有限会社を引き継ぐ際に、どのような手続きが必要となるのか不安に思う方もいるでしょう。
実際に株式会社と有限会社では、事業承継の手続きは多少異なります。
この記事では、有限会社の事業承継を行う方法や注意点、税金を安く抑える方法をわかりやすく見ていきましょう。
10分程度で読み終わるので、ぜひお付き合いください。
有限会社の事業承継を行う方法
有限会社の中でも、株式の発行有無によって事業承継を行う方法が若干異なります。
この章では、株式を発行しているケースとしていないケースに分けて、有限会社の事業承継を実施する方法を見ていきましょう。
株式を発行していないケース
株式を発行していない有限会社の場合は、先代経営者の「出資持分」を後継者の名義に書き換える方法で事業承継を行います。
また出資持分の名義書換えに加えて、社員総会を開催した上で後継者を取締役に選任する必要もあるでしょう。
「財産権」とあるように、有限会社の出資持分を引き継ぐ際には、株式のように持分の価値を評価し、その金額に応じた相続税を納税する必要があります。
出資持分の評価方法は、会社の規模によって異なるので注意が必要です。
持分の価値評価には難しい会計や税務の知識が必要となるため、相続税が発生するほどの大きな有限会社を事業承継する際には、税理士などの専門家に持分の価値を評価してもらうようにしましょう。
株式を発行しているケース
株式を発行している有限会社の場合は、株式会社と同様に後継者に株式を譲渡し、経営権を移転する手続きが必要です。
有限会社の経営権を完全に引き継ぎたい場合は、100%の株式を後継者に承継しなくてはいけません。
なお現存する有限会社については、定款の定めに関係なくすべての株式に譲渡制限が設定されているのです。
よって有限会社の株式を後継者に引き継がせるには、株主総会を開催して譲渡承認請求と承認手続きを行う必要があります。
また株式を承継するため、出資持分と同様に株式の価値算定が必要です。
こちらも専門的な知識が必要となるので、税理士などのプロに依頼するのが無難です。
有限会社の事業承継における注意点
有限会社の事業承継には、下記2つの注意点があります。
一部のM&A手法を用いた事業承継は行えない
有限会社の事業承継では、一部のM&A手法を用いることが認められていません。
また、吸収合併による存続会社となることもできません。
身近な親族や従業員に後継者が見つからない会社にとって、M&Aはとても役に立つ事業承継の手段です。
そんなM&A手法の一部が使えない点は、有限会社の持つ大きなデメリットと言えるでしょう。
信用力が低い場合がある
法的な優劣はないものの、有限会社であるという理由だけで信用できないと考える人も世の中には存在します。
後継者探しや事業承継の資金を調達する際に、有限会社という理由で断られる可能性も無きにしもあらずです。
有限会社の事業承継で税金を安く抑えるには?
出資持分にしろ株式にしろ、一定以上の資産を事業承継で引き継ぐと、相続税や贈与税が発生する可能性があります。
多額の税金が発生することで、事業承継後の資金繰りが苦しくなるケースもあるでしょう。
そんな有限会社の事業承継で税金を安く抑える上で役立つのが、つい最近改正された事業承継税制です。
事業承継税制を利用すれば、引き継ぐすべての株式について相続税や贈与税の支払いを全額猶予してもらえます。
つまり税金の負担を全く負わずに、事業承継を行うことができるのです。
便利な事業承継税制ですが、納税猶予を受けるには
- 会社の条件
- 先代経営者の条件
- 後継者の条件
の三つを満たす必要があります。
また事前に事業計画などを提出しなければなりません。
事業承継税制を受ける要件をくわしく知りたい方は、下記の記事で分かりやすく解説しているのでぜひご覧ください。
【事業承継】贈与税をゼロにする!事業承継税制をわかりやすく解説します
参考:非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし
まとめ
出資持分と株式のどちらを引き継ぐかで若干の違いこそあるものの、有限会社が事業承継を行う際の流れは株式会社と基本的には同じです。
有限会社に限ったことではありませんが、事業承継では相続税や贈与税の負担が大きくなります。
少しでも後継者の負担を軽減するためにも、有限会社を引き継ぐ際には事業承継税制を活用するのも一つの選択肢です。