサポートするのが事業承継士です。

◯事業承継の専門家に相談を
自力で解決しようとせずに、専門家の力を借りたほうが会社ため、後継者のためにもなります。
あなたの会社にマッチした事業承継士を探してスムーズに運ぶようにしましょう。