三重県尾鷲市で65年以上にわたり米と酒を販売する世古米穀店。三代目の世古大介氏は、伝統的な配達販売を守りながら、ECサイトの開設やサブスクサービスの導入を進め、新たな顧客層を開拓しています。地元・東紀州の魚文化に合わせた「魚に合う米」の開発など、地域とのつながりを大切にしながら、事業の未来を見据える取り組みに迫ります。
- 1. 世古米穀店の事業概要についてお伺いできますか?
- 2. 創業当初からの事業の移り変わりについて詳しく教えてください。
- 3. 商品ラインナップで特に人気のあるものや、お客様に喜ばれるポイントについて教えてください。
- 4. 地元・東紀州の特産品との特徴的な取り組みについて教えてください。
- 5. 全国からお米を仕入れる際の基準やこだわりについて詳しく教えてください。
- 6. 毎月厳選したお米を届けるサブスクサービスを始めたきっかけについて教えてください。
- 7. 家業に戻られた経緯について詳しく教えてください。
- 8. 事業承継にあたり、準備していることや大切だと感じていることはありますか?
- 9. 今後のビジョンや挑戦したいことについて具体的に教えてください。
- 10. 最後に、事業承継を考える方々へのメッセージをお願いします。
世古米穀店の事業概要についてお伺いできますか?
当店は三重県尾鷲市を拠点に、祖父の代から約65年以上続く老舗の米穀店です。主にお米やお酒、食品関係の商品を取り扱い、地域のお客様に販売しています。取り扱うお米は北海道から九州まで全国各地から厳選したものを揃えており、日本酒、焼酎、ワインなどのお酒も全国各地のものを取り扱っています。
お客様は個人の一般家庭をはじめ、地域の飲食店や施設へも納品を行っており、地域に根差した販売スタイルを続けています。
創業当初からの事業の移り変わりについて詳しく教えてください。
創業当初は祖父が主にお米や雑穀を専門に取り扱う店としてスタートしました。その後、お酒の取り扱いも始め、さらに事業を拡大しました。
販売形態は、昔ながらの配達方式と店舗販売を並行して行っており、地域のお客様に直接お届けするスタイルを大切にしています。
私が約10年前に家業に戻った際には、結婚後、妻とともにECサイトの運営も開始しました。最初は試行錯誤の連続でしたが、現在ではオンラインを通じて県外のお客様にも商品を届けることができるようになり、新たな販売チャネルの一つとして活用しています。
商品ラインナップで特に人気のあるものや、お客様に喜ばれるポイントについて教えてください。
当店で取り扱っているお米やお酒は、日常生活に欠かせない商品が中心です。特定の人気商品というよりも、お客様一人ひとりのライフスタイルや嗜好に合わせた商品提案が喜ばれています。
例えば、お米選びの際には、炊きあがりの食感や味わいの好みをお伺いし、それに最適な品種をおすすめするなど、対面販売ならではのサービスが特長です。
また、お酒についても、単に銘柄を紹介するだけでなく、料理とのペアリングを提案することで、お客様により満足していただけるよう努めています。
地元・東紀州の特産品との特徴的な取り組みについて教えてください。
尾鷲市は海に面しており、魚介類が豊富な地域です。そのため、当店では地域の特産品と組み合わせた商品開発にも力を入れています。その一例が「魚に合う米」です。複数のお米をブレンドし、魚料理と相性の良い味わいを実現しました。
このブレンド米は、観光客向けのメニュー開発にも貢献しています。
こうした取り組みを通じて、地域の食文化を全国へ発信し、地元の魅力をより多くの人に知ってもらいたいと考えています。
全国からお米を仕入れる際の基準やこだわりについて詳しく教えてください。
当店が大切にしているのは、生産者や農協担当者との「顔が見える関係性」です。生産者の思いやこだわりを直接聞き、その品質を確認したうえで仕入れることで、お客様に自信を持って提供できる商品を取り扱っています。
また、仕入れるお米は、単に産地やブランドだけで選ぶのではなく、実際に食味を確認し、品質に納得できるもののみを厳選しています。
毎月厳選したお米を届けるサブスクサービスを始めたきっかけについて教えてください。
尾鷲市は高齢化が進んでおり、一人暮らしや少人数の家庭が多いため、「少量でも良いから美味しく、種類の違うお米を楽しみたい」というお客様の声が多く寄せられました。その声に応える形で、お米のサブスクリプションサービスを開始しました。毎月異なる銘柄のお米を少量ずつ届けることで、お客様に新たな味わいを楽しんでいただける仕組みとなっています。
また、SNSを通じて全国の生産者とのつながりが増え、多様なお米を提供できるようになりました。
家業に戻られた経緯について詳しく教えてください。
もともと家業を継ぐ意志はありましたが、一度外の業界で経験を積もうと考え、青山商事(株)に就職し「洋服の青山」へ配属されました。
店舗運営や在庫管理、接客技術などを学び、それらの経験を家業に活かすことができると考えました。実際に戻ってからは、業務の効率化やSNSを活用した販促活動など、新たな取り組みを進めています。
事業承継にあたり、準備していることや大切だと感じていることはありますか?
現在、税理士や三重県の事業承継支援センターと連携し、手続きや今後の進め方について話し合いを進めています。事業承継を円滑に進めるためには、計画的な準備と専門家のアドバイスが不可欠だと考えています。
今後のビジョンや挑戦したいことについて具体的に教えてください。
地域の魅力をさらに発信し、東紀州の食文化をより広めていきたいと考えています。また、全国各地の優れた商品を取り扱い、地元の食卓を豊かにする取り組みを強化していきたいです。
ECサイトのさらなる活用や、地域食材とのコラボレーションにも注力したいと考えています。
最後に、事業承継を考える方々へのメッセージをお願いします。
事業承継は大変なことも多いですが、前向きに取り組むことで新たな可能性が広がると考えています。楽しみながら仕事を続け、自分らしい経営スタイルを築いていくことが大切だと思います。