戦後まもなくより続く伝統的な印刷業とともに、デジタルハリウッドSTUDIO千葉の創設など新たにデジタルコンテンツを推進する取り組みも開始し、時代に合わせて自らを変えていく株式会社さくら印刷の三代目アトツギ鎌田貴雅様にお話を伺いました。
- 1. 株式会社さくら印刷の会社概要をご教示いただきたいです。
- 2. 新卒で保険代理店に入社したとお伺いしましたが、家業に入られることになったきっかけを教えていただけますか?
- 3. 家業に入ろうと学生時代から考えられていたのですか?
- 4. アトツギとして社内では具体的にどのような業務に取り組んでおられますか?
- 5. コミュニティカフェSAKURAGや就職応援本COURSEやデジタルハリウッドSTUDIOIなど地方創生の取り組みについてご教示いただきたいです。
- 6. 新たな取り組みをされる原動力は何なのでしょうか。
- 7. アトツギとして家業に携わる中で、最も印象に残っている出来事を教えていただけますか?
- 8. アトツギとしての今後の展望をご教授いただきたいです。
- 9. 事業承継ラボの読者に向けてメッセージをお願いいたします。
株式会社さくら印刷の会社概要をご教示いただきたいです。
まず昭和24年の創業から続いている印刷事業がありますが、印刷の市場は現在縮小していっているので、それだけではなくwebページや映像の制作も手掛けています。
近年はさらに広く、高卒の方たちに向けた就職応援メディアであったり、デジタルコンテンツの人材育成学校であるデジタルハリウッドSTUDIOの運営であったりにも着手しております。
またコワーキングスペースおよびコミュニティカフェという形式でカフェ施設を運営したりもしています。
大雑把に言って、伝統的な印刷事業とデジタルコンテンツ事業サービス、教育コミュニティ事業が柱となっています。
新卒で保険代理店に入社したとお伺いしましたが、家業に入られることになったきっかけを教えていただけますか?
新卒で入社したのが保険代理店であったことには、特に理由はないですね。
大学では建築を学んでおり、研究室に閉じ込められる生活に嫌気がさして別の方向に進みました。
ただ保険の実態がない業務内容に面白味を感じられず、地元に戻って家業でアルバイトをしつつ求職活動をしていました。
その最中で社長である父親の感じている苦労や面白さが理解できるようになって、本格的に家業に専念したいと思ったことがきっかけになります。
家業に入ろうと学生時代から考えられていたのですか?
いえ、元々は家業っていうものがまったく頭にありませんでした。
そもそも父親と会社の話をしたことすらなかったので、承継するという選択肢自体、アルバイトとして家業に携わるようになってから初めて考え始めましたね。
アトツギとして社内では具体的にどのような業務に取り組んでおられますか?
アトツギとして入社してからは、まず受注の請負体制の改革に着手しました。
それまでは完全にあちらから受注が来るのを待つ方式だったので、こちらからも提案できるようなやり方を目指しました。
体制の変革ということで、このタイミングで辞められた社員の方などもいましたが、これによって新しいことにチャレンジするという意識が社内に芽生えたということもあり、トータルとしてプラスにはなったでしょうか。
コミュニティカフェSAKURAGや就職応援本COURSEやデジタルハリウッドSTUDIOIなど地方創生の取り組みについてご教示いただきたいです。
具体的な取り組みとしては、デジタルハリウッドSTUDIO千葉や、《高校生向け就職応援メディアCOURSE》の創設があります。
デジタルハリウッドSTUDIOは、この地元においてデジタルコンテンツを得意とする人材を育成することを目的としたもので、デジハリと弊社の業務提携によって開設が実現いたしました。
また《高校生向け就職応援メディアCOURSE》は、就職に伴って地域から若い人が流出してしまう現状に対して、この地元の企業の情報を発信していこうという理念のもと開始したものです。
これは印刷会社としての地域の様々な企業との繋がりを活かした試みとなっています。
このような取り組みをしていると、デジハリのブランドの強さなどもあり、行政や企業などから何かしらお声がかかるようになって、その繋がりから事業が広がっていく感覚がありました。
そこで地元にこうした繋がりの場を作ることが地域の活性化に貢献するだろうと考え、立ち上げたのがコミュニティカフェSAKURAGIになります。
こちらはクラウドファンディングを実施して、目標が100万のところを140万円ほど寄付していただきました。地域の方々からも注目されており、ニーズがあると感じていますね。
新たな取り組みをされる原動力は何なのでしょうか。
現在の原動力は、率直に言って「不安」です。
印刷は間違いなく斜陽産業ですから、何か新しいことにチャレンジしなければ会社として生き残っていけません。
ですのでワクワクだとかのポジティブな気持ちではなく、とにかく会社を存続させたいという不安が原動力となっています。
アトツギとして家業に携わる中で、最も印象に残っている出来事を教えていただけますか?
印象に残っていることといっても、やはり苦しい思い出のほうが多いですよ。
アルバイトから正社員になったのが24歳のころでしたが、業務改善に取り掛かるに当たってまず社員の方々と面談して、会社の問題点を洗い出していこうとしました。
それでもやはり会社の悪い点、それに対する愚痴を一気に浴びせられて、もはやどこから着手したらいいか分からないという気持ちでした。
あの時期が一番辛かったですし、記憶に残っているのもそのことですね。
アトツギとしての今後の展望をご教授いただきたいです。
ありきたりですが、やはり社員の方々が楽しくやりがいを持って働ける会社を作りたいですね。
また正直僕自身にはあまりやりたいことはないのですが、社員の方でもそうでなくとも、何か夢や目標を抱えている人がいるのならば、できる限り力になりたいと考えております。
事業承継ラボの読者に向けてメッセージをお願いいたします。
アトツギは間違いなく大変でしょうし、家業が自分のやりたいこととマッチしていない、という悩みもあるかもしれません。
ただ自分の得意なことと家業の間を行ったり来たりしていると、そのうち家業が自分の方向に傾いてくるんです。
そうして家業を自分に寄せていくことで、仕事もどんどん楽しくなっていくと思いますので、ぜひともアトツギとして頑張っていただきたいと思いますね、