日本事業承継パートナーズ合同会社は、後継者不在企業「1社」の株式を譲り受け、代表である黒澤氏自らが後継者として経営を承継する会社です。日本では珍しい形の事業承継に取り組む黒澤代表に話を伺いました。
事業承継を通じた起業を目指したきっかけ
――ゼロイチではなく事業承継を通じた起業を目指したきっかけを教えてください。
大学卒業後、大手金融機関でキャリアをスタートしました。日米で通算8年間勤務し、決算、買収プロジェクト、買収先での業務統合・改善等に従事しました。買収先で経営陣の経営判断に触れる中で、自分で事業がやりたいという想いが強くなり、会社を退職し、経営を学びに海外のビジネススクールに留学しました。そこで、現在私が行っている「事業承継を通じた起業」というビジネスモデルと出会ったのです。海外ではサーチファンドと呼ばれています。
起業というとゼロイチで立ち上げるというのが一般的ですが、日本では素晴らしい事業でありながらも後継者不在でお困りの企業がたくさん存在しますし、ゼロイチで起業するよりも既存事業を受け継ぐ方が自身のこれまでの経験・スキル・性格を活かし、リスクを抑えて事業を拡大していけるのではと考えるようになりました。それを確かめるためにビジネススクール在籍中の2年目に日本に一時帰国し、地方の後継者不在企業を訪問しオーナー社長様とお話させて頂く中で、これまでの自身の経験やスキルを活かして会社を大きく成長させられると確信しました。卒業後すぐに資金調達を行い、弊社を設立した経緯にあります。
――御社はM&A仲介会社や後継者候補の人材紹介会社ではないのですね。
会社名のせいか、よくM&A仲介会社と間違えられるのですが、弊社は後継者不在企業「1社」の株式を譲り受け、代表である私自身が後継者として経営を承継させて頂くために立ち上げた会社です。事業承継を通じた起業に興味を持つ知人はたくさんいますが、彼らの紹介・派遣を事業としているわけではありません。私自身が後継者として承継先企業の地に移り住み経営しますので、「1社」事業承継を行った後は、弊社自体は役目を終えることになります。現在はその受け継がせて頂く「1社」を探す活動をしております。
――現在の組織体制について教えてください。
私が事業承継を通じた起業を行うために立ち上げた会社ですので、フルタイム従事者は私一人です。ファミリービジネス社長、経営コンサルタント、会計士、経営大学院教授等、国内外20名超の方々から資金調達を行っており、彼らから資金面だけでなくアドバイザーとして支援を受けながら、活動しております。
サーチファンドとは
――日本ではまだあまり耳にしない”サーチファンド”ですが、海外では普及しているのでしょうか。
サーチファンドは1980年代に米国で始まり、現在は世界各国に広がりをみせています。サーチファンドの研究機関を擁するStanfordとIESE Business Schoolのレポートによると、2019年までに27か国で533のサーチファンドが設立されています。事業承継は程度の差はあれ、どの国でも一定のニーズがありますので、事業承継の一つの解として本モデルが活躍しています。
私のビジネススクール同級生も、現在アメリカ、メキシコ、コロンビアでサーチファンドとして活動しています。業界としても、ロードサービス、コールセンター、クリニック、ソフトウェア、保育園等、多様な事業で成功事例があります。成功された方が、新たにサーチファンドに挑戦する後輩起業家に投資し、メンターとしてサポートするエコシステムが出来上がっています。私もアメリカ、イギリス、ドイツ、スペインのサーチファンド成功者に株主として参画頂いております。
――サーチファンドについてもう少し詳しく教えてください。
オーナー社長様の視点で考えると主に3つの特徴があると考えています。
1.後継者候補を見極めて”事業承継”を決断できる。
先ず、サーチファンド代表者=後継者候補ですので、事業承継の検討初期段階から後継者候補を見極め決断することができます。事業会社や投資ファンドへの譲渡となると、交渉当事者と後継社長が異なるケースが多いと思いますが、中小企業の事業承継においては「誰」が後継社長として受け継ぐかが非常に重要なポイントだと思いますので、この点サーチファンドのユニークな利点だと考えています。
2.会社をそのままの形で承継することができる。
次に、社名も従業員の皆様もそのままの形で独立体として承継することができる点が挙げられます。サーチファンド自体は既存事業がなく、受け継ぐ会社の良いところを活かして更に発展させていくことになりますので、事業会社への譲渡の際によく行われる親会社への組織文化や業務の統合による従業員の皆様への負担増も避けることができます。大手企業のブランドやリソースを求めて事業承継をご検討される方もいらっしゃると思いますので、この点は評価が分かれるものと思います。
3.経営経験豊富な株主の存在。
三点目として、経営経験豊富な株主の存在が挙げられます。これまでサーチファンドの「後継者」という観点にフォーカスを当ててお話してきましたが、サーチファンド業界は成功者が後輩起業家を投資家兼メンターとしてサポートするエコシステムができており、事業承継後は株主が社外取締役となり経営をサポートしていくこととなります。弊社も海外のサーチファンド成功者に加え、経営経験豊富なプロフェッショナル陣を株主として迎えておりますので、事業承継後は彼らの知見や人脈をフル活用して承継先企業の成長にコミットしていく所存です。
事業承継を検討中のオーナー社長様へ
――最後に、事業承継を検討中のオーナー社長様へ一言お願いします。
事業承継は、創業社長であれ後継社長であれ、これまで家族同様に育ててこられた会社を譲渡することになるため非常に大きなご決断と理解しております。私は譲り受ける側の人間ですが、私も自身の人生をかけてチャレンジしますので、お互い腹を割って話しあい納得のいく形で事業承継を実現できればと考えております。一部株式の継続保有や事業への継続関与、その他譲れない点等、柔軟に対応可能ですので、もしご関心をお持ちのオーナー社長様がいらっしゃれば、是非お気軽にご連絡頂ければと思います。
皆様が納得のいく形で事業承継を実現できるようお祈りしております。
日本事業承継パートナーズ合同会社
後継者不在企業「1社」の株式を譲り受け、代表の黒澤自らが後継者として経営を承継します。起業家、ファミリービジネス社長、経営コンサルタント、会計士、大学院教授等の国内外20名超のアドバイザーの支援を受けており、承継後は各者の経験・英知を結集して譲り受ける企業の成長にコミットします。
会社HP:https://www.jbs-partners.com/
代表・黒澤 慶昭氏の経歴
早稲田大学商学部卒、IESE Business School経営学修士課程(MBA)修了。米国公認会計士。東京海上グループにおける日米通算8年間の勤務を通じて決算、中期経営計画、買収プロジェクト等に従事。2019年に日本事業承継パートナーズ合同会社を設立、代表社員に就任。