埼玉県が抱える事業承継の問題は、全国と比較してみても深刻であると言えます。全国の企業の後継者不在率は66.4%ですが、埼玉県に絞ってみてみると後継者不在の企業が70.4%と平均を上回っており、事業の承継先や後継者が決まらないまま経営者が高齢化しているケースが少なくないと見られます。
また、業種別に後継者の不在率を見てみると、建設業が76.7%と最も高く、次いでサービス業が76.6%、不動産業が75.7%と続き、運輸・通信業が73.5%といずれの業種も全国平均より高い水準で後継者不在に悩まされていることがわかりました。

こうした状況を受けて埼玉県内の自治体や組織、各種機関は事業承継への支援を強化。特徴は、埼玉県事業承継ネットワークを構築して各組織や機関をつなぎ合わせて包括的なケアを行っている点です。各自治体の商工会議所はもちろんのこと、外部から事業承継センター株式会社を招いたセミナー開催などの取り組みを通して問題提起に取り組んでいます。他にも、埼玉りそな銀行が事業承継のコンサルティング業務を実施するなど、様々な角度から埼玉県内の経営者を支援する働きかけが行われているのです。

以下に、埼玉県内で事業承継問題に取り組んでいる主な組織、機関を紹介します。

  • ・さいたま商工会議所(事業承継ネットワーク・事業引き継ぎ支援センター)
  • ・一般社団法人事業承継協会 埼玉支部
  • ・公益財団法人 埼玉県産業振興公社
  • ・埼玉県商工会連合会
  • ・各自治体の商工会議所

それぞれの組織や機関がどのように事業承継へアプローチしているのか、詳しく紹介していきます。

埼玉県事業承継ネットワーク

さいたま商工会議所 埼玉県事業承継ネットワーク:さいたま商工会議所が運営。

事業承継を包括的に支援するために各機関をつなぎ、相談者がワンストップで事業承継の問題を解決できるような支援体制を整えています。支援内容は以下のとおりです。

――◯事業承継診断
Webサイトで事業承継診断のサービスが提供されており、訪れた経営者が自分で状況を判断できるようにYes/Noの質問に答えていくと、自社の現状や今後の方向性を確認できるようになっています。

質問の例としては、
「会社の10年後の夢について語り合える後継者候補がいますか。」
「親族内や役員・従業員等の中で後継者候補にしたい人材はいますか。」
といった現在の状況を整理するための設問が続き、回答内容によって最適な事業承継への取り組みを診断してくれます。試しに「社内に後継者がおらず、身近に相談できる相手もいないが、事業の譲渡については相談できる相手がいる」という状況を想定して診断を受けてみた結果、「第三者への事業引継ぎ」をおすすめされました。

診断が完了した段階で、相談フォームが表示されるので、自社の状況を改めて理解した上で最適なサポートが受けられる仕組みに仕上がっています。専門家へ依頼するのは少しハードルが高い、と考えている場合は、こういった診断を活用して自社の状況を簡易的に見直してみるのがよいでしょう。

――◯事業承継に関する相談先の紹介
事業承継では資産の引き継ぎや、それに付随する不動産評価、債務整理など専門知識が必要な手続きがいくつも存在します。

埼玉県事業承継ネットワークには、74の商工会議所と10の金融機関、始業関連団体や公的な支援機関をあわせて17の組織、機関が名を連ねています。ぜんぶで101にのぼる各分野のエキスパートが集結して埼玉県内の事業承継問題に対峙。埼玉県事業承継ネットワークでは、事業承継の相談先となってくれる機関を一覧で紹介しています。

経営者や個人事業主のニーズに合わせて分野ごとに専門家を紹介しているので、事業承継に必要な専門家とのつながりを簡単に構築できます。

――◯セミナー、相談会情報の開示
事業承継に関するセミナーや相談会の情報を一覧でまとめています。

申込書のDLまでワンストップで可能なので、埼玉県内の事業承継について情報収集するには非常に有効です。

事業引き継ぎ支援センター

さいたま商工会議所 埼玉県事業引き継ぎ支援センター:さいたま商工会議所が運営。

事業承継の相談窓口として、予約の申し込みや相談時に気になる点についてのQ&Aも記載しています。実際に相談したい方はこちらから申込みを行うとスムーズです。

 

――◯引き継ぎセンターの目的
国からの依頼を受け、さいたま商工会議所が実施している業務です。

事業の存続に関する様々な課題の解決を支援する公的相談窓口として、事業承継に関する幅広い相談対応や、M&A等のマッチング等を通じて、後継者不在の中小企業者等の事業引継ぎを支援するものと定義され、中小事業者からの相談に対して無料で専門家が細かなアドバイスを行います。設立の目的である「事業承継の推進や支援」をサポート。

――◯相談業務
専門家が相談を受けているなかで「事業引き継ぎ可能性がある」と判断し、相談事業者が事業の譲渡先や譲受先の紹介を希望した場合は、仲介機関の紹介に移行。「事業承継できるのか」という疑問が残っている状態でも、ヒアリングを通して問題を明らかにし、事業承継に必要な支援機関との連携まで一貫してサポートします。

埼玉県 埼玉県事業引き継ぎ支援センター

一般社団法人事業承継協会・埼玉支部

一般社団法人事業承継協会 埼玉支部:一般社団法人事業承継協会が運営。

埼玉県内の中小企業経営者に対し、事業承継の重要性を広く普及するとともに、社会の変革に備えて、会員相互の研鑽に励み事業承継士としての資質の向上を図り、中小企業の事業承継を支援し、後継者の育成に努め、更なる企業の発展に貢献することにより、社会全体の利益の増進に寄与することを目的として、各業界のプロが在籍する一般社団法人 事業承継協会も埼玉支部を設置して県内の事業承継を支援

事業承継士の資格制度を導入するなど精力的に事業承継の支援に取り組んでいる一般社団法人事業承継協会。その埼玉支部が行っている活動内容について詳しく見ていきましょう。

――◯受託事業の活動
一般社団法人事業承継協会は資格の発行以外にも様々な活動を行い事業承継をサポートしています。

・事業承継セミナーの開催
中小企業の経営者や個人事業主を対象に、事業承継をスムーズに進めるための各種セミナーを開催。基本的な知識獲得に向けたセミナーをはじめ、「基本はわかったので、各社の取組み状況などを知りたい」「後継者を選び、育てていくために何をしていけばよいか知りたい」といった踏み込んだテーマでもセミナーを開催し、多様な事業承継にまつわるニーズを満たしています。

・個別相談会の開催
事業承継に取り組む意思が明確な経営者向けに、個別相談会を開催。事業承継に関する相談内容は多岐にわたるうえ、経営に関わるコアな情報を開示する必要があるため、信頼できる相談者でないと本心を打ち明けにくいものです。一般社団法人事業承継協会では、守秘義務を順守しながら、経営者の悩みの本質に寄り添うための相談会を実施しています。

税務や会計に関する専門的な内容から、引退後のキャリアプランやメンタル面など、ソフト・ハードの両面から経営者に寄り添うのが特徴です。

・後継者塾の開催
SAITAMA・後継者塾という取り組みでは、後継者をターゲットにして受け継いだ事業のブラッシュアップやグロースを行うために必要な経営者としてのマインドや経営知識、判断力を磨くと同時に、自然に他の後継者と交流できるようにすることを目的として、経営者に必須のスキルが身につくカリキュラムを用意。

埼玉支部に名を連ねているメンバーのほぼ全てが事業承継士の資格を取得しているうえ、多種多様なバックボーンを持った実業家も在籍。後継者の新規事業をバックアップするべく、Webマーケッターやインテリアコーディネーター、ITコーディネーターなど各分野に精通した「経営のプロフェッショナル」が、事業承継だけでなく後継者の支援に関しても携わります。既存事業と掛け合わせて自社の強みを活かすための施策を一緒に考えてくれるので、後継者候補の方や後継者として事業を引き継いだ方にもぜひ相談していただきたい支援機関です。

公益財団法人 埼玉県産業振興公社 事業承継相談

事業承継相談:公益財団法人 埼玉県産業振興公社が運営。

――◯相談形式・相談までの流れ

基本的には窓口での相談となります。

相談窓口
さいたま市大宮区桜木町1-7-5 ソニックシティビル10階
(地図はこちらからご覧ください。※大宮事務所参照)

相談日

月曜日~金曜日(年末年始を除く)

相談時間

9:30~12:00、13:00~16:30

申込方法

電話、もしくはwebページからお申込み。

TEL:048-647-4085

webページ:お申込みページ

 

しかし、中には窓口では対応しきれない税法や法律に関する相談を寄せる方もいらっしゃいます。そのため、別に専門家を紹介して無料でサポートを行うケースも。

まずは事業承継相談申込書をダウンロードして作成し、FAXかWebから送付します。申し込みが完了したら、後日に担当職員が日程や内容確認の電話を行うので、相談の日程や内容を一緒に確認しましょう。その後に面談を行います。担当職員とコーディネーターが相談に応じるので、不安なことやわからないことをすりあわせていきましょう。

小規模事業者事業承継支援事業

小規模事業者事業承継支援事業埼玉県商工会連合会が運営。

――◯埼玉県商工会連合会の事業承継支援
埼玉県商工会議所の連合会が行う小規模事業者の支援事業。その一環として、事業承継支援も含まれています。
商工会の会員企業を訪問して、事業承継への意識啓発や早期準備の必要性を喚起。埼玉県産業振興公社などの関係団体とも連携を強化し、地域のニーズを満たした包括的な支援を行います。

具体的には、

  • 事業承継相談員の設置
  • 事業承継実態調査の実施
  • 普及啓発用パンフレットの作成

などの活動を通して、地域企業とのつながりの深さを活かした事業承継支援に取り組んでいます。

ここまでは埼玉県全域をカバーする広域な事業承継支援について解説してきましたが、ここからは各自治体に根ざした事業承継支援の一例を紹介します。ご自分の企業が属する自治体でも商工会議所などが中心となって事業承継支援の取り組みを行っているので、ぜひ調べてみてください。

埼玉県内の取り組み

――◯熊谷市

熊谷商工会議所が行っている経営相談の業務にも事業承継の有識者はいらっしゃいますが、月に一度のペースで定期的に経営者や後継者のためのセミナーを開催。

セミナーを「逆境に強く、たくましい経営者・後継者になるための勉強会」と称し、現役の経営者だけでなく後継者に対しても経営のノウハウを提供。異業種との交流や他の経営者・後継者とのふれあいを通して、他では得難い経験を積める場が用意されています。

――◯川口市

埼玉県下で2位の人口を誇る川口市では自治体が主体となって事業承継セミナーを開催。経営者や後継者向けに情報提供を行っています。事業承継のイロハを学びたい方はぜひ参加の検討を。

――◯越谷市

越谷市にある埼玉県信用金庫は、事業承継の支援を強化するために金融機関に専門チームを設立。取引先企業の事業承継問題を解消すべく、同金庫が積み上げてきた信用や信頼を活かしながら企業の相談に応じたり、必要があれば埼玉事業引き継ぎセンターへの斡旋も行います。

他にも、事業承継を後押しする金融商品の用意や、各支店の事業承継への対応力を担保するために支店長や融資職員へ税務や法務など事業承継に関する基礎的な知識を問う試験を課すなど、地域の事業承継を推進するための体制を整えています。

2018年には事業譲渡のマッチングサイトを運営している株式会社ビズリーチと業務提携を果たしているので、金庫の取引先が事業承継先に悩んでいる場合にはマッチングサイトを紹介することも可能。地元の税理士と連携した事業承継セミナーの開催にも取り組んでいます。

――◯川越市

川越市では、大きく分けて市と商工会議所の2組織が事業承継の支援を行っています。川越市の事業承継支援の一環として、事業承継に取り組む方の店舗改修にかかる費用を補助しているのです。補助金が下りるのは事業承継に係る店舗の改修または設備の整備に限られ、以下の要件を満たす必要があります。

  • 補助金の交付決定前に工事に着手していないこと。
  • 令和2年2月28日(金曜)までに完了する工事であること。
  • 市が実施する他の助成制度を利用していないこと。
  • 建築基準法その他の法令に違反していないこと。

補助金額の限度は40万円、補助率は費用の1/3に限られるので注意しましょう。また、予算が終了するまでの募集となるので、ご希望の方は早めに申し込むことをおすすめします。

また、川越商工会議所では、事業承継に向けた準備を早期に始めることの重要性や、事業承継をめぐるさまざまな課題への対策、実効性の高い各種支援施策の紹介など、円滑な事業承継の実現を支援しています。川越市内で事業承継にお悩みの方は商工会議所を尋ねて情報収集を行うのもよいでしょう。

埼玉県では様々な組織や機関が事業承継の支援を行っています。お住いの地域や支援内容などを吟味して、相談しやすいところへ足を運んでみましょう。事業承継ラボでも、事業承継に関するご相談を承っておりますので、ぜひご検討ください。