M&Aにおいて必須となるビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD)をはじめとして、クライアント様のM&A及び経営課題に対して支援を行っているユナイテッドベンチャーズ株式会社。経験豊富なメンバーで取り組まれている支援内容について、代表の楜澤 悟氏に伺いました。

創業のきっかけ

ーーユナイテッドベンチャーズを創業したきっかけをお聞かせ下さい。

2007年に弊社を創業しました。創業前、私はソフトバンクに勤務しており、新規事業の立ち上げ等の業務に10年間ほど従事していました。立ち上げた新規事業の子会社をCOOとしてIPOさせること等も経験しました。その経験を活かしたベンチャー支援の仕組みが作れないかと考え、創業に至りました。

 

ーー当時は具体的にどんなご支援をされていたのですか?

経営支援型の投資ファンドを組成し、成長途上の上場企業へ出資を行っていました。我々も投資先の会社の経営企画室や社長室にスタッフとして加わり、経営面でサポートをしながら共に会社の成長に取り組みました。その後、事業がどんどん派生していく形で、現在の複数の事業内容となっています。

昨今では会社の成長戦略のひとつとしてM&Aの重要度は年々増加傾向にあります。我々が経営支援をする中でM&Aに携わる機会も増えていきました。経験を積むなかで、その取り組み方や留意点をノウハウとして蓄積していきました。

 

ーーM&Aに対するニーズの高まりを感じておられたのですね。

はい。ソフトバンクに在籍していた頃からM&Aに携わっていましたが、ここ10年で特にM&Aニーズの高まりを感じています。特に上場後の企業がM&Aを成長戦略として取り入れることが非常に増えてきたと感じています。

会社HP:http://unitedventures.jp/index.html

 

ビジネスDDの具体的な業務内容

ーービジネスDDの業務はいつ頃から始められたのですか?

2016年頃に本格的なサービスとしてスタートしました。ですがそれ以前にも投資ファンドを運営する中でM&Aに関連した支援は実施しており、ノウハウとして蓄積していました。
例えば、ファンドとして投資先を検討する過程で、投資先企業のリサーチを入念に行います。企業を調査し投資先として検討するという経験とともに、実際に経営支援をする中でM&Aの買い手側としても携わっていました。

その経験を活かしてひとつのサービスとして立ち上げていけないかと考え、ビジネスDDのサービスをスタートしました。

 

ーー今ほどM&A市場が盛り上がっていない中で、いち早くサービスをスタートされたのですね。

当時もM&Aに対するニーズの高まりは感じていました。ただ、ビジネスDDを外部に依頼するということがあまり一般的ではありませんでした。

法務や財務に関するデューデリジェンスは弁護士や会計事務所に依頼することはあっても、ビジネスDDは社内で取り組むことが一般的でした。そもそも「ビジネスDD」という言葉自体があまり知られていなかった印象があります。

 

ーービジネスDDの具体的な支援内容についてお聞かせください。

被買収企業の事業がどのように行われていて、どんなリスクがあるのかを明らかにしていくことが一番大きな目的です。その中で、ビジネスモデルや収益モデルなどの事業の構造を細かく調べていきます。

過去と現在の業績や取り組みを調べることはもちろんですが、M&Aは実行してからが本番です。M&A後にどうやって成長させてシナジーをどのように創出していくかを検討し、シナリオを作成していきます。必要に応じてこれらの作業もビジネスDDにおいて実施します。

 

ビジネスDDの具体的な内容

・対象企業(事業)の事業上のリスク・懸念事項を明確にする

・ビジネスモデルや収益構造を正確に把握する

・将来的な収益ポテンシャルを把握する

・買収後の早期事業シナジー創出に向けて、買収後に取り組む課題・ポイントを明確にする

・買収後の成長戦略の検討や事業計画の策定をすすめる。

 

ーー経営企画室支援サービスについて、詳細をお聞かせください。

こちらも元々ファンドを運営していた時に行っていた業務の延長線上のサービスになります。現在は投資先のみならず幅広い企業様をご支援しております。数か月から、長い時でしたら数年間に渡ってクライアント企業を支援しています。支援先の社長、CFO等に直接、経営課題の解決をサポートしています。

またM&Aで企業を買収した際には、その後のPMI(買収後の統合プロセス)がとても大切です。成長中の企業等の場合は、社内のリソースだけでは手が回らない状況もあります。我々がビジネスDDを支援した場合だと、業務を通して会社の中身について詳しく把握しています。そこで、買収後のシナジーを生むために経営面でサポートして欲しいとクライアント企業から仰って頂き、経営企画室支援を行う場合もあります。

 

ーー支援企業の業種などに特徴はございますか?

私自身、IT業界の出身なのでIT系の企業様をご支援することが多かったのですが、最近では様々な業種をご支援するようになりました。昨今のM&Aの傾向として、IT系の企業が飲食系の企業を買収するといった、業種を跨いだクロスオーバーのM&A案件が増えています。

そのような場合は社内にあまり知見がないため、外部の専門家に依頼をした方がよいと判断され、我々にご依頼を頂くことがあります。

 

第三者が客観的に調査することのメリット

ーー御社の強みをお聞かせください。

我々の強みはデータに現れてこない情報をきちんと収集し整理することができることです。特に、人や組織に着目した調査・分析を行なっています。

法務及び財務のデューデリジェンスだと、主に資料を基に情報を整理していく事になりますが、ビジネスDDにおいては、マネジメントや各事業のキーマンの方などにできる限りヒアリングをさせて頂き、資料には出てこない定性的な情報を多角的な目線から分析いたします。

マネジメントが日々どのように行われているかを把握することはもちろんですし、社員の増減や役員の入れ替わり、株主構成の変化等のデータも把握しながら、組織で何が起こっているのか、なぜ起こっているのかをしっかりと把握するようにしています。

 

ーー客観的な立場に立った支援を意識

また、客観的な立場で対象企業及び事業を見ることを意識しています。M&Aでは、社長がトップダウンで会社の買収を決めてくることもあります。

そのように社長がM&Aに乗り気な場合には、例えば重大な問題があったとしても担当社員の方がしっかりと説明・説得することは難しい場合もあります。第三者である我々が、本当に客観的な情報を取りまとめてお伝えすることで、しっかりとした情報を把握して頂きM&Aの成功を後押しできればと考えています。

 

我々はよく「成功報酬ベースでサービスを展開しないのですか?」と聞かれることがありますが、我々はDDという業務においては、成功報酬という報酬形態は不適切であると考えています。

M&A案件が成立することで報酬を頂く形態にしてしまうと、案件を成立させるためのサポートになってしまいます。問題点も含めてしっかりと明らかにしていくことが我々に一番求められていることです。結果としてM&Aが成立しないで終わることも多々あります。

しっかりと第三者視点による客観的な情報をクライアント企業に報告し、確かな情報を持って納得のいく形でM&Aに取り組んで頂くために支援したいと考えています。

 

ーー御社の助言によってM&Aが流れるケースもあるんですね。

例えば、被買収企業の既存の事業計画をもとに買収価格を決定する際に、そもそも前提となっている事業計画の条件が楽観的なシナリオに基づいて作成されてしまっている場合があります。買われる会社としては、価値のある会社だと判断してもらうために魅力的な事業計画でアピールしがちです。

我々の役目は、その事業計画に本当に合理性があるのかを明らかにすることです。社内の状況や、市場・競合の情報等をしっかりと調査・分析した結果、既存の事業計画と大きく乖離している場合も多々あります。そうなると、買収金額などの条件の見直しが行われます。条件が見直されてM&Aが合意になるケースもあれば、合意に至らずブレイクするケースもあります。

また、事業計画以外にも“人”の部分で話がこじれてしまうケースも多いです。経営者がどのような人となりで、これまで何をしてきて、何を考えてこれまで会社を経営してきたのか等の情報は、書面や数字には現れにくい部分です。

買収後に、この社長を信頼して会社を任せていいのか、またM&Aが行われて社長が抜けた場合に社員達はどうなるのか等、“人材”についても検討の対象とし、我々が調べた結果、M&Aが見送りとなったケースもありました。

 

M&Aを検討している経営者・後継者へのメッセージ

ーー最後に、M&Aを検討している経営者・後継者へのメッセージ

M&Aを成功させる為には、場数を踏むことが大切とも言われます。初めてM&Aを経験される方が、自らの知見だけに頼って進めると上手くいかないこともありますが、それらの要因の大半は事前にしっかりと調査・分析を行わなかったことです。実際に、M&A実施後のシナジーの創出等が当初の想定通りに上手くいかなかった場合に、「なぜもっと事前にしっかりと調べなかったんだ。」という声を、経営者の方から聞くことも多いです。

外部の専門家の力を借りるということは当然費用が掛かります。ただ、その費用がM&A後の将来に与える影響は非常に大きいです。その費用を節約してしまったが故に、M&A後にシナジーを生むことができず失敗に終わってしまうこともあり得ます。

我々はビジネスDDで多くの企業様をサポートしてきました。現在の状況を細かく分析することはもちろんですが、M&A後に被買収企業としっかりとシナジーを生み出すことができるのかといった未来のことも含めてアドバイスできます。過去と未来を一度明確にする意味でも事前の調査・検討が重要だと考えています。

 

ユナイテッドベンチャーズ株式会社

代表取締役社長 楜澤 悟氏

1971年生まれ 東京工業大学工学部卒業
ベイン・アンド・カンパニーを経て1996年ソフトバンク株式会社入社。現スカパー!の立上げに従事した のち、子会社のクラビット株式会社(現 ブロードメディア株式会社)取締役に就任。スカパー!の拡販や、 日本初の有線役務利用放送「BBTV」の立上げをCOOとして推進し、2002年にIPO。ヤフーBB等のグルー プ内各種新規事業にも携わる。
2007年ユナイテッドベンチャーズ株式会社設立、代表取締役就任(現任)。IT系新興上場企業を対象とした経営支援型投資ファンドの運営や茨城県にて地方新聞社の事業再生等を行う。
2019年11月 東京都アドバイザー(デジタルトランスフォーメーションフェロー)に就任
2020年3月 株式会社ジャパンタイムズ社外取締役に就任