M&A(エムアンドエー)とは、「Mergers(合併)& Acuisitions(買収)」の略称で、企業の買収や合併を意味します。大きな意味では、企業単位だけではなく、特定の事業やサービスの売買もM&Aに含まれます。

事業領域の拡大や経営基盤の強化を目的に大企業がM&Aを行っていくイメージが過去にはありました。しかし、昨今では大企業に限らず、例えば事業承継に悩む中小企業もM&Aを選択肢とすることが増えてきています

とはいえ、「いざM&Aを検討したくても、案件や仲介業者をどう調べればいいか分からない」とお悩みの経営者の方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、M&Aマッチングサイトの使い方、そして代表的なサイト7選の特徴をご紹介致します。

読み終わる頃には、ご自身の会社にとって一番適切なM&A情報の入手方法が見つかることでしょう。

M&Aマッチングサイトを利用するメリットとサイトの適切な選び方

まずM&Aの一連の流れを確認しておきましょう。詳細については、M&Aの流れをまとめた下記の参考記事をご覧いただければと思います。

参考記事:M&Aの流れや手順を知りたい!M&AのポイントやPMIを分かりやすく解説

経済産業省の資料によれば、M&Aにおいての課題としてよく挙げられるのはマッチング先が見つからないこと仲介手数料の高さなどです。また、単にM&Aのマッチングができればいいわけではなく、企業の成長戦略のもと綿密なM&A計画を立てる必要があります

従来であれば、専門の仲介会社や銀行、証券会社、フィナンシャルアドバイザー(FA)がM&Aにおける仲介を担ってきましたが、昨今では売り手(譲渡)と買い手(譲受)どちらを希望する場合でもオンラインでM&A案件を探すことができるようになりました。そのプラットフォームが、M&Aマッチングサイトです。

M&Aマッチングサイトを利用するメリットとして

1、幅広い会社を相手にM&Aを考えることができ、選択肢が増える
2、ネット利用だとM&A案件を探す心理的ハードルが低い
3、相手企業に直接コンタクトを取ることが可能になる
4、仲介会社を使うより時間や費用面においてM&Aのコストが抑えやすい
5、中小企業であってもM&Aを検討しやすくなる

といった利点があげられます。

しかし各々の会社や業界に合わせたサイトを選ばないと、M&Aが上手く進まなかったり、想定以上の仲介手数料に悩んだりすることも起こりえます。成功するM&Aはマッチングサイトを選ぶ段階から始まっているのです

M&Aマッチングサイトを選ぶポイントは次の7点です。

1、サイトの利用者数・案件数の多さ
2、業界と規模にあったマッチング実績の量
3、買い手企業のサイト内検索手段や情報公開範囲
4、買い手企業の支払いコストの仕組み
5、M&Aに対する専門家支援の必要と可否
6、「代理」モデルと「仲介」モデルのどちらか
7、機密保持契約(NDA)に対する意識の高さ

これらのポイントを順に詳しく確認していきましょう。

1 サイトの利用者数・案件数の多さ

M&Aマッチングサイトを選ぶ上で、利用者数や案件数の多さは利用者にとって大事な指標となります。利用者数が多ければ、より多くの売り手や買い手にアプローチできる可能性が高まります。

単に登録数だけが多くても案件数が少なければ意味はありませんが、多くのM&Aマッチングサイトは、「売り手企業が案件登録した上で、買い手企業が検索しアプローチする」方法をとっています。そのため、売り手の案件が多いサイトには、買い手企業も集まりやすくなります

2 業界と規模にあったマッチング実績の量

利用者や案件の数が多くても、自社の業界や規模とかけ離れた案件ばかりのサイトであれば、M&Aの成功率は上がりません。自社と類似した業界かつ同程度の規模でのマッチング実績がどの程度あるのか、確認しておきましょう。

マッチング実績とは、買い手企業と売り手企業が「交渉を開始した」実績のことをいいます。成約数ではありませんが、ひとつの目安となるでしょう。

マッチングサイトには各サイトを運営する会社の得意分野が記載されています。また、面談時には過去実績の詳細を聞いておくとよいでしょう。

3 買い手企業のサイト内検索手段や情報公開範囲

M&Aマッチングサイトを選ぶ上で、サイトの仕組みを知ることは重要なポイントです。希望に添ったM&Aを成功させるためにも、買い手企業が案件を検索する仕組み、また買い手の情報の公開範囲をあらかじめ確認しておきましょう

一部のサイトを除き、多くの場合、買い手企業がM&A案件を検索して売り手企業にアプローチすることになります。売り手側であったとしても、買い手企業の目線を知らなくては、選ばれるM&A先として自社案件を提示できません

M&Aによっては、勤務場所が大きく変わるケースも考えられます。M&Aによって従業員にかかる負担を減らしたいとお考えになる経営者も少なくありません。その点、問い合わせがあった時点で買い手企業の情報がある程度開示されるサイトを選べば「従業員の通勤の負担を減らすために買い手企業を近隣に絞りたい」「今のオフィスを支社として残してくれる買い手に限定したい」といった希望も叶えやすくなるでしょう。

4 買い手企業の支払いコストの仕組み

M&Aマッチングサイトの運営は、多くの場合、買い手企業から成功報酬を受け取ることで成り立っています。売り手企業はサイト利用料がかからない、という形式が一般的です

成功報酬型の場合、M&Aが成立して初めて費用が発生する「完全報酬型」とそれ以外とに分かれます。場合によっては、着手金や中間金、月額報酬が必要になるケースがあります。コストを抑えたい買い手企業にとっては、トータルの成功報酬が安いサイトほどM&A案件にアプローチしやすくなります

サイトに買い手企業のトータルコストが明示されていないこともあるので、報酬の仕組みについては面談などで問い合わせると確実です。

5 M&Aに対する専門家支援の必要と可否

M&Aを視野に入れた場合、相手先とのマッチング以外にも例えば株式の配分、資本関係の整理、銀行との借り入れ調整など多くの課題を抱えるケースも多いでしょう。M&A経験のない経営者であれば、なおさら専門家の力が必要となります。

自社のM&Aで専門家の支援が必要かをまず考えてみましょう。専門家への要請が見込まれるのであれば、M&Aマッチングサイトが承継アドバイザーや弁護士など専門家の紹介をしてくれるかどうかもポイントです。

専門家の紹介がオプション費用となる場合、いくらかかるのかも事前に確認の上、M&Aの予算として算出しておきましょう。

6 「代理」モデルと「仲介」モデルのどちらか

M&Aの仲介には「代理」モデル「仲介」モデルという2種類のやり方があります。

「代理モデル」…売手側、買手側の双方にそれぞれ別の専門家がつきます。各々が顧客の立場に立って交渉を行います。
「仲介モデル」…売手側と買手側の間に同じ専門家がつきます。双方から手数料を受け取り、引き合わせが主な業務となります。

仲介モデルの場合、仲介会社の立場は中立で、M&Aを低価格で成立させやすい傾向にあります。

代理モデルの場合、仲介会社は売り手と買い手それぞれの側の立場から交渉を行いますので、売り手にとっては納得のいく価格でM&Aを成立させられる可能性が高くなります

サイトによってはM&A交渉の専門家(FA)を自分で選ぶことが出来ます。一長一短ありますので、M&Aにおける自社の優先条件を明確にして、適切なモデルで仲介をしてもらいましょう

7 機密保持契約(NDA)に対する意識の高さ

M&A案件は社内機密であり、外部に情報が漏れない配慮が不可欠です。したがって、売り手・買い手企業ともに機密保持契約を結ぶわけですが、M&Aマッチングサイト側に率先して機密を守ろうとする姿勢があればよりサービスを受け入れやすくなります。

もちろんM&Aを進める場合、互いの社名が判明する時点でNDAを結ぶのがルールです。ただ、サイトの利用条件に機密保持契約の締結について明示しているかどうかで、マッチングサイトへの信頼度や機密情報への意識を知ることは出来ます。

トラブル防止のためにも、M&Aマッチングサイトの利用規約やプライバシーポリシーなどを確認しておきましょう。

M&Aマッチングサイトの比較検証と利用のススメ

以上で述べたM&Aマッチングサイトを選ぶための7ポイントを元に、次の7サイトを検証していきたいと思います。

TRANBI(トランビ):ユーザー4万名超の日本最大級M&Aサイト

運営会社株式会社トランビ
所在地東京都港区新橋5-14-4 新倉ビル6F
設立2016年4月
対応業種IT・ソフトウェア、サイト売買、飲食、小売、製造業
医療、介護、その他
入会審査ユーザー確認任意あり
特徴利用ユーザー(個人・法人)4万名突破
150社以上のM&A専門家、金融機関と提携し、無料で紹介
利用手数料売り手企業は無料(報告手続きは必要)
買い手企業はM&A成立時に3%の手数料が発生

トランビは法人のみならず、個人でも利用可能な事業承継・M&Aマッチングサイトです。

サイト規模も急成長しており、ユーザー数は4万人を越えています。様々な業種を越えて小規模でも利用しやすいのが特徴です。案件は2020年1月現在1900件を超えています。

原則、売り手が登録した案件に対して、買い手企業が直接匿名交渉を行います。M&Aの計画立案や交渉に際してM&Aの専門家のサポートを受けたい場合には、「コーディネーターコース」「FAコース」「会計士・弁護士コース」などの各種定額プランが用意されています。直接交渉を行える経営者であれば、スピーディかつ安価にM&Aを行えるサイトといえるでしょう。

TRANBI(トランビ)ユーザー数が最多で、個人や中小規模の企業でも利用しやすい

batonz(バトンズ・旧アンドビズ):小売・飲食の中小規模M&Aに特に強い

運営会社株式会社バトンズ
所在地東京都千代田区丸の内1-8-2 鉃鋼ビルディング24階
設立2018年4月
対応業種小売・飲食業界に強い
入会審査本人確認あり
特徴ユーザー数3万人以上。地方自治体との協力体制あり
2020年度ベストベンチャー100に選出
利用手数料売り手企業は無料
買い手企業は承継対価5%(最低額25万円)
サイト開始年2018年

東証1部上場のM&A仲介会社である日本M&Aセンターの子会社、株式会社バトンズが運営する事業承継・M&Aマッチングサイトです。
小売・飲食業界に強く、買い手の負担コストが承継対価の5%(最低25万円)と設定されていることから中小規模なM&Aにも対応しています。案件は2020年1月現在1800件を超えています。

承継アドバイザーのサポートを別料金にて受けることもできますし、必要に応じて企業評価や不動産評価だけを有料オプションで専門家に依頼することもできます。経営者自身の経験値にあわせて、柔軟にM&Aのプランを組みやすいサイトといえるでしょう。



batonz(バトンズ)小売・飲食業界に強く、中小規模のM&A案件にも対応できる!