後継社長のための経営支援サービスを展開されている株式会社think shift。ご自身で後継社長と創業社長を経験され、その経験を活かして後継者支援を行っている代表取締役社長の浅野氏へインタビューしました。

後継社長と創業社長を経験

ーー御社を創業されたきっかけをお聞かせください。

はい。私は自ら好んで起業したというよりも、起業せざるを得なかったという状況だったことが起業を決意したきっかけです。
2006年に中途入社した50人規模の中小企業があります。入社後は順調に成果を上げて役員にまでして頂き、最終的には、血縁関係のない創業者(先代)に見初められて後継者として第三者承継で会社を引き継ぎました。2014年に会社を引き継ぎ、5年間代表を務め、またその間はしっかりと売上と上げ毎年増収できており順調に経営できていると思っていました。

しかし、2年前の2019年に先代との意見の対立が起こってしまい、会社を離れざるを得ない状況となってしまいました。株も一部保有させて頂いたのですが、やはり中小企業においては先代の意向も強く、辞めざるを得ない状況となってしまいました。そんな状況で、私について来てくれた社員と共に創業したのが現在のthink siftです。

 

ーー当時の会社で、後継者としての苦労をご経験されたのですね。

私が代表を務めていた5年半の中で最初の2年間は会長として支えて頂き、3年目からは会長職も離れ引退されていました。私としては、先代が引退されてからも定期的にお会いしてコミュニケーションを取っていたつもりだったのですが、その頻度が充分に足りていなかったために思いが食い違ってしまったのかなと思っています。

think siftを立ち上げて、同じ社長業とは言え創業社長と後継社長の立場や考え方は全く違うなと強く感じました。

後継者は既存の事業にある程度縛られます。本来は、既存事業もしっかり回しつつ、社長の責任と権限の基で新規事業に取り組んでいくことが大切です。当時は自分の思い通りに経営をさせて貰っていたつもりでしたが、やはり先代の影を感じつつ経営をしていたのだと今になって気がつきました。

そのような背景もあって、「自らの思考・考え方を変革させ拡張していきたい」という想いでthink siftと命名しました。

会社HP:https://think-shift.jp/

 

後継社長を支援するプログラム

ーーでは、事業内容についてお聞かせください。

中小企業の後継社長向けに、ビジョン策定の支援や、引き継いだ会社をさらなる成長へ導くための組織づくりの支援を行っております。引き継いだ会社は、多かれ少なかれ課題があり、特に組織の課題は少なくありません。その課題を解決し、再び成長する会社にするサポートをしています。

世の中に後継者支援を行っているコンサルタントはいらっしゃっても、私の様に実際に後継者であった経験を持っている方は少ないです。後継者を経験した人間が現役の後継者を支援するサポートって無いことに気がつき、それを売りにしてやっていこうと考えたのが始まりです。

 

事業承継後に業績の伸びている会社は僅か15%という統計結果があります。8割強の会社が後継後に業績が衰退してしまっているのです。また、最近ではM&A市場も活発になってきていることもあって、「事業承継=M&A」というような世の中の認識になりつつあり、ひいては親族内でも親族外でもM&Aでも「株を整理すること」が事業承継という認識になってしまっていると感じています。本来しっかりと考える必要のある事業承継後の経営についてあまり考えられていないのです。

 

後継社長の組織づくり支援

ーー実際にどのような支援をされているのですか?

いくつかの支援内容があるのですが、例えば弊社のフラッグシップサービスである、戦略立案プログラム「me;rise」があります。このプログラムは、10回の集合型の研修を通して、会社のビジョンから経営戦略までを細かく策定し、最後には各会社の幹部の方をお呼びしてプレゼンを行うといったプログラムです。

実践的な内容となっており、いわゆる社長塾のような後継者育成のプログラムではなく、ご自身の会社の理念を考え直し、既存事業及び新規事業をどのように進めていくかというのを考えて頂くという内容となっています。特徴としては、戦略を語る上でどのような構成要素、判断基準が必要かといった細かな戦略立案のフレームワークを提供しながら、受講者の方のアウトプットを後押ししています。現在は新型コロナウイルスの影響もあって集合型の研修ができないので、個別のコンサルティングに切り替えて実施しています。

 

ーー後継社長ならではの特徴もあったりするのですか?

後継社長が持たれている悩みは似通っていることが多く、古参の社員の方とのコミュニケーションに苦労されたり、ご自身が始めた事業では無いので心から没頭ができない、などの悩みを抱えておられます。また、これまで3000人程の後継者とお話をしてきて、「仮にご自身が創業者だった場合、あなたはそれでも現在の事業をやられていますか?」と質問をすると、ほぼ100%の方がその事業をやっていなかったと仰います。

ただし、どの経営者様も事業を継ぐことに消極的ということではなく、会社を守る・家庭を守るという想いが強いのです。

 

また、創業経営者の特徴として、ご自身の引退について考えていないケースが多いです。会社をゼロから作っていくことはとても大変であり、そんな状況で「誰に継いでもらうか。」とはあまり考えません。一方で2代目社長以降はご自身が事業承継を経験していますので、継ぐことをなんとなく意識できています。

どんな立場の経営者でも、ご自身の後の会社の引継ぎについてしっかりと考えなければいけないと思っています。事業承継を通して今一度会社を成長させていく「承継イノベーション」を起こしていこうということを伝えています。

 

後継社長へのメッセージ

ーー最後に、経営に悩まれている後継社長へのメッセージをお願い致します。

経営者やそこで働く社員が違えば当然働き方は変わり、会社の色は変わります。先代が考えた理念やビジョンは創業の想いはしっかりと引き継ぎつつも、後継者の色に合わせて変えていくことは当然だと考えており、新たなビジョンを創っていく事を後押ししています。

理念やビジョンの策定後は、社内にしっかりと共有し、ゴールまでの道筋を計画し、メンバーをマネジメントしてください。これらをしっかりと言葉にしていけるようプログラムを構成し、我々がサポートしています。

 

既存事業は放っておけば衰退します。例えば30年前に先代が立ち上げた事業であれば、当然今の社会環境とは状況が違っているからです。しっかりと既存事業に手を加えつつ、新規事業のチャレンジしながら会社を大きくしていくことが大切です。後継者の象徴となるような新規事業を立案し、既存事業と新規事業のバランスを考慮して“30年の構想”を立て、採用計画を立て、チームで取り組んでいけるよう組織づくりをしていきましょう。

 

 

株式会社think shift

代表取締役社長:浅野 泰生 氏