キリスト教牧師の傍ら、後継社長に対するコーチングに取り組まれているサーバント・スタイルの中澤 信幸氏。自身が経験した2代目としての悩みや葛藤で、同様に悩まれている後継社長を支援するための取り組みについて伺いました。
自分らしくあるためにやりたいことに取り組む
――後継社長を支援しようと考えられた背景をお聞かせください。
私はキリスト教の牧師を本業としており、その傍ら「等身大リーダーシップ」という後継社長のためのコーチング支援に取り組んでいます。父から牧師業を引き継いでおり、私自身が後継者でもあります。
父から牧師を引き継いだことは、後継者としてよかったコトもありましたが、なにか物足りなく感じてしまうこともあり、私本来の姿ではないと思う時もありました。牧師として教会の中の方々と深く関わることはもちろんですが、教会の外の方々とも関わりを持ち貢献していきたいと考えておりました。
――”コーチング”をしたいという想い
そこで7~8年前に、私に最も合う支援の方法として”コーチング”をしようと考えました。資格を取得してコーチングに取り組み始めました。しかし、現在のように副業が容認される時代ではありませんでした。「牧師業に専念してほしい。」という教会の方々の想いが強くありました。それを振り切ってまで、無理に自分のやりたいことを推し進めることはできませんでした。
とは言え、”コーチング”が自分にとって最も効果的な支援方法であることは変わりません。今後の自分の歩みを改めて考え始めた、2019年11月に「やはり自分らしいことをやろう!」と考え、教会内の方々にも、コーチングに取り組んでいく旨をきちんと理解して頂いて、本格的にコーチング業が始まっていきました。
――サーバント・スタイルという社名の由来をお聞かせください。
サーバントは「仕える人、召使い」という意味があります。神のため、人のために「奉仕する・貢献する」ということが私にとって大切なことです。リーダーであるからこそしっかりと人に奉仕し貢献していきたいという願いを込めてサーバント・スタイルと命名致しました。
サーバント・スタイルHP:https://servant.style/
後継社長ならではの悩み
――なぜ後継社長を支援したいと考えたのですか?
どのような方々にコーチングを提供しようか迷っていた時に、ちょうど後継者の方とお話する機会があり、自分が後継者として悩んできたことと同じような悩みを抱えている中小企業の後継者がいることを知りました。そのとき、他人事とは思えず、ほっておけない、という思いを強くしました。
私自身、先代から引き継いだという背景があるからこそ、自分のやりたいこと、自分らしい路線を打ち出すことへの躊躇がありました。人から悪く思われたくない、というのが強かったです(苦笑)。自分の色を出していくだけの自信もありませんでした。
あとは、偉大すぎる先代との比較にも悩まされました。経験の差から言っても、かなうわけがないんですよね。それなのに、周囲が比較するし、自分も比較するし、出口がない感じでした。
後継社長の方々も、自分らしさを取り戻して、これから新しいことに挑戦したいと考えている方々がいらっしゃいます。周囲の理解も得ながら、信頼されて新しいチャレンジができるように、コーチングを通してサポートしていきたいと考えています。
――後継者としてどのような苦労がありましたか。
父が30年以上取り組んできたことを引き継いだので、自分を出していく事にはとても苦労しました。牧師業は”対人”であり、人との関りのうえに成り立っています。そういう意味で、非常に俗人的です。父が築いてきた関係なので、私もできるだけ父と同じように取り組むことに努めてきましたし、それが教会の方々の満足に繋がっていたでしょう。
ある程度順調にいっていたこともあったので、それでもいいやと思っていたのも正直なところです。しかし、それは“父から継いだだけ”であり、自分らしさを何も表現できていない現状にジレンマを感じるようになりました。そこから、自分の想いを出していきたいと強く考えるようになりました。その過程で、自分の中の葛藤があり、周囲の理解を得ることの困難さがあり、苦労しましたね。
――中澤様の自分らしさとはどのようなものですか?
最初は、それもよくわかっていませんでした。しかし、自己理解のツールなどで自分の強みを深く理解するようになり、これまでの歩みを振り返って人生の目的意識を明確にするようになって、改めて自分らしさを発見することができました。
私自身は、自分が主役であるよりも、サポート役であること、参謀役であることのほうに喜びがあります。一人ひとりの与えられているものが花開き、実を結ぶことのためにサポートすることが、私にとって何より充実感を覚えます。そういうコーチングによる対人支援を教会の中の方々だけでなく、一般の方々にも広く提供していくところに、私自身の自分らしさがあると考えています。
「等身大リーダーシップ」というコーチング支援
――コーチング支援の詳細をお聞かせください。
「等身大リーダーシップ」を自分のものにする、というのが支援のテーマとなります。等身大リーダーシップは私が作った造語です。
具体的には、まず自分自身の強み、弱みを深く知ることから始めます。強みは、本人にとって当たり前、あまりにも自然であることが多いので、「強みなんかない」「こんなこと誰にでもできる」となりがちです。その強みを自覚し、最大限活かしていく方法を見つけます。合わせて、「私は誰のために何をしてどう貢献するのか」という自分の使命を発見します。
それによって、自分の中に軸ができ、経営の判断にも迷いがなくなります。更に、支援型のコミュニケーションを身につけることによって、先代、古参の職人さんたち、従業員さんたちとの関係が変わってきます。もう「ヒト」の問題で悩まなくて済むようになります。信頼、尊敬されるリーダーとして、自分自身が成長していることを実感できるようになります。
取り組みのきっかけとしては、強みの発見、使命の明確化に取り組む方が多いです。気軽に声をかけていただければ、と思います。
コーチング・サービスの詳細:https://servant.style/services/
――具体的にはどのような取り組みをされていますか?
自分の強み、弱みを理解し、活用するためには、ストレングス・ファインダーの資質の読み解きを提供しています。また、与えられている使命、目的、価値を明確にするためのワークを提供し、個人のミッションステートメント、事業の経営理念を共に作成しています。こういった強みと使命に基づいて、対人関係を向上させるべくコミュニケーションスキルのサポート、支援型リーダーとしてのマインドセットを磨くことをご支援します。
加えて、セルフチェックやフィードバックを繰り返す中で、リーダーとしての「あり方」の成長、公私の生活全般に及ぶ自己基盤の確立についても、じっくり時間をかけて取り組んでいます。
他人との比較や、背伸びをすることなく、その人らしく生きて使命を果たすことうをサポートしています。
自分の本当の課題をみつける
――実際にどのような方々をご支援されていますか?
人数としては、多くありません。ひとりひとりにじっくり寄り添い、オーダーメイドの取り組みを提供しています。定期的な対話の中で、本当に必要な事をご自身で気づいて頂けるようにアシストしています。
ご相談を頂く中小企業の経営者様の多くは、「先代と何かと比較される」「あの人とうまくいかない」「困った従業員がいる」といった課題を抱えています。しかし、対話をすることで自分自身の外側に起こってくる課題から、自分自身の内側にある本質的な課題に気づいて頂けるようになります。”こだわり”や”嫉妬”、“過度な競争意識”といった者です。幸いにも信頼してお話し頂けているので、ご自分の本当の課題に向き合うことができるのだと思います。
経営や組織運営に関する相談はコンサルタントなどの相談相手がいらっしゃるでしょう。自分自身の成長、課題について、ご一緒に取り組んでいくのが私の役割だと日々感じております。
――相談される方は、なぜ中澤様に心を開いてくれるのでしょうか?
自分で言うのは口幅ったいのですが、どんなことでも受け止めてくれる、何でも話せると信頼していただいています。おそらく牧師という立場も、一役買っているのでしょう。確かに、これまで私自身も様々な方々のありとあらゆる状況に寄り添ってきましたので、状況を受け止め、人を受け入れる度量は、それなりに養われてきたと考えています。
これからの取り組みと経営者へのメッセージ
――今後注力していきたいことはございますか?
何より、私を必要としてくださる方ひとりひとりにしっかり寄り添っていきたいと考えています。先代との比較、社内の「ヒト」の問題などに直面したら、お声をかけてください。
最近は意欲的に情報発信に取り組んでおり、「等身大リーダーシップの話」として、音声の番組を2021年3月よりスタート致しました。事業承継をされた後継社長の方や、支援者の方にインタビューをしています。ホームページ、ポッドキャストなどでお聞きになることができます。
――最後に後継社長へのメッセージをお願い致します。
後継社長には、2つの物が与えられています。「事業を継いだという立場」と「自分の個性と使命」です。その2つが重なり合うところを見つけてください。それは自分自身のためであり、また従業員、お客様、その周りの方々の幸せのためでもあります。自分が引退するときに「自分なりによくやってきた、満足だ」と振り返ることができるように、ご一緒に取り組んでいきましょう。そのために、お役に立てれば幸いです。
中澤 信幸 氏
アトツギライフコーチ。自身も2代目のキリスト教牧師。2代目社長が信頼される等身大のリーダーになるために、マインド面を重視した骨太コーチング。合言葉は「もう迷わない」
ライフコーチ(生涯学習開発財団認定コーチ)/大野キリスト教会牧師/事業承継士/ポッドキャスター
慶応SFC2期生、Fuller Theological Seminary (M.Div.)、日本サーバントリーダーシップ協会員