「働きがいのある会社」ランキングに連年ランクインし、従業員の人生の幸福を追求するとともに、社会問題や環境問題への貢献を目指すバーテック。代表取締役社長の末松仁彦様にお話を伺いました。

執筆者:桐谷晃世

株式会社バーテックの事業概要について教えてください。

主に工業用等の特殊なブラシを提供しています。現場の課題を解決するため、ブラシの選定、使用方法、管理などのサポートまで総合的に提案しています。

工業用ブラシの用途は多岐にわたりますが、防虫用ブラシを強みとしています。

これはドアやシャッターなどの隙間に取り付けることで効果的に防虫対策を行うもので、この分野は国内では既に全国的に展開しており、今はアメリカ市場での販売も進めています。

早い段階で会社の代表となられていますが、承継の経緯などを教えてください。

私は現在バーテックの三代目ですが、生まれたときから会社の人や取引先の方から三代目と見られていたように記憶しています。自分としても高校時代からバイトという形で父の事業に関わることが多くありました。全体会議に参加したり、出張に同行させてもらったり、そういう経験を経ていつか承継する日がくるかもと、意識していましたね。

特に営業同行の経験の中では、自社製品が社会の中でなくてはならないものなんだということを強く実感することができました。そしてまた、そんな誇りある会社を自分が継いで、さらにより良くしていきたいという気持ちを持つこともできました。

また後継者として承継するにしても、色んなパターンがあると思います。僕は大学を卒業してからすぐ入社して会社を継ぎましたが、どちらかというと、しばらく修行して三十代、四十代になってからという方が多いんじゃないでしょうか。

ただ自分としては、大学のときに色々な後継者の方々と関わってみてそういう考え方とは少し違う想いを持ちました。早い段階で社長になって会社と一緒に成長していくという生き方をされている社長がいて、とても輝いて見えたんです。それが二十代で会社を継ぎたいと考えた一番大きな理由でした。

承継後、新たに取り組んだことがあれば教えてください。

経営をする上で、社員の幸福や社会への貢献といった理念に重きを置くことが必要だと感じたのです。

これは経営者としての勉強をしていたときに出会った、京セラを創業された稲盛和夫さんから学ぶ「盛和塾」から影響を強く受けています。その中で学び、社内に取り入れたいと思ったことを、素直に社内で実践してきました。あの頃から10年余り経ちますが、今は自社に合った形で運用し、自分たちの形になってきたと感じています。

2018年から毎年「働きがいのある会社ランキング」にランクインされていますが、「働きがい」にフォーカスしている理由があればお伺いしたいです。

当社の理念として、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という理念があるのですが、心の幸福というのは、外部から与えられるものではなく、従業員一人一人が心の内側から溢れ出る想いや、夢、志を追求し、仕事に夢中になる中で、得ることができるものだと考えています。
そしてそれは、別の切り口から言えば生きがい、働きがいということになるでしょう。

当社は2018年から毎年「働きがいのある会社」ランキングにランクインしていますが、当初からランクインを目指したわけではありませんでした。客観性のある社外のアンケートを通じて改善し、少しでも経営理念の実現度合いを高めていきたいというのが一番の動機でした。

ただ、初めて従業員にアンケートを取ったときは、率直に言ってとてもショックな結果でした。自分の認識と従業員が認識している会社の実態の間に大きなギャップがあったことが衝撃で、そこから一方通行にならないように必死に改善に努めました。

社員の働きがいを向上させるために具体的に取り組まれている事があれば教えてください。

これも「盛和塾」での学びから取り入れたものなんですが、「バーテックフィロソフィ」を活用しています。

内容としては、京セラフィロソフィをベースとし、創業者や、先代、私が社内で繰り返し伝えてきた大切にしたい価値観をひとつの冊子にまとめました。私たちが目指す組織を実現するため、物心両面に幸せな人生を送ってもらうために、目指したい会社像や、人生観、仕事の判断基準を50項目にまとめたものになります。

これを従業員に共有して実践してもらうことで、各々に自分が持っている価値基準や判断基準を磨いて、それを通じて人生を幸福にしてほしいと思うんです。

またこの冊子はバーテックの価値観が集約されたものなので、採用活動をするうえでもその人がバーテックに合う人なのか、合わない人なのかがすぐに分かります。そのため採用プロセスの中で話題にすることも多いですね。

最後に読者の方にメッセージをお願いします。

先ほどは「盛和塾」の話をしましたが、もうひとつの大きな学びは「ファミリービジネスアドバイザー協会」でした。

以前は会社にとってのファミリーの存在はリスクであり、争いの元というイメージがありました。協会での勉強を経て、ファミリーというのは仕組みさえあれば非常に頼りになる一種のリソースなんだと考えるようになりました。

ファミリービジネス(同族企業)について日本ではネガティブなイメージが多いと思います。公私混同・遅れている・零細企業・・・しかし、世界には、立派な経営をされている世界規模のファミリービジネスも多くあります。また中小企業であっても、地域に貢献し、立派な経営をされているファミリービジネスも多くあります。

日本は世界一長寿企業が多い国とも言われますが、その要因としてあまり社会には出ていない、ファミリービジネスの強みや、ノウハウがあるのも事実だと思います。

なのでまずは事業への理解を深めることと、ファミリービジネスアドバイザー協会で勉強することを薦めますね。事業承継というと皆さん自分の事例しか把握していませんが、勉強することで様々な形があり選択肢があるということが分かってくるので、何よりも学ぶこと、知ろうとすることを大切にしてください。