調剤薬局経営を中心に、自社開発した物質を利用したヘルスケア製品を販売し、新たな形での健康増進業を通じて明るい社会づくりに貢献する、テイコク製薬社の4代目である畠山進之介様にお話を伺いました。

執筆者:桐谷晃世

まずはテイコク製薬社についてご教示いただけますか?

テイコク製薬社は今年で創業98年で、私の曾祖父が創業者し、現在は私の父が代表を務めています。私は長男なので、このままだと近いうちに4代目を承継する予定です。

戦前は帝国陸軍に栄養剤や薬を供給。戦後は大阪府下の商店街を中心に店舗展開し、地域に根づいて事業を軌道に乗せました。しかし、薬局業界では日用品や雑貨も販売するドラッグストアが出現し、チェーン展開が進んで、量販・安売り競争が激化していきました。その後、進むべき道を模索するなか、調剤薬局業に参入しました。現在は、事業を健康増進業にシフトチェンジして技術開発や商品開発に注力しています。

長い歴史を持つ温泉療法に着目し、15年ほどの年月をかけて開発したのがIFMC.(イフミック)」という物質で、現段階ではこのマテリアルに関連した商品展開を進めております。
具体的には株式会社リグアとの合弁会社であるイフミックウェルネスという法人を設立し、IFMC.(イフミック)に関する事業を展開しています。そしてその代表を今私が務めているということですね。

主な事業概要としては以上のようになります。

テイコクオンラインストアをECで展開されていますが、こちらはイフミックの商品を販売されているのですか。

そうですね。テイコクオンラインストアはテイコク製薬社が運用しているサービスになります。基本的には、ブランドオーナー様とコラボし、イフミック加工した付加価値商品を販売するというのが主になりますが、弊社は実店舗ももっていますので、テストマーケティングの意味合いも含めて店舗とECで自社商品を販売しております。

イフミックについてもお伺いできますか?

イフミックを開発したきっかけとして、温泉に着目したという経緯があります。温泉に入ると血液の流れが良くなり、リウマチの症状の改善が期待できるということは知られていますが、皮膚にはバリア機能があるので、有効成分が十分に体に取り込まれるのが難しいということも事実です。

なので、そうした温泉の効果というのは皮膚から吸収する以外にも目に見えない放射性の元素であったり物質であったり、そういったものが人体に影響を与えている可能性があるのではないかという仮説を立てて、全国の有名な温泉地を渡り歩き、温泉水や鉱物、岩石採取して研究したことが始まりです。

様々な調査を行った結果、複数の鉱物を温泉水に浸漬した溶出液を特殊処理すると、シングルナノサイズの非常に小さな結晶体が発現することがわかりました。この結晶体をイフミックと名付けました。この物質を衣類などに加工すると血行促進効果があるということが研究でわかっています。
つまりイフミックを衣類に加工すると、まるで温泉に入っているかのような健康効果が得られるんですね。

研究に関しては、研究所を設立して京都大学と共同研究をしています。また2019年には特許を取得しており、世界展開も見据えて国際特許も取得しています。

イフミックの開発経緯について教えてください。

開発の経緯としては、先述したように事業を健康増進という方向にシフトチェンジしたことがきっかけですね。

温泉の研究を始める前は健康増進に役立ちそうな技術や物質を長年探していました。ところが、そういった情報は広く世間には公開されておらず、ましてや部外者となると簡単に情報を教えてはくれません。そこで原点に戻り、研究開発を一から行おうと決意しました。

事業承継の意思疎通はいつから始められましたか。

承継することを具体的に話し始めたのはテイコク製薬社に入社してからですね。父とはそうした話を直接したことがあまりなくて、特に前職のときは一切したことがありませんでした。

ただ、やはり長男なので、何となく私の中で将来的に継がないといけないという意識はありましたね。戻って来いと言われたときも、私としては別に意外でもなかったし、タイミングが来たかなと自然な気持ちで受け入れることができました。

承継後に取り組みたい挑戦はありますか。

承継を終えたあとの意気込みとしては、父が苦心して確立したイフミックを軸とする健康増進事業を末長く、しかも日本のみならず世界中に広め、世界中の人々の健康増進に貢献していきたいと考えています。それが4代目としての私の役割だと思っているので、そこに向かって邁進していきたいですね。

承継に向けて取り組んだ、意識したエピソードなどありますか。

そうですね、エピソードというほどでもないのですが、父と話していて少しでも疑問に思ったことはストレートにぶつけて、疑問を解決するように心がけていました。

いずれ私が継承すると考えたとき、会社の全てのことを知っておかないといけないと思ったので、できるだけ父には遠慮しないようにしていました。

事業承継を行うにあたっての意気込みやお気持ちをお伺いしたいです。

まず4代目として、イフミックという唯一無二のマテリアルを世界中の健康増進のために広めていく、これが私の役割だと考えていますので、その目標に向かって全力でコミットしていこうというのが今の意気込みです。そして、創業者の志を忘れることなくこれから200年300年と、世のため人のために永続的に企業として発展していくことができればと思っています。