京都府舞鶴市を拠点に活動されている大滝工務店。「まちづくりまでやる工務店」というカラーを打ち出し、かっこいい工務店を目指して、様々なことにチャレンジされている代表(後継者)の大滝氏にインタビューしました。

家業を継ぐこととなったきっかけ

ーーまずは御社の事業内容をお伺いさせてください。

京都府舞鶴市を拠点とする工務店で、昭和27年からあります。
住宅、店舗、オフィス、社寺の新築・改修の設計、施工の会社です。特徴としては、自社内に設計、現場管理、大工の上流から下流までの人材が揃っていること、また、木造に限らず鉄骨、鉄筋コンクリート造と守備範囲が広く、層が厚いです。

 

ーー大滝様はどのようなきっかけで事業承継をしようと思われたのですか。

私は、東京でシステムエンジニアとして3年間働いた後、父の経営する大滝工務店へ帰ってきました。

大学は建築学科を出ましたが、工務店を継ぐ気はなくシステムエンジニアの道を選んだんですね。しかし、システムエンジニア2年目のときに父が病気になってしまい、仕事ができない状況となってしまいました。その時の会社の業績はどん底で今にもつぶれそうという状態で、母からの帰ってきてほしいという要望もあり、当時は相当抵抗していました。

しかし、考え直してみると東京でのエンジニアとしての将来に想像がついており、自分にしかできない役割があるのなら、全うしないと死ぬときに後悔するかもと思ってきて、人生を一回リセットしてチャレンジしようということで家業を継ぐことを決意しました。

会社HP:https://ohtaki.co.jp/

 

事業承継時の苦労

ーー実際に事業承継に取り組まれた際に、大変だったことや苦労したことはございますか。

最年少でありながらも自分が経理も財務も握って、現場も見なければ行けないという状況だったことがとても苦労しました。

いきなり会社を引き継いだので、手探りで会社経営が始まり、税理士さんにお手伝い頂きながら取り組みました。
会社経営をいきなり担い、技術的にも知識的にも一番未熟で、かつ社員は全員年上で、会社の経営状況がガタガタだったこともあり、社内の雰囲気もすごく悪い中で、既存の社員との関係づくりにとても苦労しました。

 

――信頼関係を気づくために取り組んだことはございますか?

信頼関係を築くために取り組んだことは2つです。「結果を示していくこと」と、「社員の家族を大事にしていくこと」です。社員にとって大事なのは”家族”であり”生活”です。そこを経営者が大事に思っていることをしっかりと伝えるということです。テクニックの話ではなく、本気でそう思っていかないといけないです。私自身も結婚して家族を持った結果、家族が大事なことに心から感じました。

また既存の社員から、創業者である祖父がいつも家族を気にかけてくれていたという話を聞きました。創業者のカリスマ性を借りるという観点でも、心から社員のご家族を気にかけ、声をかけるよう取り組んでいます。

コミュニケーションに工夫をして、時間はかかりましたが社員の態度も変わっていき、継いでから5年程経過してやっと自分の会社になってきたと感じました。そこまでは、対決姿勢が強かったですね。(笑)

 

ーー事業承継に取り組まれた時を思い返して頂いて、こうしておけばよかったと思うことはありますか?

初めから、社員の方々ともっと謙虚に会話をするべきだったと思います。それに気付くのに5年くらいかかりました。もちろん、その時期があったから今があると思うので後悔はありませんが、対話することをもっと意識していればもっとスムーズにいったかもなと思っています。

答えは従業員側にあることが多く、対話をすることで解決していくこともありますし、人を巻き込んでいくことが大切だと思います。

なので、今気を付けていることのは”対話”です。あとは、それぞれ取り組みにビジョンを示すことです。会社のリーダー層を育成していくことも目的に、採用や設計などの細かな業務に対してもしっかりとビジョンを示しています。

また、「学びあい」も大切にしています。上司が部下を指導するだけではなく、上司が部下からも学ぶことがあると考えています。経験として伝えることはあるけれど私も含め、どちらが偉いとかではなく、人間的な成長を図るような会社にしていこうと考えています。

 

 

会社を後世に繋いでいくために

ーーご自身が代表となって以降、事業の変革にも取り組まれていますか?

「まちづくりまでやる工務店」というカラーを打ち出しています。
まちづくりをするチームを立ち上げて大滝工務店として参画していたり、地域に仕掛ける工務店というカラーを持ってカフェ兼相談窓口を設け、地域の暮らしの質の向上したりですね。既存の工務店の殻を破るような活動をしています。

ビジョンが3つあり、「工務店をカッコよくする」「ひとづくり・まちづくり」「中小企業の星になる」です。
1,2つ目は環境作りが大切で、大工も含めて完全週休二日制にしました。3つ目のところでIターン狙いの求人活動をし、地域における雇用の創出をしています。地方の中小企業でもこんなことができるということを伝え、去年は東京と山口から就職にきてくれました。
地方の工務店という会社のイメージから、「面白い工務店が舞鶴にあるらしい」というようなブランディングを意識しています。

 

ーーご自身で取り組まれたM&Aもお伺いしてもよろしいでしょうか。

はい。具体的には後継ぎがいない設計事務所を引き継ぎました。きっかけは社員も育ち始め、事業を広げていきたいと思った時にM&Aでの事業拡大を検討し始め、事業引き継ぎ支援センターからご紹介頂き、引き継ぎました。完全に別会社ではなく同じグループ、大滝工務店の社員として、連携して業務に励んでいます。

 

ーー今後もM&Aで会社を大きくしていこうというプランはございますか。

あります。直近ではないですが、これから中小企業のM&Aはますます盛んになると思うので、本業をどう伸ばすかという視点もそうですが、伸ばしたい方向にマッチしたM&A案件があればM&Aでの事業拡大を狙えればと思います。

中小企業でも当たり前になってくるところだと思います。しっかり承継して回せる力が身につけば「あそこならちゃんとできそう」といい話がくると思っています。実際に現在、協力会社でも「後継ぎどうするのだろう?」という会社様もあるので、そういうところも巻き込みながら会社を伸ばしていきたいと考えています。

 

最後にメッセージ

――最後に同じような境遇の後継者へメッセージをお願い致します。

後継ぎの人に伝えたいこととしては、「対話を大事にしよう」「財務を理解しよう」話は変わるかもしれないですが「高級車に乗るな」ですね。社員の方々とお互い学びあい、対話を大切にしながら謙虚に取り組んでいってほしいと思います。

 

大滝工務店
代表:大滝 雄介 氏