「M&Aに取り組みたいけれど何から始めれば良いのか分からない…」
「事業承継にM&Aが利用できると聞いたけれど、どういうこと?」
こういった悩みをお持ちの中小企業、個人事業主様も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
M&Aの流れを理解するには専門的なノウハウが必要となるので、なかなか手を出しづらいという実情もあるでしょう。
この記事ではM&Aに意欲的な方に向けて、分かりやすくM&Aの流れや手順を解説しています。
10分でM&Aの流れを理解して、今後の事業に役立ててみてください。

M&Aの流れを理解する

M&Aは多額の資金を必要とする手続きであり、大幅な時間や人的コストも必要とします。そのため、M&Aに取り組む際には入念に段取りを立てて、計画的に手順を進める必要があるのです。

M&Aの流れを理解するために、まずはそれぞれの手順を細分化して見ていきましょう。

M&Aの戦略を立てる

M&Aの手続きを進めるためには、あらかじめ戦略を立てておく必要があります。
やみくもにM&Aを進めてしまうと、かけたコストが水の泡になってしまいかねません。
M&Aに取り組む根本的な目的や、自社の成長戦略を明文化するためにも、M&Aの戦略を立てることは大切です。実際にM&Aを行う企業や事業領域によって自社の成長戦略を変更することもあるので、まずは現段階の指針を用意する意識で、戦略を策定していきましょう。

まずはM&A戦略の概要をざっくりと解説します。

  • 自社の成長戦略を立てる
  • M&A戦略と共に成長戦略をブラッシュアップする
  • ターゲット選定を最適化する
  • デューデリジェンスを通して相手企業の問題を洗い出す
  • PMIを意識しながら統合後マネジメントに取り組む

大まかにはこのような手順を踏んでM&A戦略を立てていくことになるでしょう。

M&Aの戦略については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
M&Aの戦略はどのように立てる?本当に必要なノウハウと考え方を伝授します

M&A仲介会社を選ぶ

M&A戦略を策定したら、M&A仲介会社を選ぶステップに進みます。M&A仲介会社は、買い手側の企業と売り手側の企業をマッチングしたり、双方の企業へコンサルティングを行ったりする企業です。信頼できるM&A仲介会社を利用しないと、M&Aが失敗して多額の費用や時間的・人的コストが無駄になってしまうリスクが高まります。

M&Aの成功率を少しでも高めるために、複数の企業へ相談して、もっとも相性の良いM&A仲介会社を探すことがおすすめです。少し手間はかかりますが、信頼できる仲介会社が見つかるまで根気よく探すようにしましょう。

M&A仲介会社を選んだら、NDAFA契約を締結します。
NDAとは(Non Disclosure Agreement)の略称で、日本語では機密保持契約とも呼ばれるものです。FA(Financial Adobaizari)とは、仲介会社がどのくらいまで業務を行うのか、報酬はいくら程度になるのかを取り決める契約を指します。この両契約を結ぶことで、仲介会社は正式に自社のM&Aをサポートできるようになるのです。

正式にM&A仲介会社と契約を結んだら、仲介会社や税理士などと連携しながらM&A戦略を固めていきます。
法律や税務の面で様々な手続きを踏む必要があるので、専門家の知見やノウハウを活用しながら計画を立てていきましょう。

M&A先の企業を選定する

M&A先の企業を選ぶ際に重要なのは「どのようなシナジー効果が得られるか」です。
相手企業の強みや弱みだけでなく、属する業界や事業領域といった周辺環境についても包括的な視点で調査をすすめます。

買い手企業だけでなく、売り手企業も買い手企業に対してM&Aの打診を行いますが、この際に用いられるのが「ノンネームシート」と呼ばれる、M&Aの意思や会社の概略をまとめた書類です。ここには売り手企業の名前は表示されませんので、特定されることはないでしょう。
ノンネームシートを渡した上で、さらに踏み込んで提案をすすめる場合には「ネームクリア」と呼ばれる経営に関する情報をまとめた資料を渡して、双方の合意について問題がないか確認します。

M&Aの交渉をスタートする

双方がM&Aに対して前向きに検討している場合は、トップ面談のフェーズに移行します。買い手企業と売り手企業の双方のトップが面談を行い、経営陣レベルでの合意や初めての顔合わせを行う場です。

価値観や経営理念といった企業文化の根幹となるものをお互いに理解しあい、シナジー効果が十分に生まれると見込めた場合は、M&Aの基本合意を行います。

M&Aの意向表明書・基本合意書を交わす

M&Aの契約を締結する際には、まず意向表明書基本合意書を交わさなければなりません。買い手企業が買い取り価格や買い取りの手順を明記した「意向表明書」を交付し、その内容に売り手企業が合意すれば「基本合意書」を交わします。

基本合意書の締結をもって買い手企業には独占交渉権が発生しますが、これは売り手企業がこれから「基本合意書を交わした買い手企業とのみM&Aの取引をすすめる」という取り決めです。

M&Aの手続きをすすめるために、デューデリジェンスを行うことを忘れてはいけません。
デューデリジェンスとは、買い手企業や売り手企業が相手の企業について調査し、今抱えている経営的な問題や様々な課題を洗い出す作業のことです。デューデリジェンスが不十分なままM&Aをすすめてしまうと、M&A後に問題が発覚して大きな損失を被る可能性があります。
公認会計士や税理士などの専門家にもチェックをお願いして、相手企業の実態を十分に調査することで後顧の憂いを取り払い、気持ちよくM&Aの契約を締結しましょう。

最終譲渡契約を締結する

最終譲渡契約とは、M&Aの契約をクロージングする最後の手続きです。
決済と同じタイミングで最終譲渡契約が交わされるケースも見られますが、M&Aで必要となる株式の譲渡には別に煩雑な手続きが求められることもあり、決済と実際のM&Aにはタイムラグが生じることも少なくありません。

PMIに基づいた統合後マネジメントに取り組む

M&Aが完了したら、PMIに基づいて統合後マネジメントに取り組みます。
PMIとは、(Post Merger Integration)の略称で、M&Aによって統合された事業や企業が足並みを揃えて事業を展開していくために必要となる包括的なマネジメント手法を指したものです。
もとは異なる企業や事業だったものを、M&Aによって同じくくりに取り込むわけですから、文化やノウハウ、手続きについて違和感を覚える従業員も少なくないでしょう。

現場で混乱せずに業務に取り組むためにも、PMIをあらかじめ設定しておき、意欲的に統合後マネジメントを手がける意識が大切です。

PMIでは企業や事業の統合を3つの視点から捉えて、順を追いながら統合していきます。

経営統合

事業統合

意識統合

PMI:経営統合

経営統合のフェーズでは、経営理念やマネジメントフレームといった経営レベルでのすり合わせを通して企業の「方向性」を協調させていきます。どちらかの理念に寄りすぎるのではなく、あらかじめトップ面談で合意していた内容を双方が尊重し合える形で経営陣の歩み寄りができればベストです。

PMI:事業統合

事業統合のフェーズでは、実際の業務や人材、組織、拠点といった物質的な面での剥離を統合していきましょう。異なる事業領域にある企業をM&Aした場合は、特に業務内容や抱えている人材の質も全く異なるものになりがちです。
お互いの良い部分を引き出し会えるように、シナジー効果を最大化する意識を持った上で事業統合に取り組みましょう。

PMI:意識統合

意識統合のフェーズでは、企業の風土や文化といった目に見えない「らしさ」を違和感なく溶け込ませていく必要があります。
経営統合と同様に、どちらかに寄せすぎるのではなく、双方の良いところが引き出し合える形で統合できるように心がけましょう。

企業の風土や文化は長い年月をかけて形作られていくものですが、社長や役員などの経営陣から落とし込まれてくるものでもあります。文化そのものよりも「なぜその文化が作られたのか」という背景にお互いの企業が目を向けあえれば、自然と理解は深まり、上手く文化がミックスされて、意識統合が成功しやすいと言えるでしょう。

M&Aの流れを踏まえて吸収合併に取り組もう

M&Aには紹介したように煩雑な手続きが多く存在します。
時間や人、お金などのコストがかかるだけでなく、M&Aを成功させるにはそれぞれの手順を丁寧に執り行わなければなりません。
そのため、M&Aの成否は仲介会社を選ぶ時点である程度決まってしまう、という実情もあるのです。親身に、M&Aの成功に向かって一緒に歩んでくれるM&A仲介会社が見つかればM&Aの成功率も高まりますが、そうでない仲介会社に依頼してしまうと、満足のいかない結果に落ち着いてしまう可能性もあります。

あらかじめM&Aに関する情報を集めておくことで、信頼できるM&A仲介会社を選ぶための土壌を養うことも大切です。